第13話 好奇心は猫をも殺す。ではホモサピは?
【ダンジョン庁公認猫】冒険猫キトラについて語るスレpart7
150 名無しの冒険者
元暴露系の泉がキトラの正体と飼い主について暴露して危険な魔物だから国民を守る政治家として何とかするとか言ってるけど正体掴めるとかあると思う?
151 名無しの冒険者
ない。というかダンジョン庁は何してんの?
どう考えても猫の機嫌損ねるのまずいだろ
152 名無しの冒険者
ニャンカスどう考えても向こう側の存在だし下手に触れたらどんなことが起こるかわからないのにマジで何考えてるんだ
153 名無しの冒険者
暴露系なんてしてる奴が考えてるわけないだろ
154 名無しの冒険者
【速報】キトラ まさかの同時視聴配信する模様
155 名無しの冒険者
草
どう考えても余計なこと言った瞬間に泉の配信が終わりそう
156 名無しの冒険者
配信が落ちるで終わってくれたらいいけどな
正直消息不明になってもおかしくないだろ
下手したら配信中に公開処刑まである
157 名無しの冒険者
日本でそんなことあるか?って思うけど明らかにキトラは手を出すべき相手じゃないから何があるか分からん
なんで明らかにライオンよりヤバくてテレポートも出来る存在に喧嘩売れるんだよ
158 名無しの冒険者
まあ機能してるか分からないがダンジョン庁が一応首輪つけてるなら虐殺配信とかはないだろ
159 名無しの冒険者
そもそも首輪とか出来るか?
普通に向こう側の存在なら政府が土下座外交した可能性もあるし絶対忖度が働くだろ
160 名無しの冒険者
考えても仕方ないし、やばくなればギルドの職員が止めるだろ
俺らは普通に猫と見る動画を楽しもうぜ
「にゃーん♪今日は予定を変更して泉議員の配信を見ていくニャ!何かよく分からにゃいが視聴者は二窓?ってやつをして欲しいニャ!」
キトラが配信を始めるとコメントが大量に流れる。
そのほとんどは挨拶やキトラの心配だったが時々、アンチコメントが混ざっていた。
だがキトラは気にしない。
下等生物であるホモサピがいくら騒いでもお猫様であるキトラは動じない。
今回は綾乃にも危害があるかもしれないので動いたが、正直襲ってくるなら叩き潰すだけだし、邪魔をするなら相応の報いを与える。ただそれだけであった。
「心配している人間もいるけど大丈夫ニャ!にゃーは無闇に人を襲ったりしないニャ!」
"無闇に、、、"
"理由があれば襲うのか"
"そりゃ明らかに正当防衛ならやるだろ"
"つまり今回はやると"
"キトラって典型的なお猫様だし、いちいち人間のやることに気にするか?"
「にゃーは以前にも言ったけどダンジョン攻略の邪魔をされなければ何もしないニャ!」
"今回は邪魔をしたからギルティということね"
"まあ猫の尾を踏んで引っ掻かれない訳はない"
"そもそもなんでキトラちゃんはダンジョンにこだわってるの?"
"全然教えてくれないから分からないな"
"攻略が目的だけどなんで攻略したいかは謎だよな"
「泉議員の配信が始まるまで雑談でもしようかと思ったけど始まったみたいだからまた今度にするニャ!」
キトラはそういい泉の配信に目を向ける。
もったいぶった話から始まり、さっさと本題に入るニャと耳が倒れてしっぽがバシバシと床を叩き始めた。
ヨシモリは女神様が秘術をかけてくれているため無事だが、助けに行くのが遅くなると苛立ちを募らせ不機嫌なオーラが漏れ出し、周りがヒヤヒヤしていると、泉の配信を見ていたキトラが急に真剣な顔をした。
「このハエ、、、。蝿……は…………蛆…………死体に…………ニャ!?」
キトラが驚いた顔をしてすぐに嫌そうな顔をして何やら難しい顔をする。
いつもお猫様として、神に至る猫として余裕と自信に満ち溢れている普段の彼とは違う態度に綾乃は恐ろしいほど嫌な感じがした。
コメント欄もキトラの顔を見て何かを察したのかザワつく。
"驚いた顔してどうしたの?"
"かわヨ"
"何か蝿みて不穏な言葉言ってたけど?"
"あのハエになんかあるんか?"
"はえー何か知らんがヤバそう"
「あ〜気にする必要はないニャ!それよりやっと本題に入ったみたいだニャ!」
『という訳で私、泉 南はあの猫を人を襲う危険な動物として討伐隊を結成しました!!!』
"あっ"
"あ"
"あっ・・・・・・"
"終わった"
"\(^o^)/"
"オワター\(^o^)/"
"アカン(アカン)"
"ふぁーーーー!!"
"ふぁーーーーwww"
"頼むから殺しはやめて"
"AIでモザイクは入るけど人死する配信は見たくないからやめてくれ!"
"キトラちゃん!落ち着いてください!!"
