反抗のインベーダー 2
「お待たせ、リィン」
「あ、悠くん。ほんとに早かったね」
「あぁ。それじゃあ行こうか」
「うん!――って、なんで死神さんがいるの?」
「悠から聞いてないのかよ。僕も行くからだよ。幹部退治」
「……ちょっと悠くん?なんで私たちにはついてくるなとか言ってたのに、死神さんは誘うの?」
「ん?お前なに考えてんだ。あんな城に一人で行く気だったのかよ」
リィンからの糾弾は覚悟していたが、まさか野次が死神からも飛んでくると思っていなかった悠は反論する隙を見失った。
「もしかして私のこと信頼してないのー!酷いよー!」
「あーあ、唯一の味方っぽいこいつに言われちゃおしまいだな」
「これにはちゃんとした理由があるから……というか、死神さんなら察してくれよ」
「だから言ったろ。僕はメタ的視点でものを語るけど決してメタ的視点で物が見えてるわけじゃない。察しろって言われても何も察せらんねーな」
「嘘つけ!なんとなくわかってる癖に!」
「えー、全然わかんなーい。あたち馬鹿だから☆」
「こんな時だけ女子ぶるな!」
「うるっせぇなぁ。つーか、僕じゃなくてさっさとこいつに弁明しろよ」
死神は突然機嫌を悪くして親指でリィンを指差した。
「急にキレんなよ……まぁいいや。リィン、これは違うんだ」
「よくそんなフラグが立ちそうなセリフ選べんな」
「ちょっと黙ってて!えーと、死神さんを呼んだのは、別に一緒に戦ってもらおうってわけじゃないんだ」
「それじゃあ、なんで呼んだの?」
「俺と死神さんは、実は協力関係にあってな。デッドノートを捜索してもらう代わりに死神さんの目的のものも探すっていうのを結んでたんだ。で、俺の探し物は見つかったから今度は死神さんの目的のものを、魔王幹部の城で探してみようって話。それだけだ」
「……まぁ、それならいいよ。悠くんは私のこと信頼してる?」
「も、勿論。超信頼してるよ」
信頼はしている。
信頼はしているが、それは『仲間』『友達』としてではなく、リィン団長代理という極めて大まかで、表面的なことばかりで内面を信頼していなかったが。
悠ですらそのことには気がついていない。
自分の心を理解できていない。
悠には、仲間意識というものが欠如していた。
しかし、本人ですら気づかないものをリィンがわかるはずもなく。
リィンは悠のその言葉を信じてしまう。
「……まぁ、いいけど。じゃあ行こっか!」
先ほどまでの疑ぐり具合が嘘だったかのような軽快さでリィンは出発進行を促した。
彼女の楽観的というか、どうでもいいことは深く考えない性格は見習うべきものがあるだろう。
「それで、魔王城はどこにあんだよ。ぱっと見それっぽいのはないけど」
「魔王幹部だよ死神さん」
「そこはどうでもいいんだよ。話の本題はどこにあるかってことだっての」
「そういえば俺も方角しか知らないな。あっちの方だっけ?」
悠は昨夜、自分が無茶な砲撃をした方向を指差して確認をとる。
「そうだね。ここをずーっといけば城が見えてくると思うよ」
「どれくらいかかるんだ?」
「一日もかからないと思うけどなぁ。ほら、魔法消去の魔法を使われた時、それを狙ったかのようなタイミングで来たでしょ?そういう調整が出来るくらいには近いんだ」
「なら今日中に潜入するんじゃなくて、一回野営して休憩してからの方がよさそうか」
「そうだな。無理して突っ込んでそれでやられましたーじゃ冗談にもならねー。それが懸命だ」
「おっけー。んじゃんじゃ、ゆっくりお話でもしながら行こうよ。これから戦うからってずっとピリピリしてたんじゃやりきれないと思わない?ね?」
リィンの提案は最もだった。
談笑で戦闘前に油断するのと気分を安らげるのは同義ではない。
リィンが言っているのは油断しようということではなく、戦いに備えてリラックスしようということ。
少しでも気持ちを和らげようとするその気遣いは、流石騎士団団長代理だというところだった。




