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異世界猫は約束の地を目指す。〜最強猫による現代ダンジョン攻略配信!〜  作者: 和泉 弘幸


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第19話 猫VS竜王





 "いよいよ40層!これ、もしかしなくても世界初?"

 "40層は日本タイ!世界最高は42層!"

 "【速報】お猫様がついに日本トップに追いつく!"

 "一応このダンジョンで40層は初だし、ソロでの40層は世界初だよ"

 "猫が日本トップはCOOL JAPANすぎる"

 "猫を信じるものは救われる"


 盛り上がるコメント欄とは対照的に40層を前にしたキトラは嫌そうな顔をしており、耳がイカ耳になり、しっぽはピンッと立っていた。


「先に言っておくニャ!この先にいるやつはどう考えても40層にいていいやつじゃないニャ。というかダンジョンで出てきていいレベルじゃないやつだニャ。なので視聴者はこれが40層の敵の強さだと思わないで欲しいニャ。繰り返すけど次の敵が何かしらの異常事態でそこいるだけで、本来は出会うはずがないレベルの敵ニャ」


 キトラが本気の警告をするとコメント欄も真面目になる。

 しかし、それでも多くの人間が多少強い変異種程度にしか思っていなかった。



 キトラは見なければ分からないか、と諦めて40層に降り立つ。



「GYAOOOOOOOOOO!!!!」



 現れたキトラにそれが歓喜の咆哮をあげる。



 ドローンが捉えたそれは圧倒的な『美』であった。

 その肌は初雪のように白く、体躯は山のように雄大であり、瞳は煌めく星のような金色、その雰囲気は日本刀のような美しさと恐ろしさがあった。

 視聴者のコメントが止まる。

 画面越しですら感じる神々しさに生物としての格の違いを脳に叩きつけられたような衝撃だった。


 そんな彼らを置いてけぼりにして2匹は向かい合う。



「よく参られた!最も新たなる神よ!!いや我が生涯の友キトラよ!!会いたかったぞ!!!!」


 「竜王サクレプ・リュネルっ!にゃーは出来たらこっちでは会いたくなかったニャ」


 「ふふふっ。つれない事を言うな。ようやくだ!生まれ落ちた時から他の竜が王として崇め、全力を出すことに恵まれなかったが、初めて全力を振るえる敵が現れたのだ!しかも儂が全力を出しても勝てぬ相手がいるのだ!これが喜ばずにいられるものか!!!」


「正直お前の相手はめんどくさいニャ。・・・・・・だがキトラの往く道を阻むと言うなら押し通る。相手が竜王でも友でも神でも邪魔する者は打ち倒す!」


 圧倒的な強者として君臨した偉大な王の渇き。

 それを満たせる猛者が目の前にいるのに昂らぬ訳がなかった。

 戦意を滾らせる竜王サクレプ・リュネル。

 だが勇者を救うと決めた時に何を犠牲にしても救ってみせると、最も大切な者が送ってくれたこの名に誓ったキトラは友の屍を超えていくことに躊躇はなかった。



「それでこそ我が難敵に相応しい!我が名はサクレプ・リュネル!至高にして絶対なる竜の王なり!この竜王の全力を女神⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎様もご照覧あれ!そして願わくば死に場所に相応しい闘争を与え給え!」



 リュネルが高らかに吼える。

 誇り高き大いなる王が挑戦者として1匹の猫に牙を剥く。

 生まれて初めての全力を出すに相応しい相手に慢心は一切なく、矜恃にかけて一矢報いてみせると死ぬ前提で闘争に臨む。



「見事なる忠義とその蛮勇にこちらも名乗ろう。我はあまねく獣を従えた、獣と農耕の守護神であり、勇者パーティが一員として最も多くの魔族を屠った猫キトラ!!!勇者を救うために数多幾千の屍を築き上げてもこの道を進もう!!このキトラの生涯の友よ来るがいい!!」



