第二十五話 父の教え!(諸星の回想)
第四区の走者が待つ鶴見中継所。
早稲田学院がトップで通過してから
およそ一分四十秒後、
第二集団からラスト二キロで
単独で飛び出した
駒ノ澤大学がタスキを繋ぐ。
そして、その三十秒後に
中央義塾大学と明政大学、
城西拓翼大学、山梨国際大学も
団子状態で鶴見中継所に飛び込んだ。
昨年、
最下位に沈んだ城西拓翼大学としては、
大健闘である。
三区を走り終えた諸星大吾の
心の中で、亡くなった父親との思い出が
一気にあふれ出していた。
第二十五話 父の教え!(諸星の回想)
三年前、諸星が
城西拓翼大学で箱根駅伝に挑戦したいと
父親に伝えた時…。
「金のことなら心配するな。大吾!
何があっても、俺は最後まで
お前の味方だからな!」
その日は、
感謝の思いでいっぱいになった。
一昨年の春、父親が病気で入院した時…。
「すまんなあ。来年までにしっかり治して
箱根駅伝の応援に行かなきゃな。」
(何がなんでも、
箱根のメンバーになってやる。)
諸星の箱根にかける覚悟が固まった。
そして、父親が亡くなる直前…。
「なあ、大吾。どんな男にも、
一生に最低三度は人生をかけて
勝負をしなきゃいけない時がある…。
そして、俺は、
何度もそれに立ち向かって
勝ってきたんだ。
だから、絶対にこの病気に打ち勝って、
お前の走りを見にいくからな。」
しかし、その願いは叶わなかった。
諸星も集団風邪による体調不良と
父親を亡くしたショックで、
前回大会の箱根では、
思うような走りができずに終わった。
それから
前回の箱根駅伝から一週間後に見つかった
遺言状には…。
「大吾へ。
人生は悔しいことばかりかもしれない。
だが、悔しさや劣等感は
きっと人生の肥やしになると思っている。
だから、どんな困難や不利な環境であっても
負けることを恐れずに
正々堂々と勝負して欲しい。
たとえ、思っていたような結果にならなくても、
そこで得られたものは、
生涯、お前の財産になるだろう。
そして、これは金や物のように
誰かに奪われることはない。
それを理解できていれば、
いつかお前に訪れだろう
人生をかけた勝負に
打ち勝てるはずだ。
最後に
大吾、お前は好きに生きていい。
ただし、しっかり生きろ。
応援に行けなくて
本当にすまなかった。
母さんのことを頼む。
父より」
そして、今。
第三区を走り終えて諸星大吾は、
天に向かって拳を突き上げた。
(俺は最後まで逃げなかったぞ!父さん!!)
その思いはきっと箱根の山よりも
ずっと高い天国の父親にも
届いていたに違いない。




