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第10章 幼き刃 守る大人

「おはよー」

徹がリビングへ降りて来た。

いつもの悠人なら

元気良く挨拶するのだが

この日の朝は挨拶も無く

スプーンでスープをクルクルかき混ぜるだけで、口に運ぶ事もしなかった。

徹は悠人のオデコに手を当ててみた。

「悠人、お熱は無さそうだな」

「パパ…」

「幼稚園、お休みするか?」

「う…ん」

「パパは、どうしてもお仕事に行かなきゃ行けなくて一緒に休む事が出来無いんだ」

「大丈夫」

「頑張って出来るだけ早く帰れる様にするから」

「パパ…」

悠人は、とうとう泣いてしまった。

徹は何も言わずに悠人の頭を撫で

それから強く抱きしめた。

「頑張ってるんだな、悠人」


徹はてっきり母親が居ない寂しさから

弱っているのだと思っていた。





幼稚園の園庭

悠人はお友達と砂場で砂山を作って楽しんでいた。

そこへ他の園児が来て

折角作った砂山を踏み潰した。

「ねえ!やっと作ったのに!」

悠人が言うと

「うるせーー!

お前の母ちゃん変態ババアのくせにっ!」

「ママは変態じゃないもん!」

「うちのママが言ってた、変態ババアだから殺されたって!ニュースに出てたって!」

「変態!変態!変態ババア!」

「あはは!こいつの母ちゃん変態ババア!」


「やめろー!」


悠人は泣きながら、殴り掛かろうとした。


その時、先生が駆け付けた。

「あなた達、何やってるの!お友達泣かせて!」

「こいつの母ちゃん変態ババアだからだ!」

「どうして悠人くんのお母さんが変態なの!」

「ニュースに出てんじゃん!ママが変態ババアって言ってたもん!」

「こらっ!こっち来なさい!」


他の先生が

「悠人くん、先生とお部屋行こうか。

みんな、仲良く遊ばないとダメですよ!

伊藤先生!」

「はい」

「この子達を見ていてください」

「分かりました。さあ!みんなで鬼ごっこするよー!」

「はーい」

「捕まったら鬼さんと手を繋ぐのよー」




「悠人くん」

「先生、ママは変態なんかじゃ無いもん」

「うん、そうだよねぇ」

「意地悪言う圭太くんなんて嫌い」

「悲しくなっちゃうよね」

「もう、いやだ!」

「悠人くん、大丈夫!先生が居るから。先生方がちゃんと悠人くんを守るから。いやだなんて言わないで欲しいなぁ」

「でも、いやだ!みんなの前でママの悪口言われて」

泣きながら言葉に詰まりながら

悠人は気持ちを言った。



「圭太くんっ、どうして悠人くんにあんな事を言ったの?」

「本当のことじゃんかっ!」

「本当の事だと思うの?」

「ママが言ってたし、俺もテレビで見たもんっ!」

「圭太くんのお母さんが変態って言ったの?」

「そーだよ!」

「圭太くん、いい?テレビは決して本当の事を言うとは限らないの」

「ニュースは嘘つきじゃない!」

「ニュースでも、よく調べないで面白おかしく言う時があるの。だから全てを信じ無いで

自分の目で調べる事が大切なんだよ」

「圭太くんは自分で調べてニュースと同じだって思ったの?それで言ったの?」

「……」

「調べてもないのに、ニュースが全部正しいと思って言ったのね?」

「ママだって言ってたもん」

「なら、圭太くんのお母さんにも先生から言わなきゃいけないね」

「言わないでよ先生!ママに言わないで!」

「どうして?圭太くんも圭太くんのお母さんも調べてないんでしょう?それで言うのは悪い事だよね?」

「たくさんのお友達の前で、お前の母ちゃん変態って言われた悠人くんの心はどうなるの?」

「なんで悠人ばっかりエコ贔屓すんだよー!」

「違う!先生も調べて無いから、分からないから言わないの。むやみに人を傷付けちゃいけないの」


幼稚園から圭太の家へ電話が行った。






幼稚園の送迎バスの停留所

「すみません、悠人は今日体調が優れず、お休みさせてください」

バスに同乗していた先生へ祖母が伝えた。

「承知しました。悠人くんのお父さんと連絡が取れましたら一度、園に連絡頂きたいとお伝え願えますか?」

「悠人に何かあったんでしょうか?」

「昨日、お友達とちょっと…。」

「父親に連絡しときます」

「お手数ですが、よろしくお願い致します」


バスは園に向かって走って行った。



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