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第9章 愛する者 愛される者

「せんせーーー!」

「悠人君!」

「こんにちは。悠人の父です。いつも息子がお世話になっています」

「いえいえ。悠人君は絵がとっても上手で

教室に沢山の作品が飾られてますので是非、見て行ってください」

「ありがとうございます」


「悠人の教室はどこ?パパを案内してよ」

「うんっ!パパこっち!バァバもジィジもー」

「はいはい」


折り紙で思い思いの物を折り

画用紙へ貼り、色を塗った物や

朝顔の絵や工作などが飾られていた。


「まぁー!悠ちゃん上手ねぇ」

「おお!悠人、パパが小さかった頃より、とっても上手だなぁ!これは何だろう?」

祖母や祖父が1つ1つの作品を丁寧に見ていた。

「ジィジ、これはね紙粘土で作った豹だよ」

「おお!見事だなあ」

「動物で一番強いって思うのを作りなさいって。僕はライオンでも象でも無くて豹が強いと思って」

「豹は足が速いんだ!逃げるのも追いつくのも!」

「そうだなあ。豹が強いなあ」

「バァバも見てー!僕が作った豹!」

「あら、まあ!カッコ良く作れてるじゃない!」

「パパも見てー!」

「悠人、お前は本当に絵も工作も上手だな。この豹も凄く良いなぁ!大したもんだ!

