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第四十二話 悲しみの大手町!

箱根駅伝復路


ゴール地点の大手町。


ここには、

巨大画面のパブリックビューイングがあり、

箱根駅伝の生中継が放送されていた。


往路を走った選手たちも、

ここで中継を見ながら、

復路な選手の到着を待っている。


最初は、どの大学も、

自分のチームの順位に一喜一憂しながら、

全体的にワイワイと明るく中継を観ていた。


しかし…。



第四十二話 悲しみの大手町!



先ほどまで、淡々と

先頭の東洋文化大学を映していたテレビが、


いきなり、

後方のバイクカメラの映像に切り替わった。


『大変なことが起こりました!

城西拓翼大学にトラブルです!!


八区の石川涼介!

真っ直ぐ走ることができません!

蛇行を繰り返しております。』


(え!?まさか…)


城西拓翼大学のメンバーは絶句する。


(いや、なんで!?

昨日はあんなに調子よかったのに!?


え!?まだ距離半分あるの?

これじゃあ…。)


この現実はジョーダイにとって

全くもって信じられない、

いや信じたくないものであった。


だが、メディアは容赦なく、

この残酷ショーに拍車をかけてくる。


担当のアナウンサーが

まるで水を得た魚のように、

生き生きと実況を繰り返す。


『あーっと、ジョーダイ倒れた!

ジョーダイの石川涼介が倒れました!


しかし、石川!

何とか歯を食いしばって立ち上がる!


何という根性、

何という気迫でしょうか!!


また、前を向いて走り始めました!


転んだ時に怪我をしたのでしょう!

膝と肘からは血が流れております!!』



(もう、やめてくれよ!!)


部員全員がそう思っていた。


これは、

涼介にもう無理をしないでほしいという

気持ちと、


もうこれ以上、

苦しむ涼介を映して

楽しむようなことをしないでくれという

メディアへの怒りが

この一言に込められていた。


そして、涼介が再び倒れ、

ほふく前進で前に進もうとするシーンが

映し出されると、


ライバル校のランナーですら、

いや、同じ箱根ランナーだからこそ、

目を背けるように下を向くしかなかった。


当事者であるジョーダイの陣営では、

一年生と二年生が泣きじゃくり、

手で顔をおさえている。


しかし、上級生である三年生と四年生は、

腕を組み唇を噛み締め、

瞬きもせずに涙を堪えている。


そして、画面に映る石川涼介の姿から

一切、目を離していなかった。


キャプテンの竹村が下級生を一喝する。


「最後までしっかり見とけ!


これが箱根駅伝の現実なんだよ!


何のために、涼介が必死になって

襷を繋ごうとしているか理解しろよ!


今、一番辛いのはお前らじゃなくて

涼介だろうが!!」


下級生全員がハッとする。

何とか涙を堪えながら、

再び中継をみた。


そして、櫛部川監督が石川涼介にタッチし、

城西拓翼大学の棄権が決まった。


『城西拓翼大学!棄権!!

ジョーダイ、ここでまさかの途中棄権です!!』


テレビ中継の実況の声が大手町に響く。


その瞬間、

今まで押し殺していた気持ちが

一気にあふれ出し、

上級生全員が一斉に泣き崩れた。


それは、襷が繋がらなかったからではない。


棄権になったからでもない。


苦しい思いをしている涼介に

手を差し伸べることも

代わりに走ってやることもできない、


そんな自分自身の無力さに

悔し涙が止まらなかった。

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