15話-めんどうな荷物-
我先にと、敵地に乗り込む船長ってかっこいいよな。
いや、言い訳を言うとだな。俺がしたいわけじゃなかったんだ。
なんていうか、キャラクターにプレイヤーが引っ張られる感じなわけで。
結果として、海賊船を拿捕できたしな。
骸骨共はそこから色んな交易品や金銭を奪取しては喜んでやがる。
「船長! こいつらタンマリですぜ!」
「そいつは良かったナ」
「船長! こいつら海の藻屑で?」
「ソイツは駄目だ。手はずどおり小船を用意しろ。
全員陸地にでも送ったら戻って来い」
捕まえた海賊共については、海に落とすという手もあるが、こいつらに関しては無しだ。
全員甲板で一まとめにされて怯えきってるが、とりあえず今は大人しいし――。
部下が聞いた船倉の中に捕まってた商人の言い分じゃ、難破してるところを助けてくれたらしいからな。
といっても、交渉は上手くいってなかったとも言うが……。
まあ、海賊らしい海賊は好きだ。
ゲームでは何度もNPC海賊に襲われて、身包みを剥がされたもんだが、命だけはとられなかったからな。
残虐非道な海賊はどうするかって? そんなのは海の藻屑だ。
あと、ストーリーイベントやクエスト中にでてくる海賊もそれだ。
あいつらに負けると必ず殺された!
主に熟練度をあげた船員が……。船員育てるのも大変なんだぞ!
幽霊船員は別としだが……。こいつらは生きてないしな……。
海賊にだって良い奴も悪い奴もいる。
それが航海ゲームってもんだ。
あくまでゲームでの話だが。
「……へい」
幽霊船員は何故か海に落とせなかったのがやるせなかったようだ。
肩を落として小船に向かう。
つかなんで、こいつは海にぶちこみたいんだ?
あれか? こいつ自身海の藻屑になった性質か?
「へい! あっしは海の藻屑ですぜ!」
振り返って先ほどの船員がハキハキと答える。
おい、人の心を読むなよ。そこはだまっとけ。
こいつら、部下っていうか、俺の頭を読み取って考えてるAIっぽい動きしてるんだよな……。
そのわりにはこいつらの思考がまったく俺には読めないのってずるい。
幽霊船員達の顔って皆同じようにみえるはずなんだが、どことなく船長の俺は分かる気がする。
一種のテレパシーに近いような感じもするが。
もはやホラーだ。
「船長、奥に居た商人とは話がつきやしたが、船長に会いたいといってやす。
めんどうですが、会われやすか?」
「そうだな……」
商人達にしても俺達の姿を見て泡吹いてる奴等が何人かいたらしい。
まあ、こちとらアンデットだしな……。
それでも会いたいといわれれば会っても良いが……。
はたして俺をみて正気でいられるのか……。
素の俺なら無理な自信があるぞ。
悩んでるうちに海賊共を乗せた小船が遠ざかっていく。
まあ、海賊達は陸地に送ったら小船も消えるし、幽霊船員も戻ってくるから問題は無い。
屈強な男共だ。陸にあがってもどうにかするだろ。
それ以上は責任はとれん。生きて陸にあがれただけでも彼らには十分だ。
「ゆれるー揺れるー!」
縄梯子を使ってルーが降りてくる。
微妙に足元が遠かったのか「ワワワッ」っと落ちそうなところを部下達が支えた。
有能な骨共だ。
「ありがとう、船員さん達」
「お嬢! オキオツケテ」
「お嬢! 生身は堪えますゼ」
「お嬢! 船長の唯一の客人でもありまス。お怪我のないようにですゼ」
「勿論。気をつけてるつもりだけど?」
自慢の蒼髪をなびかせて俺の横に来る。
ルーの顔は布で隠している。一応の対策というわけでもないがな。
しっかし、今後の事を考えると髪色でばれんかね? そういうもんでもないのか?
んーー……今後、一緒に悪巧みをするなら、変装の一つでも覚えてもらったほうがいいかもな。
あれって、確かめんどくさクエストだったきが……。
いや、クエストを受けられるのかわからんけどさ。
「聞いたけど、商人さんがいるんだって?」
「ああ、奥にいル。適当に部下が交渉した結果近くの港に送ってもらえれば良いラシイ」
「そう……? 私の力はいる?」
ああ、そういえば、親父と同じ能力持ちなら交渉では楽ではあるか。
しかし、もう部下が軽く話してるしな……。
怖がってる事もあるし、信頼してもらうには、どっちにしろコミュニケーションは必要か。
いや、なんでかっていうと。恐慌状態が続くと勝手に海に落ちる奴とかいるからな。
実際、海賊共でそういう事が何度かあった。あれは悲しい事件だった……。
無論、助けてやったが。
うちの船は幽霊船だからな、戦意喪失や、混乱が発動しやすい。
「マア良いだろう……俺も同行させてモラウ」
「アイサー船長? じゃあ、話しを聞いてみましょう?」
ルーがビシッと敬礼をする。だがそれ、手が逆だぞ。
反対の手でやれよ?
