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第6章 騙す側 気づく側

脇澤百枝は仕事先で出会った恋人と

同棲を始め1年が過ぎた頃

恋人の態度に薄らとした疑惑を持ち始めていた。


「もしもし、もも?ごめん、今日帰りが遅くなる」

「今日早番だったじゃん」

「うん、仕事上がりに友達と会う約束してたんだ」

「聞いてないよ」

「ごめん、忘れてた」

「今どこ?」

「駅前の焼き鳥屋だよ」

「ふうん」

「なに?ふうんって」

「アタシもその焼き鳥屋に行っていい?」

「いつもだったら良いんだけど相談したい事が有るって言うからさ」


「駅前の焼き鳥屋って、レジーナって言うホテルなんだね」


「なっ!何言ってんの?」


「今どこに居るか分かってるからっ」


「別れよう。もう帰って来ないで」

「もも!」


「あんたの荷物は玄関先に置いとく」

「もも!」


ツーツーツー

電話が一方的に切られた。






川島奈緒は最寄駅の駐車場まで車で行き

後は電車で都内まで通勤していた。

最終バスに間に合う時間に帰れない時期は決まって車を出していた。


「はーっ、疲れたー」

車に乗り込んで発する言葉は

いつも「疲れた」だった。


新卒の入社式、株主総会、新人研修と立て続けに気が抜けない業務が続いていた。


「お腹すいたなぁ」

「作るの面倒だなぁ...」


「こんな時間じゃ母さん達も起きてないよねぇ...」

実家に立ち寄り食べたかったのだ。


「コンビニ行くか」

車のキーを回しエンジンを掛けた。


しばらく走りマンション付近のコンビニへ車を停めた。

「何にしよーかなっ」

遅い夕飯を物色していると

カップルらしき2人組が入って来た。


「何にしよーかなぁ」

「お好きな物を、お選びくださいませ」

「あんっ。優しい」




「かーーーっ、

中年の色ボケカップルか…」

奈緒はウンザリしながら2人組を見ると


「うわっ!」

焦った。

焦った奈緒は店員へ

「すみません、お手洗いお借りします」


「どうぞ」


急いでコンビニのトイレへ向かった。


「なに?なに?なに?どう言う事?」

「隠れちゃったじゃんっ!」


「なんで姉さんが...しかも兄さんより若い男と」

「これって...」


「悠人が居るのに、こんなに遅くまで...」


「あらーって、声掛けちゃ、ダメなやつだよね...」



なんか...

姉さん、腹立つ。

確かに兄はわがままな人だけど

でも、それでも。


まだ小さい悠人を置いて、あれはない。


なんか...

姉さん、アンタ何様?って感じなんだけど。


兄さんにチクろうかな...


あーーーーー!!

どう動けば悠人が傷付かないで居れるのさっ



コンビニを出た後、車の中で母へ電話をした。


「もしもし川島でございます。あらっ、奈緒!どうしたの?こんな時間に」

「あら、そう。ここはあなたの家なんだから」

「もー奈緒ったら」

「連絡なんて無くていいの。いつでも好きな時に帰ってらっしゃい」

「そうそう、今、徹と悠ちゃんと4人暮らししてるのよっ」



「え?」


母に弥生の事を話そうとしたが

その前に、知らない事実が飛び込んで来た。



奈緒はいつも

真実を最後に知る側だった。


家に顔を出せと言う割に

私抜きで色んな事が進んでいて

いつも事後報告。


体調悪い

病院まで送って欲しい

そんな時ばっかり電話してくるくせに。

こう言う事は一切報告無いんだよね毎回。


なんか…イラッとする。




「もしもし姉さん」

「あら、なおちゃん」


「コンビニで買ったシュークリーム、美味しいですか?」


「えっー?なにぃー?」


「私も居たんですよ。

気付きませんでしたか?

気付く訳無いか。

ご一緒の方しか眼中に無いって雰囲気でしたもんねぇ」


「奈緒ちゃん、声掛けてよ」

「いや、あれは声掛けづらいですよ」


「そんな感じだったかしら私」

「はい。そんな感じでしたよ。悠人の母親には見えませんでしたよ」



「奈緒ちゃん…」


「親って言うより、女でしたよ姉さん。その姿を悠人に見せれますかね?」


「奈緒ちゃん、徹と離婚したの。今後一切、悠人と会わない事を条件に離婚してもらったの」


「もらった?え?」


「徹さんが出した条件を直ぐに飲んだわ。

私は悠人の母親でいる事を自分から放棄したの」


「奈緒ちゃんが何を言いたいのかは

大体想像つくけど、ごめんね。

私は私の人生を生きるために

徹さんも悠人も邪魔だったの」




「アンタ最低」

奈緒は携帯を切った。




散々、うちから援助して貰ったくせに。

結納金だって相場より多く渡してやったのに。

結婚式のお金も無いって言うから

ドレス代もうちが出してやったのに。


なんなん、あの女。


私の人生?

はっ?


よく言えたもんだ。



あーー、

どいつもこいつも

ムカつくんですけどっ



母親との電話で苛立ち

腹いせ代わりに弥生へ電話をしたら

更に新たな事実を知らされたのである。


川島家ではアタシは

いつも蚊帳の外。


全てを知りたいわけでは無いが

何も教えてくれない事への

腹立たしさがあった。




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