"悪即斬だけはやめてくれ"
配信が行われている会議室のような場所に武装した10数名の冒険者がニヤついた顔で現れ、泉は勝ち誇った顔をしていたがネットの反応は冷ややかであった。
政治家が暴力を行使すること、政府が保護している立場に見える動物を討伐しようとすること等の浅慮よりも政治生命だけではなく、命すら自ら捨てそうな行動にキトラのコメント欄は大きくザワついた。
一応泉の方のコメント欄やSNSでは賛同する声も見られるが、それでもキトラを知る者は結末を理解して、知らぬ者も猫1匹に何をしてるんだと反対の意見が多く見受けられた。
「おっ宣戦布告だニャ。とりあえず言い分を聞いてやるニャ〜」
キトラはこっそりと権能を振るいながら興味無さげな態度を装う。
有象無象などに遅れをとるなどありえないが1つ、気がかりなのが事があり、獲物を狙う時のようにひっそりと機を伺う。
キトラの権能。
それは動物に命令を下せて、その感覚を共有できるというもの。
神の権能としてはあまりにシンプルなもの。
それを使いながらキトラは泉の周りを探らせる。
『キトラと名乗る猫はダンジョンでいきなり冒険者を襲い、さらに冒険者組合で職員に対して威圧的かつ危険な行動を取っていることが報告されています。また人間に害のあるスキルを散布したことを示唆しており、あの猫は人類の敵とも言えるのです!これはテロに準ずる行為であり、屈する訳にはいかないのです!』
「言い分は一理あるニャ。けど一理しかないニャ。あとテロなら然るべき機関が動くべきであって一人が勝手に正義感で動くとマジで邪魔だニャ」
キトラが毛繕いをしながら吐き捨てる。
もう突っ込んでしまいたいと思っているがキトラだが、先程から泉の配信に映るハエが気になっていた。
画面越しなので分かりにくいが確かに魔力を帯びている。
ハエの魔物などはこの世界は元より、キトラの世界でも見たことがない。
しかしキトラが全ての動物を支配下に置けるように、ハエを眷属とするものや使い魔のように使う者はいる。
堕ちたとはいえ相手は神、恐らく何かしらの方法で相手を操るなり悪影響を与えているのだろう。
キトラが可愛らしい頭で考える。
こんな時はみんなならどうしただろうかと。
勇者と女好きの賢者は慎重に後ろの存在を見極めようとする。
聖女と讃えられた女性ならまずは影響を受けていると思われる者から対処するだろう。
さてどうしたものかと視聴者を放置して考えていると画面から泉の声が聞こえた。
『なんと!この猫には飼い主がいます!しかもその飼い主はなんとまだm『にゃ〜〜ん』・・・・・・えっ?』
飼い主と聞こえた瞬間に身体が自然と動いた。
元より考えるよりも本能のまま動く方が性に合っている。
細かいことは国家公務員にやらせて何かあるなら力づくで押し通せばいい。そのために力を得たのだから。
数多の死線を越えた大いなる獣が身の程を知らない泉 南の前に音もなく顕現した。
「好奇心は猫も殺すというニャ。なら過ぎた好奇心をホモサピが抱けばどうなるか知ってるかニャ?」
目の前の猫が言い終わると突然の事で気を取られていた周りの冒険者達が割り込み、泉を後ろに突き飛ばす。
「泉さん退いてくださっ、、、、」
一人が何かを言い終える前にドサッ倒れ込む。
男の顎元には可愛らしい肉球の痕がまるで生まれた時からずっと共にあったと言わんばかりに刻まれていた。
殴打音もなく、静かに崩れ落ちたその光景は見るものを恐怖に陥れる。
キトラからすれば肉球は音を消すのが最大の目的なのだから肉球で殴れば音が小さいのは当然なのだ。
だが人間の常識では殴れば音がするのに目に見えぬ速度で音もなく人が1人やられた。
その恐怖に逃げようとする者、果敢にも戦いを挑む者、呆気にとられる者、どの行動を取った者も泉を除き地に伏した。
あまりの光景に視聴者達も静まり返る。
そんな中でキトラは何事も無かったかのように倒れている人を踏みつけて泉に向かって進む。
「忠告したはずニャ。ダンジョン攻略の邪魔は許さないと」
「だ、黙れ!こんなことして許されると思うな!人間を獣風情が害してただで済むと思うなよ!」
「誰がにゃーを罰せるんだニャ?なぁ誰がこのキトラを罰すると言うのか教えてほしいニャ」
泉の頬にぷにぷにと肉球を当ててポンポンしたキトラが意図的に神威を溢れさせる。
泉が「ひぃっ」と声を上げると口から泡を吹いて倒れ込んでしまった。
配信中だと言うのにやりすぎてしまったかと思ったが、舐められてまたこのようなことが起きればそれだけダンジョン攻略が遅れてしまう。
だからキトラは泉を見せしめに使うことにした。
結局人間も獣も教育には恐怖が1番早い。
故に改めて自分を見ているものに伝える。
「にゃーのダンジョン攻略を妨げるものは誰でも許さないニャ。今、攻略しているくらいダンジョンを攻略すればにゃーは姿を消すニャ。だから誰も邪魔してくれるニャ。それでも邪魔をすると言うなら命を捨ててかかってくるニャ」
キトラはそう言うと近くを飛んでいたハエを尻尾で叩き落とした。
当初の予定よりずっと過激になってしまったが仕方ない。
とんでもない事になっているコメント欄をキトラは一切見ずに思考を巡らせる。
ハエを叩き落とした時に感じた寒さと死の気配。
幾多の死線を越えて、時にはうっかり死んだキトラは堕ちた神の正体を理解した。
勝つしかないし、絶対に勝って勇者を救うつもりだが面倒な神を相手にさせてくれるニャ。とキトラは心の中で毒づいた。
キトラが倒さねばならない神は名も無き大御神。否、名を必要とされなかった大御神。
キトラはダンジョン攻略のスピードをあげる事を決意して、綾乃が待つギルドに帰り、そのギルドを通して国に正体を教えてやることにした。
これはキトラにはどうでもいいことだが、この配信によりキトラは大炎上してダンジョン庁を始めとする対応に追われた政府関係者の頭皮と胃に多大なるダメージが入った。




