16話-商人の価値とルーは嘘が嫌い-
当たり前だが、商人と海賊に信頼関係なんてものはない。
交渉なんてのは呈のいい言い訳に近いし、普通に命ごいだ。
『うちの商会では私に100万Dは払える』
『私を無事に解放してくれるなら、ここにある有り金を全て渡そう!』
みたいに切羽詰ったものまであるが、大体は前者で話は終わる。
まあ、海賊の中には残虐な奴もいるわけだから、事実上の海への解放さえあるわけだが……。
このへんは運次第だとおもう。
あと、海賊にとって後者の言い分はあまりよろしくない。
最悪な結果だと玩具にされて終わる可能性だってある。
どこまでも『有り金』と解釈するかは海賊によって違うからだ。
海賊にとって人とは金と捉えるか、物と捉えるかでも変わってくるだろう。
「ご紹介が遅れて申し訳ありません。
私はピサスで商いをしております。ハインツ商会の者でセーレンと申します。
こちらはメイドのシャンゼです。
「……シャンゼで御座います」
紹介を受けてメイドが礼儀正しく頭を下げる。
燃えるような赤髪が印象的だが、メイドっていうか……。
俺の感が囁くんだが、こいつ武装神官と同類レベルの匂いがする。
メイドの微妙な震え方が恐怖しているというよりも、好敵手を見つけた様な感覚なんだよな。
あと、ピサスっていうとピサの事だったか……な?
ゲームでは殆ど寄ったことがないんだよなぁ。
ピサの斜塔とか、ゲームでは実装してなかったし……。
大人の事情だとおもうが。
『シャンゼとかいうメイドには気をつけておけ』
『なんで?』
『俺は観察系のスキルを使って逆に感知されるのが嫌だから基本的に使用しないが。
どうも、このメイド<ス・ムーク>と同類な気がする』
『メイドさんは武闘派ってこと?』
『あくまで感だけどな』
つってもヴァルラモースはもっと武闘派だけどな。
海事系クエストや冒険系クエストがめんどくさい人用のご都合チートキャラだし。
「んー。なんて名乗ったほうが良いかな……。
じゃあ、フロイって呼んで下さい。
一応、船長の次だからー……。副船長?
うん、幽霊船の副船長になるのかな?」
ぐだぐだだなルーよ!
流石に相手もどう対応して良いのか困惑している。
そりゃそうだよな、幽霊船の中で唯一まともそうなのがコレっていうの困るわ!
「……フロイさん。とお呼びしても宜しいでしょうか?」
「ええ」
「フロイさん。お話は聞いてるかと思われますが、我々商人は、『マルサイユ』を希望したいのですが、先ほどの話し合いでは『マルサイユ』は無理だとのことでして。
可能な場所として『モンパリア』付近までお願いさせていただきました。
まずは、依頼という形にて250万Dをご用意させていただきまして。
無事到着次第、追加で250万Dを支払いたいのですが、宜しいでしょうか?」
まさかの500万D。いきなりの大金だった。
後ろに居る商人達も含めてだと思うが……。
500万Dもあれば、良い船が手に入るな……。
海賊共がもっていた財宝がざっとみて、150万Dくらいだから650万Dか……。
んーバルシャは卒業できそうだ。
いや、材料そろえて作るってのもありか……。
そっちのほうが安上がりだろうし……。
『凄い大金だけど大丈夫?
それとも少ないの?』
『わからんが……。
まあ、問題は無いだろ』
思わず大金で、話がずれてしまった。
マルサイユは、分かりやすく言えばマルセイユだな。
航海ゲームでは有名な場所でもある。
ちなみにこの辺はゲームの都合で名前がずれてる。
その辺は察してやってくれ。
モンパリアは、その左側にあった港町か。
あんまり印象がないが……。ここ何か交易品あったかな……。
現在地からして丁度、どちらも北ないし、北西にある港町だ。
まあ、地理に詳しい人だったらどのへんか分かるとは思うが、位置的には地中海の上あたりにあるリグリア海付近にある。
ゲーム上では海賊がウヨウヨしているので、小さな商船では結構危ない。
まあ、船団に混じっていけばそうでもないんだが……。
つか、なんでこの商船は単独で航行してたんだろうな?
ちょっと気になってきたな。
確か、急ぎの船は結構危ない橋を渡るんだった気がしたぞ。
「マルサイユによりたいのは交易ですか?」
「いえ、こんな事もあったので。
一旦ピサスに戻ろうかと思いまして……。
ここから近いところだとそこかな……と。
マルサイユでしたら銀行からお金も調達できますので……」
「後ろの商人さん達もそうですか?」
「ああ。うちらは元々、ハインツ商会さんにピサスで無理を言って乗せてもらった交易商人なんだ。
荷は流れてしまったし……。
手持ちは無くなっても、モンパリアでも裸一貫でどうにかするさ」
「ふぅん……」
虚勢をはる商人達に俺はちょっと感動した。
そうだな。何もかもがなくなったって、どうにかするのが商人だからな。
解放するときにでも、こっそり金貨を袖に入れておいてやろう。
小麦の交易なんて楽しいぞ! たまにやらかして駄目にしちまうが……。
『ヴァルガス』
『ん? なんかあったか?』
思考の海で俺が漂流していると、不意にルーからのwisが頭に流れる。
『セーレンさんは嘘をついた。何かワケがあるのかも。
他の人たちは本当だと思う』
おいおいマジかよルーさん。ここにきてアタリ引いちゃったわけか?
このお嬢さん曰くありってか?
『ピサスからってのは本当。
でもマルサイユ希望は嘘。モンパリアは妥協……かも。
何かを……諦めている? ちょっとよく見えない』
『おいおい、あんまり突っ込むなよ?
ルーの能力について俺はあまりしらないんだからな?
お前の親父さんに怒鳴られるのは勘弁だからな?』
『わかってる』
うわ、ルーさん。絶対わかってない子だわー。
彼女の能力に興味心とかあるのかね?
「セーレンさん」
ルーの声色が少し変わる。
「はい?」
「ここはね、幽霊船なの」
「……はい。それがえっと……どういうことでしょうか?」
意図が分からずセーレンが顔を困らせる。
「この船では、船長と副船長が全てなの。
そうよね?」
「へい。あっしらは船長とお嬢に従います」
ルーの言葉に船員が即答する。
ルーはセーレンに向きなおして、話を続けた。
「セーレンさん」
「はい」
「死者にはね。嘘偽りは良くないの。
あなたが『何かを諦めている』とかは可哀そうだから私は聞かない。
でも、二人は何処へ行きたいのか位は教えて?
モンパリアじゃ困る事があるんじゃない?」
布で隠した顔から見える視線が、セーレンを直視した。
貴婦人の額に汗が滲む。
てか、あんまり脅すのはよくないぞ?
「えーっと……」
「死者にだって奇跡は起せるものよね船長?」
ルーが俺を見てそう尋ねた。
やめろ。俺をそんな目で見るんじゃない。
俺の目が赤く点滅した。
暇つぶし程度になってもらえれば幸いです。
突発書きなので、矛盾多めかもしれませんが、それでもよければ。




