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第20章 戻りつつ 変わりつつ

日曜朝。


「パパ!さっきからずっと言ってる!」

「分かった、分かった。今起きるから」

「もーーーー約束したのにーー!」


「朝から元気だな悠人は」


「ジィジ聞いて、パパがトイレで朝起きたら、もう寝ないでアイス買いに行くって約束したのに寝るんだよ!やっぱり眠いって!ズルいんだよパパって!」


「あははは。それはパパが約束破りだなー」


「僕、すっごい楽しみにしてたのにー!」


「アイス!アイス!アイスが食べたいっ!」

悠人は歌う様に、踊る様に連呼した。



「ジィジと行くか?」


「いいの!」


「ああ、朝の散歩がてらに行こう」


「ジィジーーーー」

悠人は祖父に抱きついた。


「ジィジあのね、こっちのコンビニには無くて、あっちのコンビニにしか売ってないアイスがあるんだ。それ買いたいの」

「おー、佐藤さんとこのか」

「佐藤さん?」

「ジィジの友達だ。友達がやってるコンビニなんだぞ」

「ジィジすごーーーい!コンビニの人とお友達なの!英語も話せるし!ジィジはやっぱり凄いんだね!!」

「あははは。長く生きていれば自然とそうなる」

「僕もなる?」

「悠人の場合はジィジより、もっと早くそうなるんじゃないかな」

「なんでー?」

「ジィジの子供の頃は英語教室も絵画教室も何も無かったんだ。算盤と習字くらいだ。だからジィジは大きくなってから英語を勉強したけど悠人は違う。今から勉強出来るだろう」

「うん」

「小さいうちに色んな教室に通ったら教室の数の分、色んな友達が出来る。その中に将来の社長さんとかが居るかもしれんな」

「大きくなったら社長さんになる人ってどんな人?」

「んー?どうなんだろうなぁ。どうしてだ?」

「今のうちに仲良くしとくと良いかなって!」

「あはははは!いいか悠人、お友達を作る時は肩書きで作らないで一緒にいると楽しいとか

頑張れーって心から応援出来る人と友達になるのがいいぞ」

「どうして?社長と友達だったら良いじゃん、なんか」

「そうか?」

「うーんっ!」

「もし、その社長の会社が潰れて、その人が社長じゃなくなったらどうする?」

「あっ、そうか」

「社長じゃなくなったからサヨウナラか?」

「んーーーー。その時にならないと分かんない」

「友達って言うのは離れてても心の中でアイツ元気にしてるかな?って思える人のことを言うんだ。悠人も、心の中で悠人は元気にしてるかな?って沢山の人に思ってもらえる様になって欲しいな」


