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第三十二話 山の神、降臨!

箱根駅伝五区。


中間地点である宮ノ下を過ぎたところでは、

東洋文化大、山梨国際大ヤマガク

城西拓翼大ジョーダイが四位集団を形成していた。


ヤマガクの井之上もジョーダイの郡司も

東洋文化大の葛城に対抗しようと

なんとか後ろに付いて粘りを見せる。


しかし、

それぞれのチーム内で

トップクラスの実力を誇る二人ですら、

そこから全く前に出ることができない。


それほどまでに葛城の速さは尋常ではないのだ。


一方、前方の葛城龍次は、

ちらっと後ろを見て

二人の表情を冷静に確認する。


(だいぶ限界みたいだな…。

でも、二人とも全く諦める様子がない。

どこのチームの四年生も

下級生とは気迫が段違いだ!

きっとこれが上級生の意地なんだろうな。

俺も負けてられねーな。)


一年生の葛城もまた、

二人の箱根駅伝にかけるアツさに

自身もかつてないほど、

ヒートアップしているのを感じていた。



第三十二話 山の神、降臨!



再び前を向いた葛城は、

前方に中央義塾大がいるのを確認すると、

さらに加速してこれを追った。


井之上と郡司もこれに食らいつこうとするが、

全く歯が立たない。


そして、二人が次の山道のカーブを曲がった時には、

もはや葛城の姿はすでに見えなくなっていた。


(葛城とて人間だ。

一旦どこかでペースダウンをするに違いない。

そして三つ巴の戦いになれば勝機はある!)


その目論見は、一瞬で、

ものの見事に打ち砕かれたと言えよう。


このあまりに一方的な決着に、

ヤマガクとジョーダイ、

二つのチームの関係者は愕然とした。


結局、葛城龍次は

その後一度たりとも

ペースを落とすことなく、

五区を走り切り、区間新記録を樹立。

二位の早稲田学院大に三分差をつけ、

東洋文化大学に往路優勝をもたらした!


これは箱根駅伝において、

早稲田学院大、駒ノ澤大、東洋文化大の

三強時代の終焉を示すと共に、


東洋文化大学の一強時代の幕開けを

予感させるものであった。


そして、この日を境に


葛城の人間離れした走りを目撃した人々は、

誰からともなく、

彼を『山の神』と称えるようになった。

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