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秘密のブレイクスルー

「いたた!ちょっとナギちゃん!もっと優しくしてよ!」



「いやごめんってー。魔法なしで治療だなんて久しぶりだから……さ!」



「あだぁっ!わざとでしょ!」



「わざとじゃないしー」



 国に帰ったリィンは、元は治癒魔法を使えたナギに治療を頼み、包帯をぐるぐる巻きにされてベッドに横たわっていた。



 思ったより元気そうに見えて安心した悠だったが、その裏には彼女の強がりが存在していることも知っていたので、なんとも言えない気分になる。



「私本来の固有魔法は使えないけど、一応魔力で細胞を活性化させておいたから傷の治りは早いと思うよ。でも、無理に動いたりとかは絶対ダメだかんね。五体満足とはいえ、半分喰われたんだから」



「……リィン、悪い。俺が力不足なせいで」



「あははー、気にしないでいいよ。助け合いだよ。悠くんは困ってる私を助けてくれた。私は危なかった悠くんを助けた。とーぜんの話だよ。互いに利用しあっていこうぜー?なんてー」



「なになに?なんの話?もしかしてなんかうふふー、なことがあったとか⁉︎」



「ナギちゃんには内緒。私と悠くんだけの秘密だから。それより、この部屋にみんなを集めてくれないかな?次の作戦会議がしたいからさ。ガルダさんと、アルトさんと、ジキルさんとー、サドさん。とりあえずこれだけでいいかな」



「だってさ。行ってきてよ悠」



「ナギちゃんに頼んでるの!悠くんよりナギちゃんの方が詳しいんだから」



「自分に頼まれてるってわかってなかったのか……?」



「そっ、そんなことないし!あたし賢いもーん!賢いから行ってくる!」



 ナギは図星だと言わんばかりに頬を紅潮させ、膨らませて一目散に病室から出て行った。



 そんな姿を、悠とリィンは微笑ましい気持ちで眺めていた。



 それからしばらく、ちょこちょこと人が集まり始めたが、悠とリィンは特に言葉を交わすことをしなかった。



 リィンは一人でくるくると髪を巻き、悠はぼうっと窓の外を見つめるだけ。



 最悪のタイミングで互いの言葉を遮られてしまったため、二人ともどうしていいやらわからないのだ。



 故に悠もリィンも、互いに不干渉。



 リィンは悠の答えを待ち、悠は掴みそこねたタイミングを再び取り直す。



 しかし一度逃した好機を引き寄せることは結局叶わず、リィンが要請した者たちはいつの間にやら全員集合を果たしていた。



「よく帰ってきてくれた。流石代理だ」



「いやぁ、こんな怪我しちゃってるけどねー」



「さ、斎賀悠!き、きききき貴様……貴様ァー!」



「アルトさんちょっとうるさいよー。今回の件は、私が傷を負うか悠くんが死ぬかの選択肢しかなかったんだから仕方ないよ」



「それはそうかもしれませんが……」



「それはそうならそれはそうでいいんじゃない?さ、過去のことより次の話をしよっか。次の作戦決めよっか」



 リィンは手を数度ぱんぱん、と鳴らすと空気を一転させ、公式的な立場へと自身を切り替えた。



「今、ヴァド城で死神さんが一人で魔王軍幹部の一人、ヴァドを食い止めてくれてる。私たちは彼女の限界が来るまでに出来る限り準備を整えないといけないの」



「死神さんってたまに出入りしてるあの子?そんなに強かったの?」



「俺が見る限り、死神さんはヴァドに対してかなり善戦してた。とはいえそれがいつまで保つかはわからない」



「しかも、ヴァド一人食い止められてもヴァドの指示一つで配下の軍はこっちに侵攻してくるしね。魔物たちに進軍されたら今度こそ終わりだよ」



「うーんヤバイよねー、ちょっと。結局リィンと悠とあの子で乗り込んでも暴れられなかったんでしょ?あたしたち騎士全員で行ってもあんまりいい結果は得られないと思うな」



「それに関しては、次はデッドノートをアンダーモードじゃなく通常装着で運用する。この国の防衛は出来なくなるけど、その代わり戦力の問題は一挙に解決する。ということで、俺の提案する大まかな方針はこうだ。どうにか一対一の状況を作って、即座にヴァドを始末。それから統率を失った魔物たちを撤退、もしくは排除するっていうのだけど、どうだろうか」



「理想的っちゃ理想的だな。その状況に持ち込めたら、の話だけどな。実際一対一に持っていくったってどうすんだよ。その手段はあるのか?」



「……考えてない」



「結界の一つでも張れりゃうまくいきそうなもんだけどなぁ。それか、どうにか邪魔な魔物どもを一掃するか」



「悠くんのこの前のアレ、えーっと、キャノンバレルだっけ。アレ使えば魔物は倒せるんじゃないの?」



「悪いけど、この前クラスの砲撃はもう少しシャープレイを充填しないと出来ない。あの時はほぼ全開で、広範囲の砲撃だったから、かなり範囲を絞れば威力は同等のものが撃てる」



「ふむ、無駄撃ちは出来ないか。すまないな、悠君。私がもう少し上手く扱えればよかったのだが……」



「いや、十分ですよ。この国に被害がないことが一番だ」



 とはいえ、メモリデバイスが示す残量シャープレイは未だに赤ライン。



 予断を許さぬ状況であることを示しており、戦況の厳しさを物語っていた。



 しかし悠はそのことを口にも表情にも出さず、どうすれば良いかを考えていた。



 立ち止まっている暇はない。



 ――改めてそう決意した時、悠にとって、いや、その場にいる者全てにとっての最悪の報せが届いた。



「お休みのところ失礼します!報告に参りました!現在ヴァド城から、ヴァド本人が兵を率いてこちらへ進軍を開始した模様!早急なる指示を願います!」



 その報せを聞いた瞬間、その場の誰もがの表情が凍りつき、絶望に囚われた。



 未だ作戦が思いついていない中でのその報告と、ヴァドがいるという情報から、彼と相対していた死神の安否。



 その二つが一気に襲いかかってきて、頭を殴られたような衝撃に悠は見舞われる。



「っ……!」



 目眩すら覚えた悠は、窓の桟に手をつき瞳を抑えた。



「ど、どうすんのさ。あたしたちまだなんにも対策立てられてないよ?」



「……ヴァド本人と魔物両方だと……?い、いくら斎賀悠のデッドノートでもこれは……」



「……死神さん……。そんな……まさかね」



 その場の誰もが口々に自身の感情を口にし、狼狽を見せる。



 強大な敵を前にして絡め手すらない自分たちの矮小さを鑑みて、焦りを見せているのだ。



 ――たった一人を除いて。



「……よし、作戦を思いついた――というより、作戦以下の素人の考えだけど。もうこれしかない、と俺は考えた。絶望するより次だ」



「なにか思いついたの?流石悠くん!」


 

「あぁ。一対一で戦う方法を思いついた。それと、魔物を一気に排除する方法もな」



「どうやるんだ?聞かせてくれ」



「それは――」


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