そんな、こんなを話しながらコンビニに着いた。


「あーーーっ!ゆうとーーーー!」

「るいくんっ!」

幼稚園の友達と遭遇した。


「こらっ、お店で大きな声出さないの!」

「悠人くんのおじいちゃん、うちの子が騒いですみません」

「いえいえ、男の子はこれ位、元気じゃ無いと」


「悠人くん、久しぶりだねぇ?おばちゃんのこと覚えてる?」

「るいくんのママでしょう!忘れてないよーー」

「わぁ!うれしいなあ。あれ?悠人くん日焼けした?」

「んー?そうかなぁ…」

「最近リトルリーグ始めまして。それで日焼けしてるんですよ」

「そうなんですねぇ」

「悠人くん野球楽しい?」

「はいっ」


「いいなぁー!俺も悠人と一緒に野球やりたい、ねえママ!」

「えーーー。るいは足遅いし、出来るかしら?」

「悠人も運動音痴ですがコーチが年齢毎に練習メニューを作ってくださって楽しそうですよ」


「るいくんも一緒に行こうよ!パパの車で行けるし!」


悠人の誘い水にるいは野球やりたい一色になっていた。

「ママやりたいーー!」

「わかったからっ、お店で騒ぐなっての!」


「悠人くん、どこのリトルリーグなの?今度幼稚園で、るいに詳しく教えてくれる?」


「はい。紙持って行って、るいくんに渡します」

「ありがとう。野球でも、るいをよろしくね」

「はい」

「じゃぁ、またね!幼稚園で待ってるねー!」

「ゆうと、またなーーー」


「うん、るいくん、またねー!」





「ただいまー」

「あらあら!朝から2人でどこに行ってたの?もう!」

「バァバ、はい、お土産」

「えーーお土産?」

「アイスクリーム。好きでしょバァバも」

「まあ、ゆうちゃったら。ありがとうねぇ」

「バァバのアイスはねぇ、中に小豆の入ってるコレね」

「あらー、美味しそうねぇ。朝ごはんの後にみんなで食べましょうね。お手て洗って来てちょーだい」

「はーい」



「あら、ゆうちゃんのアイス溶けないわね」

「そうなんだよ!溶けてドロドロにならないんだぁ!TikTokで見て食べたくなってパパと買いに行こうって約束したのにさあー」


アイスを食べている所へ徹が起きて来た。


「悠人ー、寝坊助でごめん。ごめん、ごめん、ごめんっ!」

悠人に抱きつき

悠人を揺らしながら侘びた。


「本当は悪いなんて思ってないよねパパはっ!」

「んーーー少し…」

「酷いよっ!でもジィジと行って来たから、いいよ」

「これか、あのアイス」

「そう!見てパパ」

悠人はアイスを揺らして見せてみた。

「ねっ、溶けてないでしょ!」

「おー!本当だ。凄いな」

「パパのも買って来たよ。シャリシャリのアイス」

「おー!ありがとな」


「あ!そうだパパ!」

「んー?なんだ?」

「るいくんに会ったよ」

「幼稚園の?」

「うん」

「るいくんもリトルリーグに入るって。だからリトルリーグの紙ちょーだい。るいくんに渡すから」

「るいくん家に持ってくのか?」

「違うよーパパ!幼稚園。今度持ってくねって約束したの!」

「あ、そうか。じゃあ、封筒に入れた方がいいよな。クシャクシャになったら大変だもんな」

「うんっ」







「パパー!行って来まーす!」

「おう!気を付けんだぞ」

「はーいっ」

「るい君に渡しわすれんなよー!」

「はーいっ!」




「みなさん、おはようございます」

祖母がバス待ちしている保護者へ挨拶をした。

「おはようございます」

「ゆーとくーん!久しぶりだねぇー!」

「元気してたー?」

「見ない間になんか逞しくなってない?」


各々が悠人に声を掛けてくれた。


バスを見送り家へ戻ろうとする祖母へ

圭太の母親が声を掛けた。

「悠人くんのおばあちゃま」

「あ、はい」

「あのう…」

「この度は、うちの愚息が大変申し訳ございませんでした!」

深々と頭を下げたままの姿勢を崩さずにいた。


「あらあらあら、頭を上げてくださいな」

「ほら、上げてください」

圭太の母親の身体を起こしてあげた。


圭太の母親は顔を赤くし

「私の育て方が悪くて悠人くんを酷く傷付けてしまいまして。息子を連れてお宅に伺ったのですが、どなたもいらっしゃらなくて。何度か伺ったのですが、ご不在で。謝罪が遅れてしまいまして申し訳ございません」


祖母はフッと笑みを見せ

「2週間ほど留守にしてましたから、何度もご足労掛けてしまいましたね。

こちらの方こそ申し訳ございません」


「とんでもないです」


「子供なんてそんなものですよ。イチイチ言った言わないを気にしていたら子育てなんか出来ませんよ」


「ですけど…」


「これからも悠人と仲良くしてください」


祖母の言葉に圭太の母親は泣いた。

「本当に本当に申し訳ございませんでした。このまま悠人くんに会えなくなったらと」


「悠人の父親がたまたま大きな休みを取れたのですがタイミングが悪かったですよね。私どもは全く気にしておりませんのに、そちらが気にされても。今まで通り仲良くして行きましょう」


「ありがとうございます」


「また、お迎えの時間に会いましょう」


祖母の歩く後ろ姿に一礼し圭太の母親も家へ戻った。





「ねえ、お父さん。本当は、はらわた煮えくり返ってたけど菩薩を演じたわよ」

「あははは!母さんは面白いな」

「面白い事など1つも無いですよ」

「母さんに愛されてる悠人は幸せ者だ」

「家族の為なら菩薩にでもなれますよ」

「本当は般若なのにな」

「父さんったら!」

「あはははは」






「色々心配掛けたけど悠人が幼稚園へ行き出した。たまには悠人の顔を見に来てくれよな」


「なーに、偉そうに兄さんったら。言われなくても行きますっての!」

奈緒は徹のLINEを読みながら毒ついた。


「幼稚園に行き出せたんだ。偉いぞ悠ちゃん」

奈緒も安心した。


最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

徹と悠人の成長を感じて頂けたなら嬉しいです。

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