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第18章 歩き出す 歩み直す

旅行から帰って来た翌朝


「悠人、幼稚園どうする?」

「行かなきゃダメ?」

「ダメじゃないぞ。嫌なら行かなくていいんだ」

「どーしたら良いか分かんない…」

「だよなー、休むか?」

「いいの?」

「パパは今日まで休みだ。どこか行くか?」


「………。」


「家に居たいか?」


「パパ…」


「うん」


「僕、ママのお墓に行きたい…」


「悠人…」



「あら、悠ちゃんママのお墓に行きたいの?パパは明日の準備があるみたいだからバァバたちと行きましょう」


「だめっ!」

「パパと行きたいの!」


「あら…。でも悠ちゃん」


「良いんだ、母さん」

「パパと行こう」


「うん」


「母さん悪い、墓が何処に有るのか聞いて欲しい」


「確認するわ」








「じゃ、行って来るよ」

「徹、アンタ…」

「いいんだ。ほら悠人、助手席に乗って」

「バァバごめんね」

「いいのよ悠ちゃん。気を付けて行ってらっしゃい」


悠人を乗せた車が走り出した。


「ママのお墓だなんて…。私でさえ行きたいなんて思わないのに」

「悠人にとって母親なんだ。過敏に反応するな」

「だってお父さん…」

「奈緒と悠人はハワイでたくさん話してるんだ。悪い結果にはならんよ」

「そうかしら、心配だわ」

「ほら、家の中に入ろう。母さん、お茶頼む」

「どうして男の人って簡単に…」

「ほら母さん」

「分かりましたよ」



墓前に立つ悠人の手は花束を持っていた。

徹は黙々と線香に火をつけ悠人に花を活ける様に言った。

「悠人、そことそこにさしてくれ」

「はい」

「どれ、挨拶するか」

「うん」



少し沈黙が流れ


「ふぅーーー」

悠人が決心したかの様に息を吐き出した。


「ママ、お葬式に行けなくてごめんね」

「ママは今、どんな気持ち?」

「僕は悲しい気持ちだったよ」

「でも今は薄くなって来たんだ」


「ママ?ママは僕と太田先生、どっちが好き?」

(悠人!!!)

徹は声が出なかった。


「野球やりたいって言ってもスイミングしなさいって。本当は嫌な気持ちだったんだよ」


「僕、ママのせいで圭太くんに意地悪言われたんだよ。ママが嫌いになったんだ」

「でも、もう嫌いじゃないからね」


「ママ?ママはいつ僕の夢に来てくれるの?」




悠人は手を合わせず墓石をぼんやりと見ていた。



「悠人」


「パパ、帰ろっ」


「いいのか?」


「うん」


「ママ、バイバイ」





車に乗り

「悠人、喉渇いてないか?ジュース買うか?」

「パパ…」


悠人の目から涙がぽろぽろと溢れて来た。



弥生がいつも悠人に向かって自由になりたいと言っていたこと


弥生が太田とキスをしている所を他の子に見られてスイミングで揶揄われていたこと


徹の帰りが遅い事をいいことに悠人に留守番をさせて外出していたこと


悠人を生まなければ良かったとヒステリックに罵倒していたこと


徹に言ったら殺すと言われていたこと



弥生のネグレストとも虐待とも取れる様な事をしていたと初めて知った。



「ごめんな悠人」

「気づいてやれなくて、ごめんな」

「パパのせいで苦しい思いをさせてたんだな」

「ごめんな。パパは何も見えて無かった…」


悠人に謝ることしか出来なかった。



「パパ、僕ね…」

「パパもママも嫌い。だけど好きだよ」


「今も嫌いか?」


「ううん。パパありがとう」

「パパ、本当に大好きっ」


徹は嗚咽し

自分の不甲斐無さから

悠人を苦しめていた事実を知り

悔やみ嘆き

そして深い反省の意を悠人に示した。


悠人を抱きしめては

「ごめんな、本当にごめんな」


取って付けた様な向き合い方ではダメだ。


悠人の心と体の成長をサポートしながら

両目見開いて見て行かなければ。


口は出さなくとも

今、悠人はどんな状態かを

見れば直ぐ分かる様に。



今ようやく

親とは。を理解した。



「ごめんな。これから一生懸命頑張るから。悠人を大切にするから。いつでもパパには遠慮無く気持ちをぶつけて欲しい」



「パパ、僕のパパがパパで良かった!」


「ありがとな…」



「ずっと大好き」




悠人のやりたいこと

徹の出来ることを増やし

歩み直すと固く決心した。







2ヶ月後のとある週末。


「ゆぅーちゃーん!かっ飛ばせぇー!」


奈緒はリトルリーグに入って初めての悠人の試合を観戦してた。


徹は他の子供の保護者同様にお茶出しや

引率、審判など手伝っていた。


「川島さんのお陰で私たちの力仕事が減って有難いです。でも、ご無理なさらないでくださいね」

男手を重宝されていた。


「川島さん。次、悠人くんの番ですよ!」


「悠人ーーー!」

徹の声援に振り向き

ヘルメットのつばをキュキュと触って

返事をした。



「スリーアウトーーー!」


悠人の初打席は空振り三振だった。




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