第5章 容疑者 標的者
「太田要次さんですね?」
「はい」
(何で警察が来るんだよ)
「川島弥生さんの件でお伺いしたい事がありまして」
「はい」
「川島弥生さんが何者かによって自宅で殺害されました」
「は、はい...あのう本当に彼女がですか?」
「ご遺族に確認して頂きましたので」
太田は肩をだらんと下げ
「か、彼女がですか...」
「遺留品の携帯にですね、亡くなったとみられる日に太田さん、あなたからの着信が数分置き位にありましてね」
「土曜日に会う約束をしてまして。なかなか来ないので何回か電話しました」
「亡くなった川島弥生さんとは、どのようなご関係で?」
「えっ...言わないとですか?」
「差し支え無ければ。捜査にご協力頂けると有難いのですが」
「えーと、その... 体だけの関係と言うか...はい。」
「遊び相手という事ですね?」
「はい」
「川島弥生さんのお子さんは太田さんの務めているスイミングスクールに通っていたとか」
「あ、はい。ただ、少し前に退会されて。以前、彼女に会った時、退会理由を聞こうとしたら...その...」
「離婚された事を知ったという事ですか?」
「はい」
(どこまで警察は知っているんだよ)
太田の額には脂汗が浮いていた。
「殺害当日に会う約束をしていたが会わずじまいだったんですね?」
「はい」
「分かりました。ご協力ありがとうございます」
「いえ」
「あ、あのう」
「はい?」
「彼女...弥生はどこで...その...」
「ご自宅ですよ」
「部屋の鍵は...」
「掛けられてました。合鍵はお持ちですか?」
「いえ。離婚した事も知らなかったので」
「他に何か?」
「いえ、有難うございます」
「今週末に大学時代の友達が来て飲むんだけど来る?」
待ち侘びた太田からの連絡に弥生は小躍りしていた。
「いいの?」
「みんなに紹介したいからさ。週末に迎えに行くよ」
「分かったわ、待ってる」
計画はあった。
だが、実行されなかった。
誰だ...
無駄に疑われた太田は腹が立っていた。
くそがっ。
人に迷惑かけねぇーでやれよな。
スイミングスクールで保護者の車が停車出来ず受付スタッフが
「太田さーん、車移動お願いします」
「僕はご覧の通り水着姿で。外に出たら変質者じゃないですか?笑」
「分かりました笑
私が移動しますので、車のキーをお借りしてもよろしいですか?」
「はい、これ」
「受付で預かって置きますので良きタイミングで取りにいらしてください」
「はいよーー」
弥生の部屋の鍵が
そっと
太田の車のダッシュボードへ忍び込まれた。




