廃都
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彼等の冒険はこれからだ!(
エンシェントフロンティア・オンラインは王都レンディアがスタート地点だった。
王都といってもサービス開始初期の王国規模はその王都のみ。
かつて『終焉の日』と呼ばれる出来事によって世界が滅び、人口が激減。生き残った人々が一人の男の下、生きていく為に作り上げたのがレンディア王国だった。という設定である。国名と都の名前が同じなのは領土がイコールだったからだ。
そんな王国も時が進むにつれ、プレイヤーによる開拓の影響を受けて発展していった。開拓した場所に村が出来、人口が増えて町になり、人や物が集まって街となった。
アナザーフューチャー・オンラインは、AFOサービス終了後の未来、の可能性の一つという名目で生み出された。
『終焉の日』で海に沈んだ古代の大陸がある偉大なる魔術師によって発見され、大勢の魔術師の協力により引き上げられたことから新たな開拓が始まる。というオープニングだった。
それでもやはりスタート地点は王都レンディア。細かいところを残して開拓され終わった周辺で力を磨き、海を渡る力を手に入れ、現在の大陸よりも強力な敵が出る古代大陸へと開拓へ向かう。そんな流れだったはずだ。
「………………う、そだろ……」
誰が零した言葉だっただろうか。その一言だけで目の前の惨状を語ることが出来た。
AFO2へ降り立った十人の前に広がったのは、決して王都とは言えそうにない、破壊され、破棄され、永い時が経ったかのようなレンディアの姿だった。
整備されていた石畳はひび割れ、苔が生えている。所々無事なところが見えるだけにより落差を感じられる。
煌びやかではなかったが整然としていた街並みは今や無残にも崩れ、蔦や苔に侵食されている。石材の割れ目は風雨に浸食されたようだが、自然な崩壊の仕方とは思えない物である。
流れる音に視線を向ければ、広場の噴水が壊れたのか、割れた縁から水が少量ではあるが石畳へ流れ出しているのが見える。どうやら水の供給装置は生きているらしい。
「凍れ」
静かな声と共に、冷気が駆け抜け噴水の割れ目を凍らせる。
杖を噴水へと向け冷気の魔術を使用したレイは、目に掛かる深い藍色の長い前髪を掻き上げながら頷いた。
「魔術は問題なく使える、か」
「レイ、いきなり何を……」
「何を? もちろん検証に決まっている」
振り返ったケイの緑の瞳を見上げながら杖を下ろすと、レイはぐるりと辺りを見回す。
「これだけ様変わりしているんだ。僕達の使う魔術や剣術、登録スキルの仕様が変更されていないとは限らない。僕は魔術師だ。魔術が使えなければどうすることも出来ない。紙装甲で物理攻撃の素質は皆無、素早さすら近接職を専門とする者に並べるかどうか」
戦いの最中に使えませんでした、は笑えないだろう?
首を傾げれば首後ろで縛られた髪が揺れる。
「それもそうだな。俺達のような物理職はAFOの仕様のお陰で、最悪武器さえあれば何とか戦えるようになっている。だが魔術師や治癒師はそうはいかないか」
「あ、あ、じゃあ僕もっ。治癒術を試さないと」
「頼めるか、ユート」
「はい、アーサーさんっ」
金の短髪を煌めかせたアーサーの蒼い瞳がユートの首肯を捉え、帯びていた剣を引き抜いて自らの腕に小さく傷を作る。
新緑色の髪と白い法衣を動作に合わせて揺らしながら、ユートは治癒術を発動させる。
「傷を癒せ、ヒール」
ふわりと光が集い、アーサーの腕にあった傷を跡形もなく癒す。
盛大に安堵の息を吐いたユートの背中をユークリフがばしと叩いた。
「わわわっ」
「やるじゃねーの、ユート。回復は任せたぜ」
「んむーっ。リリルのポーションだって忘れちゃいけないんだからね!」
水色の頭を叩き、リリルが自己主張をする。
漸く解けてきた衝撃と緊張にやれやれ、とフラムが紅い髪を揺らす。
「一気に騒がしくなるわね、まったく」
「変な緊張感が漂うよりもいいのではありませんか?」
「そうだな! サイカ殿の言う通り、元気に楽しむのが一番だ!」
一行がわいのわいのと騒いでいると、アスマが一角に視線を向けて誰何の声を発した。
「誰だ」
途端に戦闘モードへ切り替わったのか、張り詰める空気。
視線の先、建物の瓦礫の影から出て来たのは一人の男。
「あんたらも……閉じ込められたのか? このAFO2に」
疲れた顔をした男は初期防具を身に纏い、
「NPCなら教えてくれ、このゲームは一体どうなってるんだ」
切実な願いを抱いていた。




