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ダイバーシティ・ジャパネスク  作者: 月美 結満
ストロベリーガス
5/24

五月三日 十四時二十五分

黒いスパンコールのドレスは丈が短く、弛んだ尻肉が裾から顔を覗かせないか心配である。


「やだ、ピッタリじゃない」


野太い声に、友良の肩が跳ねた。


姿見を介して、後方にいるオカッパ頭の男と目が合うと、友良は視線を外し、前髪を指先で整える。


「世辞じゃなくって、本当にあの時のまんまよ」


男は友良の肩に手を置いてそう言った。


「それはどーもでーす」


と、右肩に乗った指先を摘み、毛むくじゃらの手を肩から剥がした。


そして化粧台の前に座る。


口紅を手に取り、下唇に乗せた。


男は友良に感謝を述べる。


「ホント、ありがとう。引き受けてくれて嬉しいわ」


赤い口紅を薄く引くと、友良は鼻で笑う。


「あの四人にシカトされたんでしょーよ」


男は食い気味に否定した。


「ちがっ違うのよぉ。四人とも連絡は返ってきたの。ビデオレターだってあるのよ」


「それを、体のいいシカトって言うの」


男は溜め息を吐き、子供を諭す様な口調で言う。


「貴女が昔から私をよく思って無いのは理解してる。でもね、この店の最期は気持ち良く送り出して欲しいの」


友良はゆっくり立ち上がり、男の方を向いた。


「昔から私を見てきた貴方なら分かるでしょ?私が報酬のためだけにこの仕事を引き受けたことくらい」


「えぇ、重々」


即答した男に、左の口角を上げ、首を振ってこたえる。


「ペラペラなプラスチック板にやっすい金メッキ塗装してる感じ?」


「なによ」


「解って無いって言っているの」


言葉の刃を向ける友良に対し、男は両手をパチっと合わせて言った。


「もう、この話は辞めましょう。最期に嫌な気分になりたく無いわ」


友良は一歩前に出て、男の顔を下から覗き込んだ。


「密着取材してるんすか?」


「えぇ、してるわ」


不安が混ざるその声色に、友良は再び左の口角をあげる。


「ダイジョーブっすよー、上手くやりますから。報酬コレ、弾んでくださいね。“慈愛のママ”」


尻の肉を気にする様に、ドレスの裾を軽く引っ張った。


「じゃっ」と一言。ヒールを鳴らして友良はその場を離れた。

ひろみママ

年齢: 不詳

近況: 医療脱毛7回目、体毛が薄くなる気配無し

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