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17話-モンパリアからリスポーンへ-

 あの後、「ここでは難しい話なので」とセーレス達が希望したので。

 別室に移って語ってもらった内容が結構酷かった。


 ピスで商いをしているハインス商会の目玉商品がトンボ玉という工芸品だった。

 これはガラスを加工して作る工芸品だが、この世界だと単純にガラスを熱せば作れるというわけでもないらしい。『特殊なスクロール』と『特殊な能力』がないと作れない秘伝の様な物なのだと。


 俺からすればゲーム上で工芸に必要な『スクロール』と『スキル』の事だが。

 スキルの工芸を上げて、その後必要なスクロールと素材を消費して製作みたいな感じだ。


 ただ、ゲームだと一度スクロールで使ったことは記憶されるから、それ以降は要るかといわれれば、要らない気もするが……。いや、特殊工芸品は以降もスクロールを使えば製作効率はあがったな。

 100個作って5個くらいの差だが……。

 正直、特殊工芸品を作る事があまりなかったからな。

 ……正直、トンボ玉にそんなに熱意がなかったしな……。


「ハインス商会では代々、トンボ玉の商いをしておりました。

 勿論、私の商会以外でもトンボ玉を商いにしてるところはありますが、うちで取り扱っているスクロールは他では珍しい物なのです。シャンゼ」


「はい、お嬢様」 


 そういってメイドが袖の中から玉を取り出した。

 淡い縞模様のトンボ玉だ。

 お、よくよく見ると星のマークが入っている。

 これはよく覚えているぞ。工芸イベントでもらえた特殊スクロールの一つだな。

 通常のトンボ玉とは別扱いでカウントされる工芸品だ。


 実は交易品の販売は種別が多ければ多いほど、買取の値段が上がるというシステムが組まれていた為、こういった細かい種別は大事だったりする。

 例えば、トンボ玉10樽を1万Dだとすると、通常、トンボ玉20樽は2万Dだが。

 トンボ玉10樽と星のトンボ玉10樽だと2万5千Dとかになるわけだ。

 ただし、一つの船に乗せられる交易品の品種目は20品目までなので、乗せる交易品も考えないといけないわけだが。

 ちなみに、20品目以上になると謎のちからによって泡となって消える。

 ふざけすぎだろ……。

 あと、単位が樽なんだが。その樽って大きさどれくらいなんだよ。

 食料品も工芸品も宝石も何でもかんでも全部共通なら値段の幅がおかしい気がするのは気のせいだったのかと問いたい。

 このへんゲームでは絶対適当だよな。



「綺麗……」


 ルーが興味気に見てるとメイドさんがルーにそっとトンボ玉を渡す。


「お近づきの印にどうぞ」


 セーレスが頷く。


「本当に良いの?

 じゃあ、遠慮なく貰うけど?」


「良かったな」


「良かったですねお嬢」


「うん」


 何故かルー以外がほっこりする。

 つか、幽霊船員お前も気のせいかニッコリしてないか?


「話を戻します。先月になりますが、これを作るためのスクロールを何者かに盗まれてしまいました。

 それだけではなく……。多くの部下と商会長でもあった父も殺されてしまいました。

 今は私が代理で長をさせていただいております」


 おい、一気にきな臭くなったぞ。

 話を上げて落とすな。

 内容がすげえ重いわ!


 深呼吸をして、息を整えたセーレスに代わってメイドが続きを話す。


「犯人の逮捕には至っておりません。ですが近々、リスポーンでスクロールの闇オークションを開催すると、裏事情に詳しい者から聞きまして。私達は、お嬢様と一緒に出向くところだったのです。

 ただ、不慮の事故もあって、商会で雇った者達と親しい仲間は皆、海の底へ……」


『本当か?』


『多分、言ってる事は本当……。でもなんだか冷たい感じ……。

 こんなに冷たい商人ははじめて。本当に商人?』


 本当の中に嘘を隠してるってかんじなのかね。

 というか、聞けば聞くほど出来すぎている気もするが……。

 これがゲームなら、良くある話で済むんだが……。


 変な考えが俺の脳内を過ぎる。

 『ウェルカム!』とかいいながら、武器弾薬を片っ端から紹介する武器商人の絵面が過ぎる!

 あいつら売り買いには信用あるんだが、平気で嘘つくからな!


「裏事情に詳しい者?」


 ルーの言葉にメイドさんがニッコリと微笑む。


「私は元々メイドではなく、裏の住人です。

 わけがありまして、今はハインス商会でメイドをしております」


 いやいや、やっぱりそっち系か?

 めちゃくちゃ怖いな。

 やっぱりメイドさんは武道派っぽいな。

 つか、ハインス商会って本当に何なの?


