魔術の使い方・基礎編
昨夜の残りの猪肉で朝食を終えた後、数グループに分かれてメンバー編成をし、狩り組は森へと入っていく。
その後ろ姿を見送った後、フラムは魔術師希望者を集めた。キャンプファイヤー実行組だ。といっても、魔術を実行出来たのはAFOをプレイしたことがある者かβテスターだけだったようだが。
昨日の全員が問題なく集まったことを確認し、さて練習を、と思ったところにユートが歩いてきた。
「あ、フラムさん」
「ユート。あんた今日は外回り行かないの?」
「レイ君が……」
「…………ああ、自分で人体実験はもう嫌なのね」
「ケイさんっていう実験動物がいて嬉しそうでした、夜」
何とも言えないしょっぱい顔をする両名。
気を取り直し、フラムは彼の首根っこを押さえた。
「ついでに治癒術も教えて上げましょーかね」
「え゛」
「はい、注目! 昨日のおさらい行くわよー」
しっかりと掴まれているのか、それともフラムの強引な性格の為か、ユートは逃げられない。仕方なく魔術講義に参加することにした。
「使いたい属性を思い浮かべて……そのイメージが固まったら魔力を掌に出して」
魔術の基本属性は火・風・水・土の四種類。これを四元素と呼び、この四つの元素を組み合わせることで魔術師は様々な魔術を生み出している。爆発系魔術は火と風の元素の組み合わせで発動するし、氷系魔術は水と風の元素の組み合わせで発動する。
ただし、何事にも例外が存在する。
本来は複数の元素を組み合わせないと発動に至らないであろう魔術を、その単一属性を極めた為に他の元素の補助無しで発動させることが出来る魔術師。
その一人であり火の元素を極めた者が【炎の魔女】フラム=ルージュなのである。
「~~~~っ。駄目だ、出来ない」
最前列で集中していた少年ががくり、とその場で膝を付く。力みすぎたのか、顔が赤く染まっている。
同じように挫折している者が殆どで、水の玉を浮かばせたり蝋燭のような火を灯しているのは極少数。少なくとも、風と土で発動出来ている者はいなかった。
「やっぱり魔力を感じさせるところから始めないと駄目そうねぇ」
「と、いうか、いきなりアレは大変じゃないですか……?」
「昨日一応元素との共鳴の仕方は教えたから、何とかなるかな、と」
「共鳴って言っても、初期なんてただイメージするだけだから魔術に至るのは大変じゃないかな、と思うんですけど」
そう、問題はゲームの中にしか存在しないだろう要素、「魔力」。
体力や筋力はある程度目に見えるし、現実世界でも普通に使っている。けれど、これまで無かったものを直ぐに使いこなせ、と言われて出来るのはそれこそ人間離れした者だけだろう。
普通のゲームなら呪文や決まった形がある。魔術を使うことでMPが消費される。詠唱・無詠唱の違いはあれども、それは変わらない。
AFOはリアルに則している。つまり魔術もそれぞれ魔術師が一から創り出すのだ。決まった呪文も発動の形もなく、MP消費も固定ではない。MPを消費して魔術を使うのだ。
このMP消費が先か後かが大きな違い、大きな壁となっていた。
ちなみに、固定させたい場合はその魔術の発動手順をスキルとして登録しておく。そうすればMP消費も威力も呪文も発動の形も登録時と同じ登録スキルが出来上がる。いちいちその場で創らなくていいので魔術師は大抵この機能を使っていた。
「仕方ない、先ずは魔力を感じさせるわ」
「それが本来の手順ですよ……」
肩を竦め手近な一人に近付くとフラムは目を閉じるように指示する。
目を閉じたのを確認し、肩に手を置いて魔力を注ぎ込む。注ぎ込み始めた瞬間、ぴくり、と肩が跳ねたのを見て口端を吊り上げ、満足そうに頷いた。
「何かが流れたのが解った?」
「う、うん」
「それが魔力よ。使う時は力むんじゃなくて、流す感じね。掌に力が流れていくイメージでやってみなさいな。火の元素を使う場合、力が掌から出る時に火になるんだ、って想像するといいかもしれないわ。もしくは、力そのものが火なんだ、とかね」
声を掛けながらユートを見れば、複数人を相手取り同じように説明している姿が目に入る。魔力のみを使う治癒師は下手な魔術師よりも魔力の扱いに長けている。複数の対象に魔力を流す事は造作ないのかもしれない。
これは予想以上の戦力だ、と認識したところで、他の者に魔力を感じさせる為に足を動かすことにした。
今まで無かった物を手に入れても、使えなければ意味はない。
閲覧・お気に入り・評価ありがとうございます。
自分で考えた設定に苦しめられるとか……見切り発車もいいところですね!




