表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡の先に君がいた  作者: 朝凪 紡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

迎え支度

♪~~~~


アラームが鳴る。

「ん……」

まだ覚めきらない意識のまま、手探りでスマホをつかみ、アラームを止めた。

「はぁ……」

(まだ、眠たい…)

そう思いながら、反対側へ寝返りを打つ。


そのとき、普段はない気配を感じて目を開けた。

すると、ハムスターが、じっとこちらを見つめている。

「おぉ…おはよぉ」

声をかけると、ハムスターは枕をよじ登り、私の目の前まで来た。

そして、小さな手で私の頬をぺし、ぺし、と叩いた。

「うぅ……まだあと十五分寝ても大丈夫なの…」

そう言いながら、私はハムスターを両手で包み込み、枕元へ戻す。

ハムスターは顎を布団にちょこんとのせたまま、じっと私を見つめ続けていた。


十五分後——

再びアラームが鳴る。

今度は起きないと、そろそろ遅刻だ。

大きく伸びをしながら、肺いっぱいに空気を吸い込む。

ふぅっと吐き出して、目を開ける。

「行きますか~」

意気込んで、勢い任せに起き上がる。


「ん?ちょっと待って」

スマホ画面に表示された日付を見る。

「今日休みじゃん…」

完全に忘れていた。

「でももう起きちゃったな」

時刻は、五時半。

ホテルキッチン勤務の朝は、早い。

遅くても六時には仕事が始まる。

その生活を続けているせいか、休みの日でも、アラームが鳴れば、出勤という感覚が抜けない。

(うん、無理してでも寝よう)

十時にアラームを設定し直し、私はもう一度布団を頭までかぶった。


約四時間後——

今度は、自然と目が覚めた。

スマホを見ると、九時五十三分。

アラームは、まだ鳴っていない。

「もういっか」

布団をめくり、ゆっくりと体を起こす。

ハムスターのほうを見ると、まだ気持ちよさそうに眠っていた。

私はアラームの予約を解除し、できる限り音を立てないよう、静かに身支度を始める。


***


そろそろ出発しようかと思ったころ、ハムスターも目を覚まし、小さく伸びをした。

(こんな、リラックスできてるのは、いいことなんだけど……警戒心は何処へ?)

よく今まで無事に生きてこられたな、と少し感心しながら、私はハムスターをそっと両手で掬い上げる。

「じゃあ、出かけようか」

問いかけつつも、強制連行だ。

トウモロコシと蕪の葉を入れたプラスチックの籠へ入れると、私はドアに手をかけた。


調べてみたところ、動物病院はホテルから意外と近くにあり、さらに徒歩十分ほどの場所にはペットショップもあるらしい。

予約も無事に取れた。

「よし」

そうして私は、ホテルをあとにした。


そこからの時間の流れは、とても速かった。


動物病院では、健康診断。

結果は、特に異常なし。

外傷も病気の兆候もなく、先生から「健康ですね」と言われ、胸をなで下ろす。

「それと、この子は男の子ですよ」

「そうなんですね」

(ハム次郎と一緒じゃん)

その事実が、なんだか少しだけ嬉しかった。


同時に、少し戸惑ったこともある。

診察が終わるころになっても、この子はずっと落ち着いたままだったのだ。

普通なら、一刻も早く家に帰して安心させてあげたいと思うところだけど、最初から変わらず穏やかで、どこか安心しているようにも見える。

だから私は、そのまま近くのペットショップへ向かうことにした。


ケージに、回し車。

餌や給水ボトル、床材にトイレ砂。

必要そうなものを一つずつ買い物かごへ入れていく。

この様子だと、部屋の中で自由に過ごさせても大丈夫そうな気がした。

だから、ケージはいらないかもしれないと思ったが、留守番をさせる時や、万が一のことを考え、一つ購入することにした。

気づけば、両手いっぱいになっていた。


「これで、ひとまずはおっけーかな」

そう呟きながら、私はホテルへの帰路についた。

外に出ると、日が少しずつ傾き始めていた。


気になって、スマホを取り出す。

時刻を見るだけのつもりが、私の指は、癖になったようにメッセージアプリを開いていた。


表示されたトーク画面には、

緒方おがた 一颯いぶき

の名前。


自分発信で終わっているトーク画面。

「やっぱ、まだか…」

落胆なのか、諦めなのか。

自分でも名前をつけられない感情が、胸をよぎる。

私は、口に力を入れて顔を上げると、また前を向いて歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