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美しきこの世界で  作者: 猫柳
第二章  歩き出したら
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第十四話  ストーカーもとい

少しやばいかもしれない、そう感じ始めたのは、部屋を荒らされてからそう時間が経っていなかった。

一度目から三日後。再び、部屋が荒らされた。今度の標的は制服。ずたずたに引き裂かれたその服は、もはやその機能を有しない。


制服がなければ授業に出れないわけで、私は小さくため息をついた。


「どー、しよっかなぁ」


部屋を荒らされてからというもの、私の空気に押されていた反クロッカス派がゆっくりと体制を持ち直してきているように見えた。嘲笑、侮蔑、その他もろもろ。ゆっくりと、それらが芽吹き始めている。


今のところ、亡国の姫君とかいうデマや公爵家の名前に怯えて、大規模な嫌がらせはない。ただ、これを放置していれば、エスカレートする可能性はある。


笑って受けてたってもいい。と、言えるほどの余裕が消え始めている自分に舌打ちをする。


「強がれ」


小さく呟いた。呪いのように、小さく、強く。





今日は休む、と連絡をし、私は食堂に顔を出した。顔なじみのお姉さんが、私を見つけて目を丸くする。


「アカネ、まだ朝食食べてなかったの?遅刻するわよー?」

「あぁ、うん、今日はちょっと出かけるんだ。今日はお休み」


ひらひらと手を振りながら、私はいつも食べているサンドウィッチを注文する。と、お姉さんは手早くサンドウィッチを二包み、私に渡してきた。


「えっと……?」

「出かけるんでしょ?持ってきなさい」


二つの包みを押し付けて、ぽんぽん、と二回肩を叩かれる。


「負けないで」

「……っ、…………うん」


小さく笑いながら、私は二つの包みを受け取った。



制服を作ってもらうとなれば、日本では専門の仕立て屋に注文するのが普通だ。おそらく、こちらの世界でも同じく。王立学園というのだから、そこいらの小さな仕立て屋で作ってくれるとは思えない。


「とはいえ、知ってる仕立て屋って言ったらなぁ……」


ぶつぶつと呟きながら学園の庭を歩いていると、突然、上から殺気が降ってくる。


「…………ッ!?」


あまりにも鋭い殺気に、反射的に私は横に飛ぶ。瞬き一つの間に、私がいた場所に風を切って何かが降ってきた。


「へぇ、なるほど。さすがの反射神経」


にたりと笑みが向けられた。琥珀色の瞳が、まっすぐに私に向けられる。

燃えるような赤い髪。木刀を握り締める手はまだ細く、体格も成長途中らしい体つきの少年だ。首のネクタイピンの色は赤――すなわち、私と同じ一年生。


「……喧嘩なら買うけど」


包みを抱えながら軽く戦闘態勢を整えると、少年が笑う。


「まさか。喧嘩売りに来たんじゃねぇよ。お前の実力を見る兼、ちょっと挨拶に……っておい無視するな!!逃げるな!!」

「さよならー」

「おい!!待てっつってんだろ!!」


待てと言われて待つ奴はいない。そそくさと逃げようと全速力で駆け出したのだが、後ろからあの少年が追いかけてくる。


「なんで追いかけてくんのさ!!ストーカー!?」

「スト……?とりあえず話を聞け!!」

「だが断る」

「断るな!!」


全力で足を動かしているのに、一向に差が開かない。それどころか、だんだん狭まっている。


(追いつかれる……ッ!!)


なんとなく、素直に捕まりたくなかった。一瞬迷った後、私は決意を決めて。


「はぁぁぁぁぁあああああああああッ!!」

「あ゛!?」


大きく右足を前に出し、それをストッパーにスピードを殺して体をクルリとひねる。スピードを殺しきれなかった少年はそのままこちらに突っ込んできて。


「食らうがよろし!!」

「―――――ッ!?」


突き出した私の拳を避けきれず、もろに鳩尾に食い込ませた少年は、そのまま崩れ落ちた。

え、えっと、ここまでやるつもりはなかったんだ……。


「――――――ッ、がはっ……」

「……え、えっと……ごめん?」


少年は腹部を抱えたまま、地面に膝をついて動かない。

流石にやりすぎたかと、私は少年を覗き込む。と。


「……捕まえた」


がしっと私の腕を掴んで、少年はニヤリと笑う。


「……離せ」

「だー、悪かったって。ほら、もう襲わないし、俺に敵意もない。ただちょいと話したいだけだ」


振りほどこうと数回手を動かすが、振りほどけない。少年を睨みつけると、少年は困ったように私を見た。

確かに少年に、最初の殺気はない。少年が殺気を出したのはあの一瞬だけだった。


「俺のこと、知らないか?そこそこ有名だと思ったんだけどな……」


何も言わない私に、少年は首をひねる。何だお前は国民的アイドルだったのか。そーかそーか。

と心の中で皮肉っていると、ふと少し前に前に聞いた話を思い出す。

燃えるような赤い髪に、琥珀色の瞳の。


「あんた、家柄のない庶民上がりの特待生!!」

「……そこまでざっくり言われると反応に困るな、公爵家の非国民姫よ」


少年の言葉に一瞬むっとしたものの、自分の発言も相手にとっては似たようなものであったことに少々反省する。


「お前の噂は入学当時から聞いてた。良くも悪くも目立ってたからな。最初の頃はうまくかわしてたみたいだが、そろそろ状況も変わってきただろ」

「何が言いたいわけ?私、暇じゃないんだけど」

「悪い流れになってきただろってこと。個人であがくのはこの先きついぜ。かくいう俺も、庶民ってことで軽視されやすくてな」


多分コイツの場合それだけじゃなく馴れ馴れしさとか無神経さとかきっとそういうのが関係していると思うのだが、言う暇もなく少年は言葉を続ける。



「アカネ・コレット。俺と組んで流れを変えないか?」

久々の更新です。スランプで困った困った。お待たせしてすみません。

書けたのはいいんですが、実況動画見ながら書いてたので少々途中集中力が乱れ気味。また改めて修正するかもしれません。

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