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9話-深海冒険家<ス・ムーク>-

「最強の助っ人を呼んでくるからここでまっててくれ」と。


 バロッサ親子を説き伏せて、俺は一目散に走った。

 そして、ついて来られてないのを確認してから、誰もいない場所を探して座り込む。


『スキル<隠蔽>を使用シマス』

『スキル<警戒>を使用シマス』


 念には念をだな。 

 さあて、キャラクターチェンジしてみるか。

 頭に意識を集中させる。



『現在でのキャラクターチェンジ候補デス』

『造船技師<サヴェージ><ヒューマン>』

『海軍将校<中佐><ドラゴニュート>』

『海賊王<ヴァルラモース><アンデット>』

『深海冒険家<ス・ムーク><ハイ・シーマン>』



 今回はクラーケンを捕まえてなおかつ、肝を入手する事が目標だ。

 それならコイツしかいない。


『深海冒険家<ス・ムーク><ハイ・シーマン>』


 名ばかり冒険家のス・ムークだ。

 種族がシーマンといっても別段、顔が魚というわけでもない。

 むしろ爬虫類系だな。リザードマンといったほうが早い。

 俺の中では竜人っていう感じだな。


 どちらにしても見た目のインパクトはあるが、海の中ではゲーム内の全種族中適正が一番だ。

 特に海中での格闘センスが飛びぬけている。

 もちろん陸の上でも強い。が、海賊でもないのにヒューマンとの相性が悪い。

 なので、あまり港にも行けずほとんど冒険だけしかできない。

 まあ、冒険嫌いなプレイヤーの為に作られた救済種族みたいなもんだしな。

 ただ、シーマンは分かるんだが。ハイ・シーマンがわからない。

 でも、ヴァルガスがハイ・ヒューマンだったのだから、あんまり代わりはしないだろう。

 あとは、どこでチェンジされるかが気になるところだ。

 始まりの島付近だと、結構時間がかかってしまう。

 いまは一刻の猶予もないからな。



『深海冒険家<ス・ムーク><ハイ・シーマン>へ チェンジシマス。

 5……4……3……2……1……』



 頭の中でメッセージが流れると、俺の頭の中が真っ暗になった。

 これでうまくいってくれるといいが……。



****



 気がつくと周囲は夕方を越えていて、リザードマンもどきになっていた。

 腰にはショートソード。服は……何とも言いがたいが、見た目は司祭に近い。

 とりあえず剣を抜いて、鏡面のような刀身を利用。自身の顔を見る。

 凶悪な面構えだ。

 左目は斬られた事がわかる様な傷痕が目立つ。

 まあ、見えるから良し。

 ……とりあえず成功だ。

 次に自身の確認だ。

 頭の中で自分自身と念じる。

 

名前:ス・ムーク

性別:男性

年齢:31/???

健康状態:良好

人種:ハイ・シーマン

現在の職業:深海冒険家

交易Lv:05/35

航海Lv:65/75

海戦Lv:50/50

交渉スキル:better!!

生産スキル:better!!

言語スキル:complete!!

航海スキル:complete!!

格闘スキル:complete!!


 よし、ス・ムークになってる。

 交渉スキルが全くないがどうにかなるだろ……。

 なるよな……?


 次だ次。現在地の確認だな。

 航海スキルの測量を使ってみる。


『スキル<測量>を使用シマス』


 頭の中で大規模な地図と現在地が表示された。

 同一場所だな。まあ、風景も同じだし問題はなさそうだ。

 しかしヴァルガスよりも正確な測量だった。

 さらに付け加えて時間まで表示されている。

 かなり便利だな。さすが冒険職。

 ついでに行動力を見てみる。


名前:ス・ムーク

性別:男性

年齢:31/???

健康状態:良好

行動力:380/700


 MAX行動力はかなりあった。

 行動力がかなり減っているのは、ヴァルガスだった所為だろう。

 さすがにキャラクターチェンジでも行動力は回復しないか。

 別人扱いとまではいかないらしい。


 見た目の装備は……問題はないだろう。

 ただ、その……。

 多分だが、冒険をした最後の装備のままなんだろう。

 ゲームの世界であった海を崇める宗教『シリス教』の武装法衣のままだった。


 ところどころにある銀褐色の止め具が光ってる。

 これ、魔法防具一式だったとおもったんだが、意識すれば光きえるかね?