 不遜たる猫が竜種の王に名乗りをあげる。

 自身は全力とは程遠いがそれでも竜王であり友であるサクレプ・リュネルが死に場所を定めて向かってくるなら、出せる全ての力を持ってして討ち取らねばならない。

 それが友情であり、獣神となるキトラの想いであった。

 ゆえに隠していた神威を解き放った。


「グハハハ!!!なんと言う恐ろしく厳かな魔力だ!これが神威というやつか!本気の半分くらいしか出せないというのに、流石は次の獣神だ!!!」


「全力には程遠いが、今の全身全霊をもって叩き潰してやるニャ!」


 竜王は楽しそうに笑い、キトラもまた獰猛な笑みを浮かべて、間合いとタイミングを計る。


 そんな2匹だけの世界にコメント欄は完全に置いてけぼりにされながらも、ネットはとんでもない量のコメントで溢れかえり、ギルドマスターの平野は泡を吹いて倒れて、首相の鬼住は国民への説明と他国に何と言うべきかと考えると胃と頭が激しく痛み、今すぐ辞めるか、異世界転移されないかなと心から思っていた。



 "【悲報】キトラ考察班の言う通りあっちの猫だった"

 "【朗報】キトラガチの神"

 "情報多すぎて草"

 "これ世に出て大丈夫なやつ???"

 "あかん(アカン)"

 "何かすげぇ神々しい竜が出てきたと思ったら竜王だし、キトラの友達だったらしい"

 "いやそういう話じゃなくてさ!!!"

 "この猫があっち側の存在というのは話す内容が誰も知らないのと、変な加護を授けてくるから少なくとも上位存在と言うことは言われてたからな"

 "ガチ神がなんで配信者なんてやってるんですかねぇ?"

 "国はちゃんと話せ!知る権利を無視するな!"

 "異世界からいらっしゃった神様です!って言われて猫を出されたら流石に正気を疑う"

 "なんで竜がチャレンジャーなんだよ"

 "A.猫が神だから"

 "無法の返しやめろ"

 "画面越しでもめっちゃ怖くて恐ろしいドラゴンが猫相手に全力で挑むとかギャグにしか見えん"

 "普通にキトラが上位種って感じでかっこいい"

 "勇者とか魔王とか完全にフィクションなこと言ってる"

 "これマジで異世界転生勇者この世界にいるかもな"




 盛り上がるコメント欄だが、流石にコメント欄を見る余裕はキトラにも無かった。

 万全の状態ならともかく、今のキトラに余裕などない。

 元より友を相手にして手を抜くつもりや慢心などありえないが。


 素のスペックだけならキトラに分があるが、それをものともしない質量があるのが竜王リュネル。

 1度抑え込んでしまえばキトラとはいえ逃げ出せない。

 だからキトラは気軽に仕掛けられずにいる。

 だが猫の俊敏性は小回りの効かない竜だとなかなか捉えきれず、機を窺っていた。


「ふむ。ここは挑戦者らしく儂から行こうか!!!」


 「ニャ!?」


 そう言ったリュネルはブレスを放つ。

 全力のブレスにはほど遠いが初手ブレスはキトラも意表を突かれて反応が一瞬遅れ、ブレスに飲み込まれた。


 ダンジョンの壁が崩れ落ち、キトラの姿は砂煙で見えなくなる。

 キトラからの魔力で動く配信が続いているので生きていることは分かるがそれ以上のことは視聴者には分からない。


「この程度で倒れる御身ではなかろう!!」


 そういうとリュネルは追撃に今度は大きく息を吸って特大のブレスを解き放つ。


 ドゴォォォォォンと爆音を立てるとダンジョンの壁は消滅して砂煙すら立つことはなかった。



 "ひぇっ、、、"

 "竜のブレスってあんな強いんか?"

 "さすがに竜王と呼ばれるだけあって強すぎる"

 "おっ!死んだか!?"

 "配信ついてるなら大丈夫だけどこれは、、、"

 "キトラちゃん!!!"


 コメント欄がリュネルの一撃でザワつく。

 しかしすぐにその混乱を収めるように声が聞こえた。


「溜めのないブレス!実に見事だニャ!だけど追撃がぬるいニャ!」


 ダンジョンの壁が消滅するほどのブレスの中でキトラはちょこんと座り、毛ずくろいをしていた。

 そこには傷一つなく、綺麗な体をしていた。



 派手な攻撃で、猫VS竜という奇妙な組み合わせの全世界公開マッチが始まった。









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