特にパパはアレが一番気に入ってる」

悠人が描いた花火の絵を指差した。


「パパは、この花火の絵を見て感動したよ!上手だな悠人」


悠人は父親から褒められ

嬉しさと気恥ずかしさとが

入り混じった可愛い表情をした。


「悠ちゃん、外にお店があるわね。バァバ、行ってみたいわ」

チケット制になっており園児は事前に配られていた。

保護者も必要ならチケットを購入出来、

祖父母も徹もそれぞれチケットを持っていた。


ゲームをしてお菓子をゲットするのだが

悠人は祖父母と父親のチケットも合わせて使い、大いにお祭りを満喫した。


園児たちの盆踊りに感動して泣いている保護者もいた。


徹はどの表情も逃さないかの様にカメラのシャッターを押し続けた。



「楽しかったわねー悠ちゃん」

「うんっ!」

「今どきの幼稚園の夏祭りは本格的だったなぁ。ジィジは驚いたよ」

「また行きたい?」

「嗚呼、もちろん!」

「次も一緒に行こうね、ジィジ!」



その日の夜、奈緒が夕飯を買い込んで

実家を訪れた。


「ゆうーーーー!」

「なぁちゃーーーんっ!」

「見ない間に大っきくなったねぇ!」

「僕、後ろから4番目なんだよ」

「そっかぁ!」

「ゆう、アイス食べる?買って来たよ」

「うんっ食べる!何味があるのー?」

「色んなの買って来たから見てみて」



奈緒にとって悠人は

ただただ愛おしい甥っ子なのである。




「そうだったんだ!夏祭りだったんだ!」

「なぁちゃんも来たかった?」

「そりゃー、もちろん!」

「じゃあ、次のお祭りん時に誘うね」

「待ってるねー、ゆう。キャーーー可愛い」

奈緒と悠人がひとしきり

じゃれ合い、終わると

「悠人、そろそろ寝る時間だ」

「パパと部屋に行くよ」

「はーい。ジィジ、バァバ、なぁーちゃん

おやすみなさーい!」



徹と悠人は2階の部屋へ行った。



「ねえ、母さん、お兄ちゃんも寝ちゃうの?」

「悠ちゃん寝かし付けたら降りて来るわよ。明日日曜だし飲むんじゃないかしら」


「この間さ、電話したじゃん」

「いつのことよ?」

「ほら、お兄ちゃんとゆうと4人で生活してるって言った時」

「ああ、はいはい」

「あの日さ、疲労度マックスで夜ご飯食べに実家行きたいなって思って電話したの」

「来ればよかったのに。何でも作ってあげたわよ」

「ゆうが居るって言うから、夜遅くに行ってガヤガヤしたら可哀想だなって思ったの」

「子供は寝たら最後、雷が鳴っても起きないものよ。気を遣わないで来なさい」

「あ、ありがとう」


なんだ、なんだ…

父さんも母さんも優しいんだが…



「で、で!その日コンビニに寄ったの結局。そしたら姉さんと若い男がイチャ付きながら入って来たのよ」


「まあ!それで?どうしたのよっ?」

母親は興味津々で身を乗り出して聞いていた。


「一瞬、見てはいけない物を見てしまった気になってコンビニのトイレに隠れたんだけど、段々腹が立って来て」


「それで?どうしたの?」


「電話したの」

「まあ!電話出た?」

「出た」

「それで、それで?」

「母さん好きよね笑」

「だって気になるじゃない!」


「コンビニで買ったシュークリームは美味しいですか?って言ったの」

「まあ!笑」

「したら姉さんが、コンビニ居たんなら声掛けて欲しかったって」

「そんなん、声掛けづらい雰囲気だったし無理やん」

「まあそうよねぇ…」

「本当マジで姉さんは色ボケ年増女って感じだったの」

「色ボケ年増女って…笑。どんな感じかしら笑」

「気色悪いって感じよ」

「平然と自分の人生を生きるのに

お兄ちゃんとゆうは邪魔だって

言い切ったのよ」

「まあ!」


「ロクな死に方しないぞって思ったら、本当にロクな死に方じゃ無かった」


「まあ、ねぇ。徹の所には警察が来たみたいよ。奈緒んとこには?来た?」


「そう、それを言いたくて来たのよ今日!アタシんとこにも警察が来たのよ」

「まあー」

「でね、アレコレ聞かれるわけ。姉さんの携帯に私からの着信も残ってたしね。コンビニでの事言っちゃったわよ」

「背格好や髪型、顔とか。たまたま乗って来ていた車の車種を覚えていたから、それも」

「アタシ、思うにその人が怪しいと思うんだよね。その辺に居そうな今どきの子って感じで敢えて姉さんと付き合わなくても普通にモテるでしょって感じだったの。なんで姉さんと?って思った。お金とか渡してたのかな?」


「徹の話では、悠ちゃんが通っていたスイミングのコーチみたいなのよ、相手が」

「げっ!マジで??」

「そのコーチと一緒になりたくて離婚したのよ。だから徹は絶対に悠ちゃんと今後一切会わせないって言ってて」

「まあ、そうなるよね」

「徹の気持ち分かるの?」

「分かるよ!アタシだって同じ立場だったら会わせたく無いもん」

「でも悠ちゃんにとって、たった1人の母親よ」

「お母さん、そこが古いんよ。

両親揃ってても

クソにしか育たない子供も居れば

片親でも真っ直ぐ育つ子供も居るのよ」

「子供が真っ直ぐ育つのに両親揃ってなきゃダメなんて無いのよ、今の時代」


「奈緒の言う通りだと、父さんも思うな。

悠人を見てると本当に素直に育ってる」


「でしょー」


「悠人の偉い所がな

嫌いな食べ物を、嫌いって言わないで

ちょっと苦手って言うんだ」


「作ってくれた人への配慮ね」


「うむ。幼稚園生がだぞ。うちの悠人は真っ直ぐ育ってる。いずれ母親の事を話す日が来るだろうけどな。話す日まで我々大人が愛情を注げば良いだけだ」


「そうよねぇ。お父さんや奈緒が言う通りなのかも知れないわねぇ」

「徹も変わって来て悠ちゃんと向き合う様になってね」


「へぇー、お兄ちゃんが?」


「そう、人は変わるのよ」



「誰が変わるって?」

徹が降りて来た。


「悠ちゃん、寝たの?」

「ああ。今日は張り切ってたからバタンキューだったよ」


「お兄ちゃん、大変だったね」

「大した事じゃ無いさ」

「そっか。お兄ちゃんがそう思うなら、そうだね」

「奈緒、飲むだろ?」

「うん。ワイン買って来てあるよ」

「おお!まずはワインを頂くとしますか。

父さんも飲むよね?」

「そうだな。久しぶりに家族が揃った事だしな」


「なぁ、奈緒」

「ん?」

「俺ん家、買わね?」

「えっ?あの家?」

「うん。安くするからさ」

「いやぁぁぁ……」

「何だよ!」

「あの家、縁起悪くない?」

「身もふたも無い様なこと言うなよ」

「まだ新しい家だよね?貸せば?」

「ああ!売るより貸すか」

「建物が古くなったら取り壊して

駐車場にすれば良いだろうし」


「なるほどなぁ」


「売るとなると一時的に大金を手にするが

手数料や税金を考えると賃貸にするのが徹にはベターなんじゃないか」

「立地も良いし空き家になる心配は無さそうだしな」


「父さんはその道のプロなんだから

父さんのアドバイス受けながら決めれば良いじゃん」


「そうだった!最近の父さんは悠人の親友で昔の姿を忘れてた笑」



悠人の将来と両親の老後を考え

徹は実家へ戻ろうと考えていた。


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