人体実験のススメ
人が生きる為には何が必要不可欠だろうか。
規律?――――出来る限り平等に、平和に生きるには必要だろうが、不可欠という程のものではない。必要になった時に作ればいいのだから。
目標?――――あれば人生に張り合いが出るのだろうが、目標無くダラダラ生きることも出来る。それ以前に今の時点では生きること、帰ることが目標である。
衣類?――――服装を気にするのは余裕がある証拠だ。洗って直ぐに乾かして着ることが出来る現在、一着でも問題ない。
住居?――――雨風を防ぐ場所は必要だが、廃墟にはそんな場所が沢山存在する。最も、教会が広すぎて全員雑魚寝だが収容出来るので最低限の住居はあることになるだろう。
では、必要不可欠なものは?
「食べ物だ。開拓者なら水を出す魔術と火を熾す魔術は基本技能だったから、水の問題は無いとして。このAFO2で生活するに当たって必要なのは食料だ」
「いや誰に向かって力説してるの、レイ君」
「気にするな」
軽く肩を竦めつつ、ユートと共に辺りを警戒しながら歩く。
AFO、もしくはAFO2によく似た異世界に彼等十人が降り立ってから三時間程。生きる為には食事が必要不可欠である、ということで食糧を確保する為にAFO経験者で戦える者は廃都の周りへ散っていた。
AFOでも空腹度システムがあった為、異世界だということを知らせていない一般プレイヤーも疑問を持たず狩りに出ている。寧ろ彼等の方が先にこちらへ来ただけあって、ある程度地理に詳しかった。
廃都は森に三方を囲まれている。唯一森のない南東には険しい山があり、どうやら鉱山らしいと武器職人だったプレイヤーが言っていた。ただし、かなり強そうな魔物が出るとのことで初期武装のまま近付いた者は誰もいない。
廃都近くの森では猪型の魔物が徘徊しているようで、奥に行けば行く程強そうな魔物になっていくらしい。この五日間は猪型魔物一体を集団暴行で倒し、数をこなして全員分の食料にしていたと教えてくれた。
その話を聞いて流石に肉が続くと飽きるのでは、と危惧したアーサーに頼まれ、レイとユートは食べられる野草や果物、川を探しに廃都を出て来ていた。川はもちろん魚が捕まえられるように、である。
「毒消し係がいるから野草を人体実験出来るのは良かったのか悪かったのか……」
「悪かったんじゃないかなぁ?」
溜息を吐きつつ、新たな野草を採取して少しだけ口に入れ、噛む。何とも言えない苦みと痺れが舌を襲ってきたのに反応し、ユートの法衣を握る手を少しだけ下げた。
「あー……彼の者に入りし悪意を取り除け、リベレーション」
苦みは残るものの、身体に回り始めようとした痺れが抜けていく。手にした野草を苦々しく思いながら、アイテムボックスへと放り込んだ。
倉庫の機能が存在しなくなった為か、アイテムボックスの容量制限が消えているのは嬉しい。嬉しいが、アイテムボックスが一杯になったから、と廃都に戻ることも出来ないので人体実験は日暮れまでに帰還出来る距離と時間で続いていく。
「あと何度、この苦行に耐えればいいんだ……」
項垂れながら呟けば、慰めるように肩を叩かれる。叩かれるが戻ろうという言葉は掛けられないのであった。溜息ばかりが増えていく。
と、風に混じって獣臭が漂ってくる。ユートを手で制し、茂みに隠れて様子を見ることにする。
「…………灰色の狼型魔物、だね」
「少し廃都から離れすぎたようだな。……三匹の集団か」
素早さも数も相手の方が上回っている以上、幾らランカーと呼ばれている者であっても初期装備で挑もうとは思わない。最も、例え数が少なかったとしても魔術師と治癒師のみの紙装甲PTで挑むべき相手ではないだろう。魔術師は固定砲台なので素早い相手には相性が悪く、治癒師は回復に特化している為攻撃力が劣るのだから。
顔を見合わせ、ゆっくりと後退する。あちらの方が風上だからか、匂いでこちらに気付かれていないのが幸いだ。そのまま下がり続け、かなり距離を取った所でなるべく最短距離で廃都へと駆け戻った。
「次に僕達が組んで動く時はアスマも巻き込むぞ!」
「はいぃぃっ!」
人体実験はちゃんと安全確認をしましょう(
閲覧・お気に入り・評価ありがとうございます。
リアル志向過ぎて実は色々詰みかけてます。




