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やさぐれ導師の異界紀行  作者: 心葉
第二章 廃都レンディア
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薬師の夜

 日暮れ間際。解体した猪肉をアイテムボックスに入れ、狩り組が廃都教会前へと帰還した。全員の表情は明るく、若干興奮気味の者もいる。どうやらこれまでの狩り以上の成果を出したらしい。

 教会前には剣の練習を兼ねて伐採された木がフラム監修の下で魔術練習を兼ねた炎魔術によって乾かされて組み上げられ、キャンプファイヤーとなり明かりと暖を提供している。

 狩り組も留守組もそれぞれ思い思いの場所に陣取り、今日一日の成果を発表し合っていた。


「やっくそう、やっくそう~♪」


 集団からは少し離れた場所で、リリルは一人石壁の欠片を組み合わせて草を擂(す)り潰す。手元に積まれているのは雑草にしか見えない草。実際、さほど廃都周りの森に入らなくても採取出来た物だ。

 一本一本丁寧に窪みのある石片に乗せ、尖った石片でごりごりと擂り潰していく。勿論石片は炎魔術で熱した後水魔術を掛けることで、簡単にではあるが消毒してある。薬師にとって衛生面への気遣いは必要不可欠だ。

 ある程度草が潰れると、ステータスを呼び出す。幾つもの光の玉がリリルの周りを飛び回り、指示を待つ。この玉一つ一つがステータスの画面表示ボタンなのである。

 人差し指で水色の玉を弾き、スキル画面を呼び出す。スキル画面が目の前に広がったウィンドウに表示されると、特殊技能・遊戯技能・創作技能の三項目から目当てのスキルを呼び出そうとして、


「…………んにゃ? 特殊技能? AFOに無かったよーな」


 困惑しながら指先を虚空に彷徨わせた。

 首を傾げつつ特殊技能のタブを叩けば、一番上には「HP全快ポーション作成」の文字。MP消費はMAXの5%と書かれている。


「あ、成る程、貰ったチート能力かぁ。びっくりした~」


 ぽちり、とそのスキルを使用すると、魔力が出て行く感覚と共に液体の入った瓶が現れる。うっすらと水色掛かった透明な液体がHP全快ポーションのようだ。

 物は試しと中の液体を飲めば、ただの水道水のような味と喉越し。美味しいというわけではないが、不味いわけでもない。そして手の中に残る瓶。もう一度作成すれば、また新たに瓶が現れる。空き瓶はそのままであることから、別の用途にリサイクル出来るようだ。


「寧ろ好都合だよね~。遊戯スキル、複製発動! 対象は空き瓶!」


 遊戯技能タブを叩き、「複製」というスキルを探し出して発動。問題なく空き瓶が二つに増えることを確認し、ステータスを終了した。周りを飛び交っていた光の玉も同時に消える。

 「複製」というスキルは遊戯スキルに分類される。只管(ひたすら)同じ物を作り続ける者が手に入れることが出来るスキルだが、AFOでは使いどころが難しかった。何せ、武器や防具、その材料に対して使うことが出来ない。それだけでなく回復アイテムにさえ使えないのだ。使用出来たのはポーション作成に欠かせない空き瓶などの消耗品や、テントや寝袋といった旅に使う日用雑貨に対して。鍛冶職人、防具職人泣かせのスキルだったのだ。

 けれど、空き瓶がNPCより購入出来ない場所では薬師(リリル)にとって欠かせないスキルであった。空き瓶が一つでもあれば幾つも複製出来るのだから。今回はその空き瓶も、運営から貰ったチート能力がなければ手に入らなかったわけであるが。

 複製した瓶に擂り潰した草を入れ、水魔術で生み出した水を注ぐ。蓋をしてよく振れば、水と草が混ざり合って濁った緑色の水となった。


「ちょー低級ポーションの完成~」

「流石【薬師】さんですねぇ」


 焼いた猪肉を水魔術で洗った大きめの葉に載せた物を二つ持ち、サイカがリリルに笑いかける。


「どうぞ、夕飯です」

「わーい、お肉だー」


 片方を受け取らせるとサイカはリリルの隣に腰掛け、彼女の作った低級ポーションをまじまじと見つめる。


「こうして見ると、AFOの低級ポーションと同じように見えますね」

「同じだよ、薬草の形は変わんなかったし。HP減らしてから食べて見たけど、ちゃんと薬草として効果が出たのは確認済み~。ただ、すっごく飲み辛いし苦いから、身体に掛けて徐々に回復用、かな。全快ポーションだともったいない、って人用?」

「HPが低いうちは低級で十分ですしね」


 頷き、猪肉を頬張る。肉本来の味がダイレクトに、というよりも肉の味しかしない。美味しいのだが、こればかりではやはり飽きるだろうな、と思う。

 口の中の肉を飲み込み、リリルはサイカを見る。


「確かさー、ユート君とレイ君が他の食べ物探しに行ったんだよね?」

「ええ。ただ、生食で食べられる物はやはり少なかったようです。時間も限られていましたしね。今は向こうの少し離れた所で加熱食に向いているかどうか試しているようですよ」

「…………実験動物(モルモット)は?」

「ケイさんが捕まっていました」


 いい笑顔のサイカから視線を逸らし、指差された方向へ向かって合掌を捧げる。後で全快ポーションを差し入れしようと思いながら。

 そこでふと気付く。


「どーやって加熱してるの? 鍋もフライパンもないよね?」

「リリルさんも調合キットありませんでしたよね? それと同じです。人間、知恵を絞ってアイディアをフル活用すればイロイロ出来る物ですよ。レイさんは魔術師ですしね」

「あー、魔術師は応用が鬼畜いよね」

「基礎は何とか出来るんですけどねぇ……」


 顔を見合わせて乾いた笑みを浮かべあうと、お互いに残りの猪肉へと意識を向けた。

 森の奥、遠くで狼と思しき遠吠えが聞こえる。夜はゆっくりと更けていく。

道具がないなら代用すればいいじゃない(


閲覧・お気に入り・評価ありがとうございます。

ちょっと難産気味。書きたいことはあるのですが……!

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