第7章 見切る者 抗う者
コンコン、コンコン
「ももちゃん。開けて」
「ちゃんと話をしよう」
コンコン、コンコン
「どちら様ですかー?」
「ももちゃん、俺だよ。ごめんって」
「は?誰?ごめんって何?」
「一回開けて」
「やだ」
「話を聞いて」
「聞きたくない」
「お願い、開けて」
嫌いになり切れない百枝はドアを開けた。
玄関が開くと百枝に抱きつき
「ももちゃん」
「離してっ」
リビングへ入ると直ぐさま土下座をした。
「本当に本当に、ごめん」
百枝の目には
土下座をすれば許される、そんな風にしか見えなかった。
(こんなクソ男にしがみつくアタシも情けないわ…)
百枝は急に冷めてしまった。
「今の今は許せないの。ホテル帰りのアンタを部屋へ入れてあげただけ、有り難いと思ってよ」
「悪かった」
「今日は一緒に居たくない。取り敢えずビジホかどっかに泊まって」
「ももちゃん…」
「よその女を抱いて来た人と同じベッドになんか入れる訳がないでしょーよっ!」
感情的に言いながらも
どうやって罪悪感を植え付けて別れてやろうか…
そんな事を考えていた。
「兎に角、明日以降の態度で決める」
「事情が有るんだ。ももちゃん。本当に愛しているのはももちゃんなんだ。信じて欲しい」
「ふんっ!そんな事言う口で他の女とキスしてたんだよね?信じると思う?」
「なんだってする。だから許して。機嫌直して」
「何だってする?」
「さっきから言ってるよね?財布だけ持って出て行けって。あ、そうだ、携帯置いてって」
「ももちゃん」
「今日は一緒に居たくないんだってば!逆の立場だったら一緒に居れるの?他の男に抱かれて帰って来たアタシと一緒に寝れる?」
「………」
「明日以降の要次の態度次第で、どうするか決めたい。今日は、これ以上アタシを惨めにさせないで!」
早く出てけよ。
ゆっくり
お前の携帯覗かせてもらうからさ。
「分かった。じゃあ、明日、会社でな」
お前には明日なんか、ねーんだっつうの。
百枝は完全に冷めた。
太田は百枝の気持ちが収まる事を願い
財布だけ持ち、出て行った。
出て行った後、携帯を見た。
「川島?誰?」
LINEを開くと百枝は吐き気がした。
「こいつだ…絶対そうだ…」
「このババア…気色悪っ」
「え?スイミングスクールの生徒の親じゃん」
「もしもし要次君、今日は楽しかったね」
「もしもーし、あれ?私の声、聞こえてる?」
「聞こえてますよ」
「え?誰?」
どうして彼の携帯から女性が…
「川島悠人くんのお母さんですよね?」
「どうも、太田と同棲中の彼女です」
「同棲中?」
「ええ、近々、私たち結婚するんですよぉ」
わざと煽ってみた。
「結婚?」
「はあい。うちの太田がたまには雑食が欲しくなっただけなんですよ」
「え?雑食?」
「男って綺麗で若い子が好きなんですよぉ。ババアのくせに色ボケしてんじゃねーよ!」
「ババア、訴えんぞ」
結婚などしない。
が、弥生を傷付けたかったのだ。
私が携帯を持っていれば
連絡が取れない。
ババア、焦るんだろうなぁー。
年増の焦る姿、見物させて頂きます。




