↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
33/82

9:宣戦布告、あるいは反撃のタイムライン

三権分立の導入宣言から数時間。洞窟内の一触即発の空気は、まるで嘘のように霧散していた。


「――よし、そこはドワーフの搬送チームと、人間の若手で共同のラインを組んでくれ。生産効率が15%上がるはずだ」

「分かった、フジワラ! おい、お前ら! ぐずぐずするな、早速組み立てに入るぞ!」


中央広場では、初代議長となったヒューが、人間の農民たちをテキパキと差配し、エルフやドワーフの職人たちと肩を並べて物資の増産計画に没頭していた。

「ルール作り」という主権を保障されたことで、人間たちは「自分たちもこの組織の主役なのだ」という当事者意識に目覚めたのだ。内なる分断が消えた組織の爆発力は、俺の想像を遙かに超えていた。


「すごいですね……。システム一つで、ここまで人間が変わるなんて」

俺の隣で、行政の事務作業を進めるセクレタが感嘆の声を漏らす。


「ああ。力でねじ伏せたら反発が残るけど、役割を与えてシステムに巻き込めば、正義はそのまま『推進力』になるんだ。……さて、内側が片付いたなら、次はいよいよ外側だな」


俺は洞窟の入り口へと視線を向けた。

街道を完璧に封鎖し、「奴らは干上がって終わりだ」と高みの見物を決め込んでいるイル・ソンガ帝国の包囲網。だが、彼らはまだ気づいていない。俺たちがすでに、陸路を必要としない「空と海の三次元物流計画」を完成させていることに。



---



「ドワーフども、紙の梱包はハルピュイアが掴みやすいよう、特製の縄紐で頑丈に縛れ! セイレーンたちも、西海岸の潮溜まりで『水盆通信』の同期を維持し続けろ! 一瞬たりとも連絡網を途切れさせるな!」


洞窟の最奥、地底湖のほとりで、私は水盆の向こうのセイレーン、そして天井のハルピュイアたちへ矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。

そこへ、作業着の袖をまくったヒューが歩み寄ってきた。その手には、全種族が徹夜の議論で合意した、最初の『コープ基本法』の羊皮紙が握られている。


「おい、ポンコツ王子。行政のトップ。議会が決めた物資の配分と、防衛ラインのルールだ。これに従って、あんたの行政権とやらを執行してもらうぞ」


「ククク、よかろう、議長殿」

私はヒューから羊皮紙を受け取り、不敵に笑った。

「完璧なルールだ。これならば、誰一人として不満を抱くことなく、全力を尽くせる。……ヒュー、お前たちの『生きたい』という願い、この私が行政の総力を挙げて叶えてみせよう」


ヒューは少し気恥ずかしそうに鼻を鳴らすと、フッと笑みを浮かべた。

「頼んだぞ。……帝国軍のバカどもに、俺たちの改革とやらを見せてやれ」


「当然だ!」

私はマントを激しく翻し、作戦の決行を宣言した。

「計画通り、これより作戦を開始する! ハルピュイア、第一陣、離陸せよ!」


「(……了解……いたしました……。空の運搬路、開通します……)」


天井の闇からハルピュイアの伝令がささやくと同時に、東の山頂で待機していた有翼種の群れが、紙の束をその鋭い爪で掴み、夜風を捉えて一斉に大空へと舞い上がった。陸の包囲網を完全に「頭上」から飛び越える、空輸作戦の始まりだ。


同時に、私の足元の水盆が激しく波打つ。

『オーエ、こちら西海岸! 帝国の正規海軍が動きを察知し、警戒を強めています! 私たちセイレーンも、岩礁地帯の誘導ラインへと展開します!』


「よし! 敵の包囲網が我らの行動に気づいたぞ! フジワラ、バリスタ、ヒュー、行くぞ!」


ついに反撃の火蓋は切って落とされた。

「次はいよいよ、帝国軍の度肝を抜き網をズタズタに無力化する「完全なる出し抜き」の決着フェイズへと突入する!」


感想いただけると狂喜乱舞しますので感想くださいください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。