****
船倉に入る。商人達を縛っていた縄は、うちの船員が切った。
今は全員、青ざめた表情で隅にいる。
まあ、気持ちはわからないでもない。
良く見ると男共にまじって変わった女性が二人いた。
麻色の髪をした貴婦人風の娘と黒髪のメイドだ。
嫌な予感しかしない。
近くにいた幽霊船員が俺の横について答える。
「お前らの為に直々に顔をだしてくれた、ヴァルラモース船長と……そのお嬢様だ」
さっきから気にはなっていたが。
どういう経緯があったのかしらんが、いつの間にかお嬢で統一したのな?
幽霊船員が俺の目配せに頷いた。
だから、人の心を読むなと……いや、無理だよなー。
正直ルー以上にめんどくさそうだ。
「こんばんわ皆さん。船長はこんなです。
ですのでー、代わって私がお答えします。
既にお話は聞いてると思いますが、一応?
安心してもらって構いません?」
おい、こっち見て首傾げるなよ! 不安がってるだろ!
あと、こんなってなんだよ。こんなとか言うなよ!
俺の目が赤く光ると、ルーはそ知らぬ顔をして視線を相手に戻す。
空気を読んだ部下がテーブルを引っ張り出して配置してくれた。
俺とルーが椅子に座り。
商人達は小さな声で話し合う。
「相手はアンデットだぞ?
交渉の余地があるのか?」
「あっちの子は娘か?
生きているように見えるが……。
顔を隠してるって事はアンデットか?」
「おい! あんまり変な事をいうな。
相手の逆鱗に触れたらおしまいなんだぞ」
「誰がテーブルに着くんだ?」
「うちは駄目だ。やはりここもハインツ商会の……」
「私で良いのですか? 分かりました承ります」
「お嬢様!」
商人側は話し合った末に、貴婦人風の娘が椅子に座りその後ろにメイドが付き従う。
「まず、私達からお礼を言わせてください。
色々と交渉が変わってしまいましたが、まず、この場での席を作ってもらえた事。
それに、私達の話を聞いてくれることに感謝いたします。
本当にありがとう御座います」
商人一同が俺達に頭を下げる。
先ほどまでの恐怖は何処吹く風だ。これは何かスキルを使ったか?
交易系スキルだと<団結>かなぁ……。
あれは戦闘でも使えるし。
さて、こちらもそれなりに答えないといけないわけだが、ここで俺の出番だと困ることもある。
俺は口を出すだけで恐怖値があがるかもしれんからな。
ルーとは、何度か話してるうちに問題がなくなったみたいだが。
やっぱり信頼関係が条件にあるのかもしれないな。
話がそれた。
さてさて。
こんなときにつかえるのが、先日ついに知ってしまった<NPC支援コマンド>だ。
これは本来NPCに命令を促して使う奴なんだが、ここでは何故かスキル扱いになっていた。
まず、頭の中でゲームでの<NPC支援コマンド>を思い浮かべる。
すると、頭の中でこんなメッセージが囁かれる。
『ルーとの<コンタクト>を取り次ぎます』
『ルーとのwisが成立しました』
『wisは双方、頭の中で思った言葉を発言してください』
『この会話は外部に漏れません』
『<コンタクト>を終了したいときは互いに糸を切った想像をしてください』
そう、オンラインゲームならド定番のまさかまさかの『wis』。簡単に言うと『内緒話』である。
本来のゲームではシンプルで味方に命令のみが出来てた仕様だが、こちらは格段に使いやすくなっていた。
勿論、面白半分でルーとは何度かやりとりしている。
『あーあーテステス。俺は喋らないほうがいいよな?』
『テステス。んー。そうかも?
何かしっかり希望を聞いたほうが良い?』
『とりあえず、安心してもらえれば良いだろ。
あとは向かって欲しい場所とかか?
こちらとしては、なるべく早く解放してトンズラしたいしな。
あまり、騒いでもらうのも困る』
『んーー。……質問良い?』
『なんだ?』
『こっちの声がバルガスなのは何でなの?』
『さあ? 俺が知りたい。これも良く分からないスキルっぽいしな。
あと、ヴァルガスなヴァルガス! ヴァ! だ、ヴァ!』
『ふーん……。バルガス?』
『……なんだ?』
『あなたって本当に嘘つくの下手ね?』
『うっさいわ! ルーこそ変なスキルで俺の真贋を見極めるなよ!』
『うん? レディーの感はいつも鋭いものよ?』
ああ、もうめんどくさい。
交渉しなくても別にいいんだけどな。
『バルガス? 聞いてる?』
『なんだ! 今、考え中だが』
『多分、今の貴方が地だからじゃない?』
『……何がだ?』
『だからー。ここでの声の事』
『……なるほど。そういう考えもあるか』
『お互い変な能力持ちで大変ね』
『……そうだな』
ホント、なんともしまらない内緒話である。
交易商人としてのヴァルガスは確かにゲームにおいての自分自身の分身みたいな感じではあった。
そういう意味では、なんとなく認められたような気がして嬉しい船長であった。
ブックマークありがとうございます。
嬉しかったので、ちょこっとがんばってみました。
昨今は風邪がまた流行りそうです。
皆様、風邪にはご注意を。
少しでも暇つぶしになってもらえれば幸いです。




