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11話-武装神官-

 祈りを終えると、親子の目から一筋の涙が流れていた。

 多分スキルの影響だとは思う……。思うが……。

 この手のスキルはあんまり使わないほうが良いのだろうか……。

 悩む。個人的に好きなんだが……。

 あとゲームで体感できなかった爽快感もある。

 浜辺で大声を出して歌う事がなんと楽しい事かと。

 この世界じゃなかったら、音痴過ぎて話にもならないしなぁ。

 スキルの恩恵の素晴らしい事、他ならない。


「ムークさんは、その……名のある司祭様なのか?」


 間を置いて、バロッサが申し訳なさそうに聞く。

 また、返答に困る事を聞かれてしまった。

 たぶん目の効果もあるだろうしなぁ……。

 とりあえず、ス・ムークでプレイした道筋で答えていけば良いか。


「む? 拙僧は……そうだな。司祭ではない。

 拙僧は、武装神官と呼ばれる類だ」


「武装神官?

 聞いた事が無いが……。

 なんだか凄そうだ」


 答えをきいて、バロッサが唸る。

 あんまり気にするとハゲるぞ?


「なんてことはない。戦いに優れた神官達の事だ。

 海の魔物や、凶悪な害獣などを倒すのが武装神官の役目。

 もっとも、拙僧は戦闘よりも遺跡調査が主ではあるがな」


 凄いといわれて、悪い気はしなかった。

 たとえそれが、サブキャラクターであったとしてもだ。

 どのキャラクターもそれなりに育てたし、エンディングだって見てきてる。

 ス・ムークのエンディングは船のゲームらしく、『そして彼は見知らぬ世界へと旅立ったのだ』という感じで終わっている。

 考えてみれば今、ス・ムーク自身は本当に別の世界を堪能してるともいえるな。


 ……でも、そう考えると中佐だけはちょっと可愛そうだ。

 名前が中佐だもんな……。あとで、本名を考えておこう。

 思わず口元だけ笑みを浮かべてしまう。


「じゃあ、ムークさんは冒険家?」


 ルーが涙を拭いて、興味ありげに聞いてくる。


「そうだ……な。拙僧の本業は冒険家に近い。

 ただ、ニンゲンのソレとは違うかもしれぬ。

 我らは金銭のやり取りをせぬからな。

 冒険家ギルドに所属しているわけでもない」


 自分で言ってて突っ込みたいが、それってただの泥棒だよな。

 まあ、実際……魔物だらけの遺跡を発掘したり古代遺物を発見したりするのがメインなのだから、トレジャーハンターっぽいか。

 トレジャーハンター……響きは良くても遺跡泥棒だしな。


「それじゃあ、どうやって生活をするの?」


「『海と生き、海と共に在れ』はシリス教の教えだ。

 食べるものも生活するものも我らは海で手に入れる。

 貴様らと変わりはしないな」


「俺の知っているシリス教とはまるで違う……。

 それが本来の教え……なのか?」


 おおっと、ここでバロッサが疑問を切り返してきた。

 そうか、シリス教は存在してるのか。

 ただ、教えが違う? どういうことだ?

 まーた厄介になりそうだな。

 動揺を隠しつつ、俺がバロッサに問い詰める。


「ほう? 詳しく聞かせてもらおうか?」


 ギラリと蛇眼の様な瞳が光る。 



****



 部屋に戻ったり出たり忙しくて申し訳も無く思う俺とは裏腹に、バロッサは嬉しそうに「座ってくれ」と家に招き入れてくれた。

 しかしヴァルガスで来たときもそうだが、椅子もテーブルもボロに近い。

 これは、海風にやられてる所為かも知れないな。

 こういうのをみると、どうしてもゲーム脳な職人の血が騒ぐ。


「俺が知っているシリス教についてだが……。

 その……怒らないで聞いてくれよ?」


「一向に構わない。シリス教の心は海のように広い」


 とはいいつつも、ス・ムークの感情が内部で荒れ狂っていた。

 ヴァルガスでは無かったことだが……これ、キャラクターごとに依存する事になるのか?

 となると、先ほどの戦いも頷ける。刃物振り回して内心、喜んでたからな……。

 それがゲーム脳なんじゃ? といわれたらおしまいかもしれないが。


 俺の返答に、バロッサが冷や汗をかいた。

 ああ、これは嘘をついていると思われたか?

