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反抗のインベーダー 3

「まぁいいんじゃないか?仏頂面のまま歩いててもつまんねーし。それに、僕の素性を知ってるお前ら相手になら別に雑談もやぶさかじゃない」



「そういえば死神さんの正体を知ってるのは俺たち二人だけか」



「連中からすると、いつの間にか騎士団の敷地内に忍び込んでる変な雌ガキって印象しかないだろうな。つっても、それでいいんだけど」



「あれ結構困ってるんだよー?格好が格好だから、不審者とか魔王軍のスパイとか疑われてること知ってる?」



「知ってるよ。何回かしょっぴかれそうになってるし」



「それなら尚更ちゃんとしようよ!というか死神さんって服とか買わないの?せっかく素材はいいのに勿体無いよ」



「僕は一応旅人だぞ?すぐボロボロになんのに、んなしょっちゅう服なんか買ってられるかよ」



「でも今は旅してないじゃん」



「……元の世界に戻ったらまた旅するんだよ」



「いつになるかわからないんでしょ?それなら服くらい買っておきなよ」



「……わかったよ、正直に言うよ。ぶっちゃけ、悠に会うまでこの世界の言葉がわからなかったから買うに買えなかったんだよ。なにか買うつもりもなかったけど」



「そういえば悠くんも最初言葉通じなかったもんね。なんか言葉直してくれる機械?で言葉通じてるんだっけ」



「だな。原理は俺もよく知らないけど翻訳出来るらしい」



「ふぅん。便利なものもあるんだねぇ。じゃあ、それがあるならもう買い物も出来るね。帰ったら一緒に服買いに行こうね」



「はぁ?めんどくせぇ。つーか金も持ってねーし」

「まぁた嘘つきなよー。それなら今までの生活どうしてたのさ」



「俺も気になるな。屋根裏で不法滞在し始めるまでどこで住んでたんだ?」



 その質問を受けた死神はぎくりと肩を強張らせ、視線を泳がせた。



 死神が普段見せないような、まさにうろたえたようなレアな表情を見せたことによって二人の興味は更に加速し、ずいと死神に詰め寄った。



 近い、と一蹴されデコピンでまた距離を離されてしまったが。



 しかしそれでも二人は更に詰め寄り、答えを聞くまで逃さないという意思を見せると、案外あっさり折れ、じとりとしたような諦めの瞳で淡々とした声を出した。



「はぁーあ、聞きたくなかったとか後で言うなよ?後悔すんなよ」



「そんなこと言うわけないだろ」



「私たちが聞きたいって言ったんだしね」



「ちっ、だりぃ。えーっとな、まず住んでた場所は主にきったねー橋の下だ。そこでその辺で拾ってきた空き箱とかを組み立てて家にしてた。知り合いにそういうのが得意な奴らがいてな、見よう見まねでやってみても案外いけるもんだな」



 初っ端からホームレス話という前途多難具合に早くも二人は後悔し始めたが、脂が乗ったらしく、口数が途端に多くなって過去のことをべらべらと話す。



「何人か既に住人がいたから最初は気を遣ってちんまり暮らそうと思ってたけど、自作の風呂に入ってた時にあいつら覗いてやがって、ちょっと小突いてやったら逆ギレして襲ってきやがったから全員に出て行ってもらった。そこからはもう僕の城だな。そこを拠点にして、探し物を探してた」



「へ、へぇ。そうなんだ」



 覗きをされていたことに腹を立てている辺り、実は女の子扱いされたいのではないか?と疑問を浮かべたが、それを聞いたら殺される気がしたので腹のなかに留めておく。



「飯は主に魔物を食ってたな」



「ま、魔物⁉︎」



「あぁ。ちょっと街から出や、ゴブリンやらがうようよいるからな。できるだけオオカミとかウサギとかそういうのを狙うようにしてるけど、なかなかいないんだよこれが」



「け、獣ならその辺探したらいるんじゃないの?」



「いないな。なんでか聞いてくれ」



「な、なんでだ?」



「魔物どもが食ってんだよ。あいつら一丁前に食料の調達なんかもしてやがる。だから僕はあいつらを食わざるを得ないわけだ」



「……ほんとに食べてたの?」



「あぁ、勿論。食レポでもしてやろうか?」



「いやぁ、ちょっと遠慮しようかなー、なんて」



「一番食いやすいのはゴブリンだな。オークは筋肉が硬すぎて食えたもんじゃない。ゴブリンも筋肉は多いし骨も多いけど、腹に脂肪がある奴が多いからその辺がまだ食える。ちなみに僕が嫌いな魔物の種類はゴーストなんかの霊体系だ。あいつらはどうやっても食えないからな」



「聞いてないから!そんな猟奇的な話求めてないよ!」



「……だから言ったろ。後悔すんなよって」



「まさかそんなに生々しいというか、惨たらしい生活してると思ってなかったから……」



「僕だってしたくてしてるわけじゃないっての。この趣味の悪りぃ服と一緒だ」



「そう思うなら尚更服買おうよー」



「行ってきなよ死神さん。女子二人で楽しくさ」



「だから女の子扱いしなくていいっつってんだろーが。しばくぞ」



 死神は物覚えの悪い悠の額を小突いてその考えを諌めさせた。



 相変わらずのジト目、その筋の趣味を持つ者に向けてやれば悶絶必至だというほどの冷たく刺々しい瞳。



 ドSかノーマルかで聞けば必ずドSであろう、ノーマルですら眼中にないのであろうその性格に恐怖を隠しきれない。



「……というか、なんでそんなに女の子扱いするの嫌がるんだよ。なにか理由でも?」



「するなって言ってるんじゃない。しなくていいって言ってるんだ。つーか、こんな口悪い奴を女と思い込むなよ」



「えっ、死神さんって男なの?」



「うーん、男ってわけじゃないな」



「……それじゃあ女の子?」



「僕のことを女の子扱いしなくていい」



「……」



 悠とリィンは互いに肩を組み、鬼気迫る形相でひそひそと声を潜めて緊急会議を始めた。



 議題は勿論、死神の言葉の件である。

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