おもちゃ箱の中へ
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閲覧・お気に入り・評価ありがとうございます。
閲覧数の多さがVRMMO物の人気を物語っているように感じました。
取り敢えず、頑張って行こうと思います。
車窓を流れる景色へ視線を向けながら、手持ち無沙汰に携帯のストラップを振り回す。
石塚がレイの家を訪れたのが一昨日のこと。昨日一日を移動に充て、レイはトゥースリベルテ社の研究開発施設へと向かっていた。
正直に言えば、レイは我が身が可愛い。デスゲームなど関わりたくもない。ニュースで流れただけならば、「大変だな」という感想を抱くだけで日常に戻っただろう。
だが目の前で聞かされてしまえば、それも解決まで自分が何とか現状維持を出来るかもしれない等と言われてしまえば無視は出来ない。それは正義感の為ではなかったが。
車がスピードを緩め、ある建物の前に止まる。首都郊外にある、いかにも研究施設といった外見の、箱のような建物が窓から見えた。
「着きました」
「解りました」
運転手と必要最低限と思われる言葉を交わしてレイは身一つで施設へと向かう。
どうせ事態が収束するまでログアウト出来ないのだ、ジーンズのポケットにねじ込んだ財布と鍵、携帯さえあれば問題ないだろう。
施設の扉の前では、かっちりと着込んだ石塚が待ち構えていた。
「態々すみません……」
「別にいいです。……それより、こちらの条件は」
「はい、心得ています。
城咲様以外にも参加者を集めること。これは元より複数人で行っていただこうと思っていましたので、全く問題ありません。
また、城咲様のAFOランクに関わる情報は他参加者には伏せること。こちらも無用な軋轢を避ける為、我々は参加者全ての情報開示を致しません」
「解りました、ありがとうございます」
頷き、石塚はレイを先導する。
施設の外装は無機質な箱のようだったが、内装は様々なモノに溢れていた。
廊下には観葉植物や自販機、時折雑誌の一頁。コンビニの物だろうか、レシートも隅に落ちている。
開きっぱなしの扉から原色で落書きされたような部屋の様子を覗くことが出来る一角を過ぎると、様々な水の音が聞こえる扉の前を通り、熱気と冷気が漏れる扉に挟まれた廊下を歩く。階段は様々な材質が使われているのか、足音が一段ずつ変わっていく。
箱のような見た目も相まって、まるで雑多に物を詰め込んだおもちゃ箱のような印象を与えられる。
このおもちゃ箱の中で第二の世界が作られているのだ、と思うと苦笑が漏れた。
「どうかされましたか?」
「いや、大したことではないので」
「……そう、ですか」
困惑気味な石塚を急かし、目的地へと向かう。
そうして暫く歩き、やがて一つの扉の前へと辿り着いた。
「失礼致します。最後の方がお着きになりました」
扉を開き、石塚はレイを部屋の中へと促す。
「やぁっとご到着? ずいっぶん遅かったわね」
「まぁまぁ、首都圏に住んでるんじゃなければ移動に時間は掛かるさ。仕方ないだろう」
「最後の一人って男? 女?……見た目じゃわっかんねー」
石塚の言葉に反応して中にいた数人が入口、正確にはレイを見る。
言葉を発した者以外からも興味の視線が向けられ、一瞬場違いにも動物園のようだと思ってしまった。どちらが檻の中かは言わずもがなである。
それほど広くない部屋の中央には長机を並べパイプ椅子を設置した簡易会議テーブル。上には数種の菓子と飲料が置いてある。
空いているパイプ椅子を引き腰を掛けると、入口に留まっていた石塚が告げた。
「全員揃われましたので、直ぐにでもログイン出来るよう手配してまいります。その間、こちらでお待ちください」
一礼し去っていく姿を見送った後、沈黙が部屋に落ちる。
それを破ったのは、椅子から立ち上がる音だった。




