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敗走エスケープ 1

 死神と別れた悠は、敵を倒すために、生き残るために戦場へ赴いたリィンを探してヴァド城内を駆ける。



 何故二人が『自分を信頼しろ』といって戦場へ赴くことができるのか。



 何故自分を犠牲に出来るのか。



『破綻した』自分ならいざ知らず、守るべきものがあり夢を持つリィンや、一歩間違えれば闇に落ちそうなものの、明確な目的を持つ死神が自分を犠牲にしてまで戦う理由が悠には分からなかった。



 悠はリィンを探しつつ、蔓延る魔物達を蹴散らしながらずっもそのことを考えていた。



 いくら考えても死神の気持ちを理解出来ず、どうして笑って自分を送り出してくれるのかが分からない。



 そのことを考え始めると心がどうしようもなくざわつき、そんな落ち着かない心に苛立ちを覚える。



 苛々を迫り来るゴブリンやオークにぶつけるように蹂躙し、リィンを探し求めた。



 疑問が解決するかそれともリィンを見つけるのが先か。



 悠は頭の隅でそんなことを考えていたが、その答えは間も無く導き出されることとなる。



 生憎疑問の答えが出るとこはなく、代わりに廊下の先で魔物達を相手に激しい戦闘を繰り広げているリィンを発見。



 悠は彼女の背後に迫るゴブリンを、さながら先ほどの死神のように、ゴブリンに察知される前に接近、斬り捨て、リィンの前に参上した。



「大丈夫か?リィン」



「ゆ、悠くん!今度こそ倒せたの?」



「……いや。今は死神さんが相手をしてる」



「死神さんが⁉︎大丈夫なの?」



「本人は大丈夫だって言ってる。それより撤退だ。死神さんが時間を稼いでくれてるうちに」



「だ、駄目だよ!死神さん死んじゃうよ!」



 悠とリィンは互いの再会を分かち合う暇もなく、次々と現れる魔物達を相手取りながら言い合いを継続する。



「……俺だって嫌だよ。でも、死神さんを助けたら逆に死神さんに嫌われそうだ。覚悟を無駄にする気か?って言われた。……俺にはなんでそんな事が言えるのかわからなくて、混乱したまま気がつくとここにいた」



「死神さんはなんて言って悠くんを送り出したの?」



「お前は大切な仲間だ。僕にまた仲間を失わせる気か?覚悟を無駄にする気か?って」



「……そう。わかった。それなら、死神さんの思いを蔑ろにするわけにはいかないね。悠くん、一旦退こう。死神さんがそう言うんだもん。なにか策があるんだよ。ここは死神さんを信じて、ね?」



「……なんでそう言えるんだ?なんでそんなに人を信用出来るんだ?俺はリィンみたいに思えない。今すぐ引き返したいくらいだ」



「反対に、なんで悠くんはそんなに人を信用出来ないの?自分だけが傷つきたがるの?仲間なんだから、仲間を信用するのは当然の事でしょ」



「俺は――」



「と、悩む前に逃げる!そろそろしんどくなってきたし!」



 リィンは目を伏せがちにして表情に影を落とす悠の手を引っ張り、力任せにその場から脱兎のごとく逃げ出した。



「マ、マテ!」



「待たないよーだ!」



 背後から聞こえてくるゴブリンの声に、リィンは子供のように言い返す。



 リィンの足は流石に速く、アンダーモードを装着していなければ即座に置いていかれるほどで、たちまちゴブリンの追跡を振り切り、やがて巨大門前に到着した。



「開かない!」



 門番ゴブリンの操作で開けられる門は、悠が触れてもビクともしないほど頑丈なものだった。



「なら、破壊するしかないな」



 悠はグリムフィストにシャープレイを集中させ、暴発直前まで濃度を高めた。



 ただでさえ残り少ないシャープレイだったが、致し方ないと諦め、全力でグリムフィストから放つエネルギーを大門にぶつけ、とてつもない破砕音を伴い破壊した。



「オワッ⁉︎」



 破れるはずのない扉が破壊されたことにより、外でぼうっとしていた門番は素っ頓狂な声をあげて飛び上がった。



「よし、いけた!追っ手が来る前に逃げよう!」



 力なく地面に尻餅をつく門番を横目に、二人は自らの国へと向けて全力で撤退を開始した。



 死神のことは、気がかりというには大きすぎるほどの心残りだが、今は、リィンの言う通り、手を引かれるがままに走る。



 悠がちらり、と後ろを覗き見るとそこはもう誰も追ってきてはおらず、安堵し小さく息をついた。



「リィン、もう大丈夫――」



 ――そう口にしかけた瞬間、悠の言葉は別の轟音にてかき消されてしまった。



 同時に馬鹿げた強風が二人を襲い、万ものゴブリンを凌駕するほどの恐怖が二人を襲う。



「ワ、ワイバーン……」



「ワイバーンだと?そんな化け物までいるのかよ、この世界は!」



「ゲゲ、ようやく見つけタ!逃がさんぞ、侵入者!」



 リィンがワイバーンと呼んだ竜はその背にゴブリンを乗せ、悠達の前にその巨大な姿を現した。



 竜というものはリィンにとっても異質に映るらしく、目を見開いたまま直立している。



「ワイバーンなんて貴重なのに、私達を追いかけるためだけに使ったの?」



「貴様ハ忌々しき騎士団の団長代理、リィン=ストレアだと聞いているからなァ。そりゃあ本気だって出すサ。サァ、覚悟シロヨ。貴様達にはチリすら残さず消えてもらう――!」



 騎兵ゴブリンの命令でワイバーンは口に炎を溜め、それを二人に向けて高出力で放射した。



 燃え盛る業火はその場の一切合切を焼き切り、緑が映える見平原を見るも無残な焦土へと変える。



 かろうじて躱すことが出来たが、これをまともに喰らえば命はない、とその脅威を思い知らされる。



 悠はまずワイバーンの甲殻の強度を確認するためナイフを実体化し、目標に向けそれを投擲。



 しかし、ワイバーンにとってそれは飛んでくる小石と同じような感覚らしく、避けることすらせずいとも簡単にナイフを弾き返した。

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