 それでも俺に恩義があるのだろう。

 ゆっくりと話してくれた。

 その間ルーは興味がないのか、母親の部屋に消えて行った。

 まあ、彼女の興味は冒険話にあったのだろう。


 バロッサが言うには、シリス教はここから北にある大きな大陸で一番栄えている宗教らしい。

 そして、どの国でも国教としてつかわれているとの事。

 基本的に海の神様を崇めているとの事で、俺のような武装神官とは聞いたことがないそうだ。

 そして政治的にもつながりが大きすぎる為か、いたるところに教会があったり、信者がいたりするらしい。

 そして、嫌な話だが、お祈りという名目で金銭の献金も大い受け付けてるそうだ。

 信者も多い事から多額の寄付がされていると。


「魔物に立ち向かったりはしてないのか?」


「無くはないと思うが……。

 この島でのシリス教は、印象がさらに良くない。

 初めに来たときは飛竜を討伐するという名目で来たと昔、親父やじいさんから聞いた」


 それはなんともロマンあふれるチャレンジ精神だ。

 相変わらずぶっ飛んでるな、シリス教。

 正直、飛竜に挑む馬鹿は廃人プレイヤーだけでいいとおもう。

 廃人装備、ガレオン級の船で挑んでも、アレを倒せるとは思えない。


 基本的にゲーム上では強敵が居ると自覚しない限り襲っても来ないのが飛竜だ。

 しかし、挑まれればそれ相応の出迎えをしてくれて、だいたいBADENDだったりする。

 つか、空とんで火を撒き散らして攻撃してくる奴にどうやって挑むんだよ。

 大砲がメインか? いやいや、あたらねえからな?

 それこそ廃人クラスでスキルカンストでもしないと……。

 主にゲームでの話だが……。


「飛竜を相手にか。それはシリス教らしい。

 拙僧は絶対に相手をしたくないがな」


「ハハハ……飛竜の強さを知ってれば誰だってそうなる」


 俺の言葉にバロッサが苦笑いを浮かべた。

 そして空いているコップを二つ食器棚から取って、テーブルに並べる。


「ルー! 古い奴を持ってきてくれ!」

「はーい」


 娘のルーが呼び出されて、手には大事そうに酒が抱えられていた。

 多分、年代物だな。


「酒はその……大丈夫なのか?」


 バロッサが心配そうに尋ねる。


「問題ない。シリス教は海の様に心が広い」


 このキャラ、お酒は大好物だからな。

 種族特有の尻尾も嬉しそうに揺れる。

 俺の言葉を聞いて、バロッサが嬉しそうにコップに酒を注ぐ。


「この島は飛竜あっての島だからな……。

 飛竜は守護者そのものだ。

 そんな存在を倒しに来たとか言われたら追い返す他ないだろう?」


 バロッサが酒をグイッと一気に呑む。

 この酒、度数はそこまで強くないのか?

 いや、そんな事はないよな……。


 真似をするように一気に酒をあおる

 口から喉にかけて、焼け付くように熱くなる。

 思わず咽てしまいそうだった。

 喉から胃に到達する間に深い味が増してきた。

 そうとう良い火酒だな。


「力強い良い酒だ」


「じいさんの頃のやつだからな。

 滅多な事じゃ、開けない」


「そんな大事な物をだしてよかったのか?」


「今出さずに、何時出すんだ?

 妻を助けてくれた恩人だぞ?」


 酒が回ってきたのか、バロッサの顔が嬉しそうに歪む。

 確かに。自分も逆の立場だったら、出来る限り最大級のおもてなしはするかもな。


「そうか……」


「話にもどるが良いか?」


 空になったコップにバロッサが酒を注ぐ。

 俺は無言で頷いた。


「当事は島の反発もあって、大変な騒ぎだったらしい。

 だが、彼らもシリス教だ。

 無理やりにでも入って飛竜を討伐しようと躍起になったらしい。

 その結果は、言わないでも飛竜が生き残ってるから分かると思うが」


「ふん……。察するに全滅か。

 まあ、そうなるだろうな」


 とりあえず過去のシリス教はまだ、脳味噌が鉄で出来ているといわれても納得が出来る。


「それから何十年も経つと、シリス教も大人しくなってきた。

 飛竜に立ち向かう奴らもいなくなったし。

 大陸の方で『何かが』あったのは確かだ。

 教主も代替わりをしてると聞いている。

 それからさ、急に教会を立て始めたり、信者を増やし始めたのは」


 なるほど、思想が大きく変わったのはその辺なのか。

 しかし、現状で武装神官がいるのかどうなのか気になるところだな。

 下手したら、俺の存在の方がシリス教にとって癌になるかもしれない。


「もし、気になったら港の方にある大きな教会に入ってみるといい。

 あそこには偉そうな司祭がいるからな……。

 ただ、嘘が得意な司祭だ。十分に気をつけろ」


 酒で赤くなった顔とは裏腹に、バロッサが力強く言う。

 俺は彼の言葉に笑みを向けた。


「ふんっ! 面白い冗談だ。

 同じシリス教の仲間同士で嘘なぞつけるはずがない」


「それはまた……どうしてだ?」


「武装神官は悪意のある嘘をつかれるのが嫌いだからな。

 拙僧へ悪意を感じれば、その司祭は二度と大地に足をつけることはないだろう」


 文字道理、海に還す殉教者が増えるだけだと……。

 俺の心の中で、ス・ムークがそう呟いた。

 やっぱり脳筋キャラは怖い。

 早くヴァルガスに戻らないとなと、俺は思った。

一向に進みませんが、暇つぶし程度に楽しんでもらえれば幸いです。

忙しくなってきたのでそろそろ、不定期更新予定です。

追記:ブックマークありがとうございます。

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