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58 さらば、ザカリオ!

 青く光る祠で日本に帰る手がかりを掴んだ俺達は湖のあるエリアを後にし、メウ横丁へと戻った。

 そこで待っていたジュリアと爺やに、俺は祠の前で何があったかを伝える。


 イサイがいたこと、エレガンス製薬から追手が来たこと。その追手はエレガンス製薬の社長が日本人であると明かしたこと。


 俺とクロジが日本に帰る方法はありそうだが、詳しい方法はまだ分からないこと。


「では、ヒロさんとクロジちゃんは故郷に帰れるのですね?」


 ジュリアが瞳に希望を灯し、まっすぐに俺を見つめる。


「でも、いつ帰れるかは分からないし、これから具体的にどうすればいいのかも分からない。いやぁ、困った困った」


 俺は笑いながら頭をガシガシと掻いた。

 本当は笑う気分ではないし、胸の中は不安と戸惑いでいっぱいだ。


 ただ、それを表に出すと、感情が一気に押し寄せて自分を保てなくなってしまう気がするのだ。


「ヒロさんはきっと故郷に帰れますわ。根拠はありませんけど、わたくしそんな気がしますの。ヒロさんはこれからもっと冒険を重ねて、たくさんの経験を重ねて、それから元の世界に戻るんだと思いますわ。今はまだ道の途中ですけれど、これから進む先にもちゃんと道しるべがあります。だって、こんなに素敵なお仲間がいるんですもの」


 ジュリアは俺の後ろを見て優しく微笑んだ。俺が振り返ると、カゲロウとリタが微笑んでいる。カゲロウが俺の背中をバシッと叩いた。


「ヒロとクロジが日本に帰るまで、吾輩もサポートしてやろうではないか。もちろん弟を探しながらではあるが、ちゃんとお前の面倒も見てやる」


「そうですよ、私もヒロさんとクロジをサポートしますからね。あ、お礼は美味しい串焼きでお願いしますよ!」


 リタが歯を見せてニカッと笑った。


 ああ、俺はこの世界に来てから、ずっと一人で頑張っている気がしていたが、実はそうじゃなかったんだ。

  

 俺には仲間がいるんだ。その仲間は頼もしく、優しく、俺という人間のことをまっすぐ見てくれている。


「俺様のことも忘れるんじゃないニャー!」


 クロジが俺の頭にがばっと飛び乗った。


「のわー! 急に乗るなって! もちろんクロジのことも忘れてないよ。クロジがいるから一緒に頑張ろうって思えるし、すごく励まされてる。いつもありがとうな」


 俺がそう言うと、クロジは満足そうに目を細める。


「そういえば、ずっと気になってたんですが、ジュリアさんのスキルって何なんですか? 俺、ジュリアさんがスキルを使ってるとこって見たことないなって思って」


「お恥ずかしいのですが、わたくしのスキルはダンジョンでは全く役に立たないのです。わたくしのスキルは商業スキルの【速記】というもので、文章を書くスピードが速いというものなのです。領地経営に関する書類などはハイスピ―ドで仕上げることができますが、だからと言って経営がスムーズにいくというものでもなくて」


 ジュリアは俯き加減で顔を赤らめた。


「俺の元いた世界なら役に立ちそうなスキルだけどなぁ」


 以前リタに教えてもらったが、スキルは生まれつきのもので、後から系統の違うスキルを足すことなどはできないそうだ。あくまでも自分に才能があるスキルから派生するものしか取得できないらしい。


 クロジは取得スキルの系統がバラバラだが、そもそも動物がスキルを持っていることが稀らしく、詳しいことはリタにも分からないという。


「でも、わたくしこのスキルを活かしてやってみたいことがありますの」


「それはどんな?」


「ふふふ、怒らないでくださいまし。実はヒロさんをモデルにして、異世界人がこの世界で冒険する物語を書いて、出版したいんですの! きっとベストセラー間違いナシですわ! これで我が領地の収入も大幅プラスですわ」


「俺がモデル? そんなの売れるんですかねぇ」


 ジュリアが物語を書き終えるまでに、俺は日本に帰れているだろうか。自分がモデルの物語だなんて、なんだかこそばゆい。

 読んでみたい気もするし、俺の知らないところでやってほしい気もする。


「書き上げたら、いの一番にヒロさんにお送りいたしますわ! だから、これを持っていて欲しいんですの」


 そう言って、ジュリアは俺の手に何やら小さな石を握らせた。石は薄緑色で、片方の先端が尖っていて、もう片方は丸い。更に表面に模様が書いてある。


「なんですか、この石は……もしかして、魔石の類ですか」


「ご名答ですわ! これは魔法陣を書き込んだ魔石を三分割したもので、手紙を出す人と受け取る人と、それを運ぶ鳥がそれぞれ所有するんですの。鳥はこの魔石から発せられる波動を辿って手紙を届けるんですわ」


 伝書バトのようなものだろうか。


「わたくしはこれから領地に帰らねばなりません。ヒロさんたちとご一緒するのは今日が最後になるでしょう。でもこの魔石があれば、離れたところからでも手紙のやり取りができますし、わたくしも貴族の端くれ、今後何かお手伝いできることがあるかもしれません。何か困ったことがあったら、いつでも連絡してください」


「ジュリアさん……」


 彼女の心遣いに、胸がジーンと温かくなる。ここにも俺の仲間がいたのだ。

 

 この世界に来てからのことを振り返ると、多分俺が思っている以上にたくさんの人に支えられてきたのだ。俺は一人じゃない。そう実感できると、足元から力がみなぎってくる。


「それから、物語執筆の参考にしたいので、何か事件があれば逐一手紙にしたためてくださいまし!」


 ジュリアはパチッとウインクをした。


◇◆◇


 メウ横丁でイサイやキリエとやりやった翌日、俺たちはザカリオを発つことにした。

 滞在期間は一週間にも満たないが、それでも今までの中では一番長く滞在した街だ。ここを離れるのはなんだか名残惜しい。


 けれど俺は日本に帰るため、そしてカゲロウやリタの家族を探すため、次の街へと進まなくてはならない。


 朝日がまぶしい早朝、ザカリオの街の出入り口まで来ると、そこには見覚えのある糸目の男——ハオランが待ち構えていた。


「あれ、ハオランさん、どうしてここに?」

23話から続いたザカリオ編も、ここで一区切りです!

次のお話からは、また新しい町へ向かいます。

そこにはどうやら日本人もいるそうですが…またまた騒動に巻き込まれるヒロ一行。

今後ともこの作品を読み進めて頂けたら嬉しいです!

よろしくお願いします^_^

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