第3章 改心する父 女のままの母
「悠人、どうした?ちゃんと朝ごはん食べないと幼稚園で楽しめないぞ」
「パパ」
「お迎えのバスが来るぞ。早く食べちゃえ」
「おはようございます」
「おはよう、悠くん」
「先生、今日もよろしくお願いします。あ、それと今日から私の母が迎えに向かいますので」
「承知しました。じゃぁ、悠くん、お父さんに行ってきます言おうか」
「行ってきますパパ」
「うん、悠人、楽しんで来いよ」
バスを見送り時計に目をやる。
「うわっ、遅刻しそうじゃん」
これが毎日続いたらおれはクビになってしまうな。
ならなくてもボーナスの査定が低くなるな。
母親に頼るか...
「もしもし川島でございます。あら徹。
まあ!そうよねぇ。うちは構わないわよ。お父さんだって言ってたわよ。ええ。その方が悠ちゃんの食事管理も出来るし。そうしなさい」
土日祭日以外は実家で過ごすことになった。
料理が出来ない徹としては
悠人のお弁当作りにも、朝食の支度にも手間取ってしまってた。
「バァバー!」
「悠くーん!」
幼稚園のバスから降りた悠人は一目散に祖母へ駆け寄った。
「お帰り、悠くん」
「バァバ、ただいまっ」
「今日は幼稚園で何をしたの?」
「画用紙に花火の絵を描いたんだよ」
「あら、そう。悠くんが描いた絵をバァバ見たいなぁ」
「今度、幼稚園のお祭りがあるんだよっ!そん時見れるよ!」
「お祭りー!わぁ!バァバ行きたいなぁ」
「うんっ!一緒にいこー!ジィジも!」
「そうねぇ、みんなで行こうね」
「パパは来ないよ」
「わかんないわよー」
「いっつも来たとこ無いもん」
「お仕事忙しいからかなぁ」
「違うよ!お祭りも、七夕さま会も、遠足も来ないんだ。いつもソファーでスマホ見てるだけ。僕と一緒が嫌なんだ」
「そんなことないわよ!」
「ママもパパも僕と一緒が嫌なんだって知ってるからっ」
「悠くん、そんな事ないのよ。パパはお仕事でクタクタで少し休みたかったみたいなの」
「じゃあ、ママは?ママはどうして居なくなったの?僕と一緒が嫌だからでしょ」
祖母の手を握り
うつむきながら
心の叫びを声に出した。
小さい子に、こんな事を言わせるなんて。
悠ちゃんの心を傷付けた徹も弥生さんも
親失格だわ。
バァバがパパに叱ってあげるから。
パパを改心させるからね。
祖母は悠人の気持ちを思うと泣けて仕方が無かった。
その日の夜
「徹!話しがあるわ。いいかしら?」
「うん。何?疲れてるから早く済ましてくんないかな」
「そう言うアンタの態度が悠ちゃんの心をどれだけ傷付けてると思うの!」
「アンタはいつになったら悠ちゃんの父親になるのよ!」
「なってるだろう!そりゃ母さんや父さんに負担かけてしまってる部分は否めないけどさ」
「私もお父さんも大した負担じゃないわ」
「何が言いたいの?」
「アンタは父親失格だって話」
「だからなんで?」
「今日、悠ちゃんが幼稚園で何をしたか聞いた?」
「悠ちゃんが、どうしたいって思っているか知ってるの?」
「悠ちゃん、パパもママも僕と一緒に居るのを嫌がってるって」
徹の母親は泣かずに居られなかった。
「あんな小さい子に言わせるって、よっぽどよ。何が父親してるよ!」
「週末まとめて悠人から聞くよ」
「それが父親失格だって!子供は日々成長するのよ。毎日話して悠ちゃんの変化を察知するのが親でしょう」
「今度、幼稚園の夏祭りがあるからバァバとジィジで行こうって言ってたわよ」
「パパは?って聞いたら...」
「パパは僕と一緒に居るのが嫌だからって」
「アンタ、今まで幼稚園の行事に参加しないで弥生さんにさせて家でゴロゴロとスマホ見てたんですって?お友達のところはパパもママも来ているのにって。今度はママが居なくなって。どうせ僕なんかパパもママも嫌いなんだって」
「小さくてもわかるの。誰が向き合って、誰が邪険にしてるかを」
「自分が小さかった時を思い出したちょうだい!私もお父さんも、いつも居たでしょう」
「アンタが小さい時、寂しいなんて思ったこと有る?無いでしょう?」
「親になるって、どう言うことか考えてちょうだい」
徹は母親に言われたことを反芻し寝れずに居た。
そうだよな...。
悠人...
パパが悪かった。
仕事だ。疲れてるから。
言い訳ばかりして
自分の都合を優先させてしまってた。
悠人...
お前はパパの光だ。
パパは変わるよ。
見ててくれ。
嫌いにならないでおくれ。
「弥生です。忙しいの?連絡待ってます」
LINEを送っても既読すら付かないのである。
太田さん、私を嫌いになったの?
お願い、嫌いにならないで。




