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第十二話 足場

短かったのでもう一話。長らくともに戦ったM113から個人的に好きな装輪戦闘車両への機種転換と、榊いがいからの視点の話

Date: 2016年8月8日 0530 

Location: アマーラ侵攻戦 前進集結地点

Person: エリック少尉

---


八輪の装輪装甲車が薄明の中に並んでいる。履帯だったM113より高く、だが妙にすっきりして見えた。

車体側面にはまだ新しい塗装の匂いが残っている。急ごしらえの識別塗りが上から足され、部隊記号の輪郭だけが古い顔で残っていた。M113の劣化が深刻であり、ストライカー装輪装甲車への機種転換となった。

エリックは第三車両を見上る。いまだに見慣れない。25㎜機関砲搭載型の火力増強型でIFVと呼ばれる歩兵戦闘車だ。ハッチから上半身を出しているアリアが整備兵に怒鳴られている。怒鳴られても気にしていない顔だった。


「アメリカ軍からの支援らしい。ストライカーを見るのは初めてか」


カーターの声が横からした。


「はい」


「お前だけじゃない」


カーターはそう言って歩き出した。厚手のローブの裾が重く揺れる。夏の乾いた熱気の中では見るからに暑そうな代物だが、本人は気にした様子を見せなかった。おそらく魔力の秘匿性を優先しているのだろう。

エリックは半歩遅れてついていく。

第25機械化歩兵大隊の機種転換が決まってから、基地の空気はずっと落ち着かなかった。車両が変われば動き方が変わる。動き方が変われば、死に方も変わる。そんなことは兵なら誰でも知っている。

そんなどこか浮ついた空気の中、エリックは榊ではなくカーター大尉について歩いている。


「今日の作戦も榊中尉ではなく、俺の補佐をしてもらう」


カーターが言った。


「了解です」


「戻りたそうな顔をするな。これは榊の発案だぞ?」


「そんなことは……」


エリックの表情を見てこらえきれずにカーターは笑い出す。

その言い方で大隊本部でのやり取りが嫌でも蘇った。


---


「今日からエリック少尉は第二小隊に配置換えだ」


あまりにも唐突な通告だった。

6月の下旬のころだったか。WFMARから呼び出され大隊本部に榊とともに向かった際に言われたことだ。


「配置換え!?お待ちください。どういうことでしょうか!?」


WFMARの大隊長を前に声を荒げる。


「落ち着き給え。これは榊中尉からの上申があってのことだ」


驚いたエリックは横に立つ榊を見る。


「大隊長のおっしゃる通りだ。少尉は他の魔術師の戦い方を現場で見るべきだ」


そう榊が言う。それを受けて大隊長も続ける。


「少尉が隊内の魔術師に実戦知識を聞いて回っているのは聞き及んでいる。これはその一環だと思って前向きに受け止めてほしい」

「カーター大尉は対魔獣の汎用術式での実戦経験が豊富だ。榊中尉も優れた魔術師だが、また違った戦い方を学ぶ機会だ」


---


それから今日まで、カーター大尉とともに第二小隊と行動を共にしている。

バスラ奪還の前哨戦としてのアマーラ侵攻計画が持ち上がっており、エリック達はその作戦において助攻群に割り当てられた。今はそのブリーフィング中である。

地図板の上で、赤線が伸び、黒丸が一つ打たれている。ポイント・エクスレイ。アマーラ東方交差点。そこを押さえ、魔獣の動きをけん制、工兵の協力により後続車列の進入口を作る。

言葉にするとそれだけだった。


「主攻も助攻も町の西から進入する。ただし主攻は町を流れる川の北岸、俺たち助攻は南岸を目指す」


作戦担当の大尉が棒で別方向を叩く。


「主攻が川の北岸で魔獣をひきつける金床役をやる。ひきつけた魔物に砲兵大隊が砲撃を行い、航空魔術師がダメ押し一撃を加える。その後助攻は主攻が受け止めているうちに側面から残敵掃討を行う。槌役だ。」

「爆撃後は道が悪いことが予想される。工兵大隊から装甲ドーザーがフォローに入る。うまく活用してくれ」


前方席には第5歩兵大隊A中隊の隊長が座っていた。コールサインはLocust 6 。隣には機甲大隊から派遣されたT-72Mの戦車分隊コールサインIbexの将校。航空管制の士官は地図の南側ばかりを見ている。即席の混成は、机の上では一本の矢印でも、現場では違う速度の集まりになる。


「機械化の第二小隊は……」


呼ばれてエリックは顔を上げた。


「お前らは遊撃だ。崩れた場所をサポートする。前へ出過ぎるな」


「了解」


カーターが先に答えた。ブリーフィング後、足早に皆が立ち去っていく中、カーターはエリックに言う。


「地形図と航空写真は頭に入れておけ。混戦した際に全体を把握しなければ部下たちが死ぬ」


「イエッサー」


「よろしい。では参りましょうか?お嬢様」


カーターはニヤリと笑いかける。エリックは返す言葉を探したが、先に歩き出したカーターの背中が答えを求めていなかった。外では車両がすでにエンジンをかけていた。


大規模作戦は登場部隊が増え、コールサインがよくわからなくなる。今回は中東の生き物シリーズ

次回はエリックの戦闘が続きます。

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