 ちょっと俺が困りつつ、念じてみるとフッと輝きが消える。

 良し、消えれば良いか。

 これで、見た目は法衣を着たガタイの良いリザードマンだ。


 ……どっからみても不審者というかモンスターだな。

 このゲームっぽい世界で『シリス教』がまともなのを祈りたい。

 あとリザードマン系も普通に居て欲しい

 ……多分シリス教は無理だと思うが……。

 『シリス教』の教えが『海に生まれ、海に還る』っていう感じと。

さらにトンデモ武装宗教だからなぁ。力こそパワーとか意味わからん事いいだしかねない奴らだ。

 簡単に言えば海の事と武力でしか物事を考えない脳筋だ。

 シリス教ホント救われねぇ……。


「ま、なるようになれ……か。

 急がないとな!」


 声も若干渋くなっていた。

 まあ、喋れるだけマシか。



****



 夕日が見える海辺を急いで走る。

 足が軽く塩水につかっているにも関わらず、走る速度は常人の倍以上はあった。

 さすがは、武装法衣。海での戦闘に特化した宗教装備だ。

 この装備は海に流れている魔力を吸収して、装備者の身体能力を底上げするというトンデモ装備だ。

 本当にそうなのかは神のみぞ知るレベルだが……。

 危ない装備だ。

 冒険シナリオの後半に出てくる『這いよるXX』を倒すと報酬で貰える。

 また、海水に浸かってもこの装備のおかげで濡れる事も無いし、海中での戦闘で邪魔になることもない。

 今回の様な話にはうってつけだった。

 ……よし、とりあえず。海から来た事にしよう。

 それの方が説明しやすいだろうからな。


 俺は走る進路をかえて、海側から親子の家を目指した。

 傍から見れば、法衣をきた爬虫類人間が海の上をすさまじい速度で走っているという不可思議な事になっている。

 これには腕を組みながら走り去るとある悪者紳士もビックリかもしれない。


 バロッサ親子の家に着く直前。

 海上で俺の足に何かが絡みついた。

 この速度で俺を捕まえるとはやるじゃないか。

 いや、ただ引っ付いただけか。

 むしろ、俺が巻き込まれる形でぶつかったのかもしれない。

 だが、俺の足はそれくらいじゃ止まらない。

 大きな魔物の足を逆にひっぱる。

 こちとら忙しいんだよ。魔物風情が邪魔をするな!と、いいたい。

 魔物が深い海へと逃げようとする。

 残念だったな、生憎今の俺は非常に気分が悪い!

 出会ったことに後悔すると良い。


 俺は海面を蹴って渾身の力で跳躍、魔物が一緒に宙を飛んだ。

 巨大な水しぶきをあげて、大きい魔物が空を舞う。


「Grrrrrrrrr!」


「煩いわ!」


 俺と視線があった瞬間。腰のショートソードが引き抜かれて魔物の頭が真っ二つに捌く。

 そのまま、回転するように本体に蹴りを入れて浜辺に着地。

 格闘ゲームをしているかのごとく見事に決まった。

 そして轟音と共に、無事に俺は親子の家の前についた。


「たわいもない……」


 体液を振り払ってショートソードを収める。

 そこで気がついた。外で待ってた二人が俺を見て固まっていた。

 まあ、そうなるか……。こんな見た目だしな……。

 どうしたものか。まあ、怖い奴っぽく振舞えばいいか。


「ヴァルガスから話は聞いた。

 貴様がバロッサか?

 拙僧はムーク。

 何でもクラーケンを捕まえて欲しいらしいな」


「あ……ああ。そうだ」


 開いた口が塞がらなさそうにバロッサが答える。


「拙僧は海に仕えている者だが、ヴァルガスには借りがあってな。

 クラーケンの毒にやられた奴がいると聞いた。

 クラーケン如きで拙僧の力を振舞うのはどうかとはおもうが……。

 仕事は仕事だ。早速一匹捕まえてくればいいか?」


「そうだ……そうなんだが」


 バロッサは震える指で俺の足元を指す。


「足元で転がっている巨大なそれが……クラーケンじゃないかね?」


「……む?」


 俺は思わず足元を見る。

 確かに……イカっていわれればイカに見えなくもないような……。

 青黒いイカのような魔物の遺体がそこにはあった。

 ……エンカウントはやくね?

ブックマークありがとうございます。

次の更新は多分3/22~24あたりになります。

暇つぶし程度に読んでもらえれば幸いです。

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