第十九話 六郷橋での対決!
「さすがに、そう簡単に逃してくれねーか…。」
早稲田学院大学のエース
速水瞬は、後方のランナーに送られる
声援が近くなっているのを感じていた。
これは、序盤よりも第二集団との差が
詰まってきていることを意味している。
しかし、先頭の二人は、
この状況を心の底から
楽しんでいた。
「「それでこそ張り合いが
あるってもんよ!」」
強豪校の追い上げが、
蒼太と速水、二人の闘志を
さらにかき立てる!!
一区は終盤戦、トップの二人は、
六郷橋の坂の中腹にさしかかろうとしていた。
第十九話 六郷橋での対決!
蒼太との勝負を楽しみたい速水だが、
やはり、後ろから迫る東洋文化大学のことが
気にならない訳ではなかった。
「ただ、この状況はちょっとアレだな。
監督から東洋文化大学に
二分以上差をつけろって言われたしな…。」
少し後ろを振り向き、速水が
第二集団の位置を確認する。
その時を蒼太は見逃さなかった!
「その隙を待っていたぞ!」と言わんばかりに
ロングスパートを仕掛けた!
「やばっ!」
さすがの速水も動揺し、反応が遅れる。
蒼太が二メートル、そして三メートル
速水を引き離した。
しかし、速水とて世代を代表するランナーだ。
それ以上の差が開かない。
「あと反応がコンマ一秒でも遅れていたら、
一気にレースを持ってかれていたな…。
西條蒼太!やはりコイツは侮れない!
だがな…」
世代トップたる所以であろうか、
すぐに、速水は冷静を取り戻した。
一方、坂の頂上に到達した蒼太は、
勝利を確信!
「城西拓翼大学史上初、
箱根駅伝、トップでの襷リレーも
夢じゃない!!」と思っていた。
しかし、『ロードレースは最後まで
何が起こるか分からない』
と言われているように
そのような確信は慢心以外何ものでもないのだ。
それを示すように、
坂を登り切った後の蒼太のコース取りが甘い!!
僅かに広がった沿道側の最短コースから
臙脂色のユニフォームが
一気に蒼太を抜き去った。
ワセガクの速水瞬である!
(惜しかったな!蒼太!
切札は
最後の最後まで取っておくもんだ!)
さらに、本気の二段スパートで、
二位以下のチームを
あっという間に引き離す!
負けず嫌いの蒼太も再びスパートを
しかけようとしたが、
坂での疲労で脚が前に進まない!
「勝負あったな。」
速水のスピードは、
ゴールまで衰えることは無かった。
そして、前回大会に続き、
他校に圧倒的な実力を見せつけ、
見事、一区区間賞を獲得したのであった。