「ハインス商会としましては、是が非でもスクロールを回収したいのです。

 大事なスクロールを盗まれて、犯人に逃げられて、あまつさえ売られてしまったことが露見されては、商会としても存続が厳しくなってしまいます。

 それと、私もスクロールを回収できなければ、商会長から降りる事になっております。

 私達には後がないのです」


 覚悟をもった視線が俺とルーを見つめる。


「つまり、セーレンさん達はスクロールの回収と犯人を捕まえたいってこと?」


「はい。勿論そのようにしたいのですが。

 残念ながら両方を取ることは難しいかもしれません。

 ですので、スクロールを優先しております。

 手段は選びません。

 闇オークションで競り落とすも良しですし、シャンゼに盗んできてもらう事も考えております」


「随分と物騒な話だな」


 思わず俺が唸る。

 それが面白かったのか、不意にセーレンが笑った。


「ふふふ。何を仰りますか。

 私は幽霊船の方がもっと物騒かと思いますよ?

 ヴァルラモース船長?」



 俺は話を聞いて現在地からリスポーンの位置を考える。

 リスポーン。所謂ポルトガルの港町リスボンの事なんだが、ここは現在地からは西側に向かったジブラルタル海峡の先にある。


 世界地図や大航海時代が好きな奴らならわかりきってるが、このジブラルタル海峡はとんでもなくめんどくさい場所だったりする。

 大陸と大陸に挟まれて存在するジブラルタル海峡だが、この海峡は大西洋と東の地中海をつなぐ玄関にもなっていて、多くの船がここを通る。

 現状、幽霊船の俺達がここを通ればどうなるか……。

 このゲームでも両方の大陸からの監視があったはずだから、直ぐにばれてしまうだろう。

 夜の間に抜ければ、あるいはばれないかもしれないが……。

 いや、あの場所に限っては海軍の船がウヨウヨしてるはずだ。

 楽観的にはなれない。幽霊船は他の船と近づくだけでばれてしまうからな。

 まあ、一つだけ手はなくもないが。


 豆知識だが、ジブラルタル海峡の上下にある大陸と大陸の近い距離間はわずか14kmらしいぞ狭いわ!

 あとゲーム中ではメジャーすぎてあんまり利用はしてなかった。

 北海方面の方が好きなんだよな……。

 イングランドバンザイ。まあ、そんなかんじだ。


「フロイさん。私達はリスポーンへ行きたかったのです。

 これが嘘偽りのない答えになります。ですが……。

 今、乗船させてもらっている船は幽霊船です。

 この船でリスポーンへは難しいでしょう?

 ですから……」


「モンパリアで良いと?」


「そういう事になります。ですが……オークションまでの日にちが厳しいかもしれないので……。

 モンパリアから船の乗り継ぎをしている暇があるかといわれますと……。

 ……もしも、仮にもしもですが。

 私達だけでもリスポーンまで送り届けていただけるなら報酬ははずみますが……」


「なるほど。さて、どうする船長?」


 ルーが首をかしげて問う。

 確かに、幽霊船。見つかればどうしようもない。

 騒ぎにはなるだろうし。

 商会の二人にとっても良くないことになるだろう。

 ただ、それは『船』として考えるならだ。


「普通の船なら無理だろうな。

 通るだけデ我々がばれてしまう」


「じゃあ、無理?」


「普通の『船』ならナ?」


 船長の言葉に三人が俺に視線をあわせる。


「商談は成立しタ。

 モンパリアにて、商人達を降ろした後。

 進路をリスポーンへ変更だ。

 幽霊船が、何故幽霊船と呼ばれているかの由縁をお見せシヨウ」


『大丈夫なの?』


 ルーが心配そうに問う。


『海路に関しては任せておけ。むしろお前は大丈夫なのか?

 何日も親と連絡が出来てないだろ?』


『大丈夫ー。ちゃんと説明してあるから』 


 とってきつけたような返事に俺は一抹の不安を感じた。



****



 夜明けが来る前に幽霊船はモンパリアの港はずれに到着した。

 人に気がつかれる前に小船を出して、商人達を乗せ陸地に降ろしていく。

 全員、困った様な嬉しい様な顔をしているが幽霊船員達は何とも思わなかった。


「あんたらの事は一生忘れない」


「助けてくれてありがとう!」


 幽霊船員達に商人達が感謝の言葉を述べても、彼らはカタカタと口を動かして笑った。


「ナアニ。船長に従っただけよ!」


「船員さん船長によろしく言っといてくれよ!

 俺達を助けてくれたどころか、いつの間にか金貨まで」


「船長の餞別だな。船長は交易商人が大好きだからな」


「そうなのか?」


「そウさ! 船長は元々……」


 遮るように他の幽霊船員が肩を引っ張った。


「死者が喋りすぎダ」


「喋りすぎたか、カカカカ。

 生ある者達よ達者でナ。

 死ぬまでヴァルラモース船長に感謝してオケ」


 モンパリアに着いた商人達は皆、最後まで幽霊船を見送った。

 そして彼らは今日もまた、新たな交易に足を運ぶのであった。

航海等について、知識が全くありませんが。


暇つぶしにでもなってもらえれば幸いです。

幽霊船はロマンですねー。

交易どこいった状態ですが。

また、評価等ありがとうございました。

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