第三十四話 四年生からの襷!
一月三日。
箱根駅伝復路のスタート地点。
城西拓翼大学陣営にて。
「それじゃあ、後で大手町で会おうな。」
往路を走り終えた四年生が
六区を走る東原蓮太(二年)に
声をかける。
「はい!あと、先輩、全日本予選の時は…。」
蓮太が下を向く。
すぐさま竹村がそこから先の言葉を遮る。
「別に悔しいなら、それを今日の
箱根駅伝にぶつけりゃいいだけじゃん!
全日本に出場するよりも、
蓮太と修太が明るくいてくれることが、
俺たちは嬉しいんだ。
それに、いつまでも過去を引きずって
孤独でいるより、
未来に向かって皆んなで頑張る方が
ずっとかっこいいだろ?」
先輩の優しさに泣きそうになる。
しかし、今は泣いてはいけない。
「竹村さん…。
今度は俺がバリバリ君奢りますね!」
バリバリ君とは、
竹村がこよなく愛してやまない
スティクアイスのことである!
「ああ、旨いバリバリ君食わせてくれよ!」
竹村はにこやかに応える。
「ついでに俺たちにも奢ってくれよ!」
郡司と家村も冗談を言って、
その場を和ませていた。
第三十四話 四年生からの襷!
「蓮太、
六区は最初だけ上り坂があるけど、
そこでは飛ばしすぎるなよ。
いかにその後の下り坂で
勝負を仕掛けられるかが重要だからな。」
前日に三区を走った四年生の諸星が
レンにアドバイスをする。
諸星も二年生のときに
六区を任されたことがあったのだ。
「それから、
今日はかなり気温が低いから、
特に道路の白線が凍って
滑りやすくなっている。
下りのカーブでショートカットを
狙いたいところだが、
足を取られないようにな。」
芦ノ湖の気温は低く、
体が震えるほど寒かったが、
先輩たちの、特に四年生の言葉には、
レンを勇気づける温かさがあった。
「はい!ありがとうございます!
寮に帰ったら、諸星さんも
一緒にバリバリ君、食べましょうね!」
そう応えると、レンと諸星は、
一緒になって笑い合った。
「さあ、そろそろ出番だ!」
レンは、
前日の往路で五区を走った郡司から、
直接渡された襷を纏う。
真実かどうかは分からないが、
箱根駅伝を走ったOBの中には、
『四年生から受け取った襷には、
次の者に自分の力以上のものを
引き出させる魂が宿っている。』
と証言する者も少なくない。
レンもまた、
不思議なことに、襷を纏った瞬間に
緊張や不安がスッと消えていくのを
感じていた。
そして、ギュッと襷を握りしめて、
六区のスタートラインに立った!




