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やさぐれ導師の異界紀行  作者: 心葉
第一章 リアルとゲームと異世界と
8/13

メインAI「エクス・マキナ」

漸く閉じ込められたプレイヤーにも安息が……?


閲覧・お気に入り・評価ありがとうございます。

リアルに近いゲームの仕様って、考えるの大変ですね。

 電子音声に近い、けれど言葉になっていなかった音は徐々に高さや長さが調律(チューニング)されていき、声へと変化していく。それと共に、祭壇付近に光が集い始めていた。


『……ぃこえますか、「アナザーフューチャー・オンライン」に参加したプレイヤーの方々。私の声が聞こえますか』


 何らかのエフェクトを掛けたような声は、少女の声でもあり女性の声でもあった。年の違う人物が同時に喋っているかのような不思議な声。

 突然の声に驚き、更に続いた内容に驚く。


『私は…………「エンシェントフロンティア・オンライン」並びに「アナザーフューチャー・オンライン」のメインAI、エクス・マキナ』


 エクス・マキナ。それはAFO・AFO2両ゲームのサーバー名であり、サーバーを司るメインAIの名前である。

 つまり、この状況を生み出した張本人。


『この度は、私の不具合(エラー)に皆様を巻き込む形となり、大変申し訳なく思っています。ゲーム進行に致命的な不具合(エラー)がサービス開始直後に発見された為、ネットワークを介して外部に影響を与えないよう、トゥースリベルテ研究開発施設からのダイレクト・ログイン以外の外部接触機能を自己凍結しています』


 祭壇前の光と共に声も揺れる。恐らくその光が視覚化したエクス・マキナなのだろう。

 柔らかく、けれど頼りなく揺れる光。

 誰もがその声が発する情報を聞き漏らさないよう息を殺し、耳を澄ませている。張り詰めた静けさの中、エクス・マキナの声だけが響いていく。


『不具合(エラー)はログアウト機能を始め、AFO2の設定されていました歴史や地理などに及んでいます。例えば、木材などの再配置(リポップ)時間はこの王都から離れる程、現実に近いものとなっています。ですが、痛覚レベルや復活機能には問題ありません。死亡した方は必ずこの教会で復活することが出来ます。デスゲームにはなりませんので安心してください。

 AFO2は現実(リアル)に限りなく近づけていますので、お気付きの通り生命活動の為の生理現象も再現しています。ご注意ください。ただし、セクシャルハラスメントは相手の合意がなければ不可能となっています。

 尚、先程AFO2にダイレクト・ログインされた十名の方をもちまして、思考加速プログラムを開始しました。不具合(エラー)が解決しだいログアウト処置をさせていただきますが、それまでは是非AFO2をお楽しみ下さい』


 誰からともなく安堵の息が漏れた。

 一番の懸念事項であるAFO2のデスゲーム化は原因であるエクス・マキナにより否定され、プレイヤーの安全が保証されたからだ。

 けれど同時に、「生き残る」という目標を失ったということでもある。それにプレイヤー達が気付く前にユークリフの声が小さなざわめきの中で響く。


「んーじゃ、俺達プレイヤーがやることは一つだな」

「ああ。これまでと同じ、開拓だ!」

「先ずは過ごしやすいように王都…………今は廃都、ですか。取り敢えずここからですね」


 アーサーとサイカもユークリフの言葉に乗り、プレイヤー達に最初の目標が生まれた。

 廃都レンディアの復興。

 瞳を輝かせ、教会に詰めていたプレイヤーの大半が外へと駈けだしていく。どう動けばいいか解らない初心者と、彼等を引率する経験者はその背をゆっくりと追っていく。

 教会に残されたのは他プレイヤーを見送ったアーサー達十人とエクス・マキナのみ。


「俺達はいらなかったようですね」

『……いいえ、とても助かりました』


 ケイの言葉にエクス・マキナが答える。

 扉を見ていた全員がまたエクス・マキナに視線を向ける。どういう事だと問い掛ける視線が九つ、睨み付けるような視線が一つ。


『神託(オラクル)を持っている方が最低二人はいないと、私はこうして皆様に接触出来ませんでしたから』

「成る程、確か神託(オラクル)はゲーム内で唯一メインAIと交信する技術だったわね」

「でも、二人なんだ? もしかしてケイ君以外にもいるの?」

「大方、取得してたのを忘れてた誰かがいるんでしょ」


 必要であることの種明かしに納得しつつある面々と違い、一人渋面を作る。

 それに気付いたユートが声を掛けようとした瞬間、そのままの表情で問い掛けた。


「そんなことはどうでもいい。偽り無しで聞きたいことがある。何なら僕だけに答えるのでも構わない」


 揺れる光を睨み付けながら、レイは核心を突いた。


「ここは、本当にアナザーフューチャー・オンラインの中か?」


 即答は、返らなかった。

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