第二十六話 感謝の走り!
「なあ、
今年の城西拓翼大学…
強くないか?」
「うん…。去年、最下位だったとは
思えない走りだ。」
五区のランナーが待つ平塚中継所では、
観客や関係者が、ジョーダイの快走に
驚きを隠せなかった。
「もしかして、ジョーダイの
四区や五区もすごい奴なら、
上位進出もありえるぞ!
もしかしたら、
このまま勢いで三強を崩すかも。」
一方、ジョーダイの五区を任されている
郡司大河は、冷静にアップを
繰り返している。
だが、そのハートは、
青い炎のように静かに燃えていた。
(見せてやろうや!家村!!
平林さんにも、俺たちの走りを!)
郡司もまた、無名選手であった自身を
ずっと気にかけ、指導をしてくれた
平林前監督に何としても応えたいと
思っていた。
第二十六話 感謝の走り
その頃、
第四区を走る城西拓翼大学の
副キャプテン・家村マコトは、
往路五位で山梨国際大学と並走を続けていた。
序盤は中央義塾大学と明利大学、
山梨国際大学との集団で、
前方の駒ノ澤大学を追っていたが、
中盤で上位校の中央義塾大学が抜け出し、
その後を追うように、
明利大が続くかたちとなった
現在、中央義塾とはおよそ三十秒差、
明利大学とは二十秒ほど離されている。
しかし、家村は全く焦っていなかった。
(お前の良さは、アップダウンのコースで
足に疲労が溜まっていても、終盤、
必ずスパートをしかけられるところだ。)
二年前に、タイムが伸び悩んでいた時に
平塚前監督にかけられた言葉を思い出していた。
(アップダウンの多い箱根駅伝の四区は、
家村、まさにお前にピッタリじゃないか!
そして、郡司!お前の登り適正は、
城西拓翼大学史上、間違いなく
トップだ。上りを極めてみろ!)
その日から、平林監督(当時)は
家村と郡司のために特別メニューを作成した。
全員がトラックで練習をするなか、
アップダウンのあるクロスカントリーコースを
徹底的に走らせたのだ。
すると、三年次には体幹が安定し、
スピードとスタミナが備わる選手に成長。
箱根のメンバー入りをするはずだった。
しかし、昨年の怪我と体調不良のため、
メンバーを外れてしまう。
それ以上に、
ストレス性胃炎のため、
平林監督が退任したことが
ショックでたまらなかった。
(平林さん、あなたのおかげで、
僕も郡司も強くなりましたよ!
あのご指導があったからこそ、
今、僕は箱根を走れています。
ラスト三キロ、見ていください!
これが、家村マコトの平林さんへの
感謝のスパートです!)
ラスト三キロ、家村は山梨国際大学を
置き去りにし、中央義塾大学と
明利大学を追って行った。




