第十二話 山の神、出現!
箱根駅伝予選会が終わり、
二週間が経った。
城西拓翼大学は、
予選会三位と無難に本戦出場を決め、
本戦に向けての調整に
余念がなかった。
そんな折、
箱根駅伝本戦に出場する各校に
衝撃のニュースが舞い込んだ。
第十二話 山の神、出現!
始まりは、東洋文化大学
マネージャーからの連絡であった。
各大学のマネージャーは、
合同練習や事務仕事などの
やりとりをしなければならないので、
互いに連絡を取り合うことが
できるのだ。
連絡の内容は、次のとおりである。
「東洋文化大学の一年、葛城龍次が
箱根駅伝五区の試走で、
区間新記録を大幅に更新した。」
区間配置などの情報漏洩が
命とりになる箱根駅伝において
常識的に考えれば、
信じられない行為である。
このニュースはフェイクなのか?
はたまた、真実なのか?
そして、情報管理に厳しいはずの
東洋文化大学が、なぜ、
この情報をリークしたのか?
各大学は情報の真意を確かめるべく、
奔走した。
そして、どの大学も、
「この情報にはかなりの信憑性があり、
リークした理由としては、
ライバル校を撹乱させ、
ベストオーダーを組ませないためである。」、
と断定した。
しかし、箱根駅伝本戦まで、時間がない。
優勝を狙う学校は、本来、
平地で走らせる予定だった
エース級の選手を、
急遽、山登りの五区に
投入せざるを得なくなった。
当然、駅伝というスポーツにも、
勝負の流れというものが存在し、
往路の大幅な遅れは、
復路を走る選手に
精神的にも大きな負担となるからだ。
そして、優勝を狙う学校が往路に
強力な選手を投じれば、
上位進出を狙う学校も、
当然、遅れるわけにはいかないと、
往路に主力を投入せざるを得ない。
しかし、その場合、
復路の選手層が薄くなり、
往路で大敗北を喫すれば
シード落ちの危険性もある。
また、ジョーダイのように、
シード権が欲しい大学も、
無関係とは言えない。
上位チームに往路で逃げ切られた場合、
ライバル校とのギリギリのシード権争いを
しなければならなくなるからだ。
自分たちは、どのようにオーダーを
組み直すのか、
そして、ライバル校は
どんなオーダーを組んでくるのか、
山の神の出現により、
各大学の指揮官たちによる心理戦が、
すでに始まっていた。




