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ひょんなことから、憧れの辺境伯家とご縁が出来ました。  作者: 夏笆


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14/20

グラナド辺境伯領 6、



「アバスカル侯爵令嬢。次は、どの屋台にしますか?何か、気になるものがあればおっしゃってください」

「はい。では、遠慮なく。あちらにある、ナッツのはちみつ漬けというものが美味しそうで、気になります。他にも、はちみつとしょうがの飴ですとか、はちみつパンというお品にも心惹かれます。あ、あちらには、はちみつ漬けの果物を使ったケーキもあるのですね。種類もたくさんで。流石、養蜂が盛んな土地とお見受けします。そして、目移りします!」

 あちらもこちらも、王都では見かけない珍しい品だとカシルダが瞳を輝かせて言えば、トリスタンが苦笑する。

「王都で見かけないものは田舎のもの、と蔑まないのですね。アバスカル侯爵令嬢は」

「蔑む要素がありませんから。ああ、でもどうしましょう。あちらに見える海鮮焼きというものも気になるのですが、お腹には、限界というものがあることも承知しております。となると、この場でしか食べられない物を食べて、ある程度保存がきくものは、持ち帰るのがいいのかしら・・・っ」

 悩ましく、色々な屋台の品を見つめていたカシルダは、その時不自然にぶつかって来た男の手首を捕らえると、そのまま捩じり上げた。

「いってええ!何しやがんだ!」

「それは、こちらの台詞だ」

 大げさに叫んでカシルダを睨み威圧しながら、男は、手にした財布を素早く袖口に隠そうとするも、トリスタンにその動きを阻まれ、忌々し気に舌打ちする。

「なんだよ。世間知らずのお嬢様だと思ったのによ」

 そんな男に、カシルダは、感心の声をあげた。

「見事な手口ね。お財布をすった後、わたくしに手を捻り上げられても、怒鳴る芝居を続けて財布を袖口へ隠すなんて。でも、もっと一緒に居る相手を見るべきだったわね」

 大きな声を出されれば、大抵はびくついてしまい、意識をそちらへ向けてしまうから、確かに令嬢には効果的ねと評価するカシルダを見て、男は、がっくりとうなだれ、首を横に振る。

「厄日だ。捕まったうえに、批評までされるなんて」

「お前、見ない顔だな。初犯か?それにしては、手慣れていたな」

「流れ者なんでね」

 トリスタンにがっちりと捕獲された男は、抗う様子もなく、吐き捨てるようにそう言った。

「若君!」

 そこへ、警備中らしき騎士が、トリスタンへと走り寄って来るのを見て、周りの人間が場所を空ける。

「ああ、ガビノか。すりだ。アバスカル侯爵令嬢が未然に防いだが、他にも被害があるかもしれない」

「分かりました。こちらで調べますので、この件は自分達にお任せください。アバスカル侯爵令嬢。犯人確保にご協力いただき、感謝いたします。ついでに、若君のことをよろしくお願いします!」

 男を両脇から抑える騎士の前に立ったガビノと呼ばれた騎士が、代表のように言えば、後ろの騎士ふたりも頭を下げる。

 そして何故か、街のひとたちも。

「え?ええ。こちらこそ。グラナド辺境伯子息には、とてもお世話になっておりますのよ」

 感謝していると、カシルダが微笑んでそう返せば、三人はとても嬉しそうに、もう一度礼をして、トリスタンに何か目混ぜをして去って行った。

「アバスカル侯爵令嬢。なんというか・・申し訳ない」

「いいえ、謝られるようなことは、何も」

「はあ。ガビノは、オレが幼い頃から指導してくれている兄のような存在で、気はいいのだが・・あ」

 思わず『オレ』と言ってしまったらしいトリスタンが、しまったというようにカシルダを見る。

「『私』気にしませんので。『オレ』で大丈夫です」

 そんなトリスタンに対し、カシルダも『私』とするからと言えば、ほっとしたようにトリスタンが笑った。

「もしよければ。オレのことはトリスタンと呼んでください」

「では、私のことはカシルダとお呼びください。それから、もっと砕けた話し方をしてくださって、大丈夫ですわ」

 にこりと笑い合って、ふたりは買い物を続ける。

「荷物持ちは、任せてくれ」

「ありがとうございます。はちみつの種類も色々あって、はちみつそのものも、とても美味しそうなので、お土産に買いたいです。もちろん、自分へのお土産にも」

 家族への土産に、日持ちのする品を選び、自分達が食べたいものを選び。

 弾む足取りで、先ほどとは別方向にある広場のベンチに荷物を置いたところで、ふたりは、破落戸(ごろつき)のような男たちに囲まれた。




ありがとうございます。

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