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夜明けのブリーフィング 4

「サドさん、悠くんが壊した魔力障壁はあと何日くらいで新しいのに張り替えられると思う?」



「恐らく、一週間以内には。しかし以前ほどの強固さにまで戻すには相当な時間を要するものかと思われます。とはいえ、潜入するならこの機会を逃さない手はありません」



「よし!じゃ、今すぐ行こう!」



「おいおいちょっと待て代理。行くならもう少し俺たちに指示を与えてからにしてくれ。それに、悠を行かせちまったらこの国の防衛はどうすんだよ。俺たちがこの国を守るっても、さっき俺たちは為すすべもなく蹂躙されかけたんだぞ。その問題は解決してねーぞ」



「あ、そっかぁ。どうしよう、悠くん」



「その辺りは問題ない。あいつらが簡単に攻めてこられないよう、デッドノートをここに置いて行く」



「それは本末転倒だぞ。お前の唯一の強みであるその装備を置いて行くならお前が潜入する意味はない。しかもそれは斎賀悠、お前にしか使えないんじゃないのか?」



「安心しろ。俺が置いて行くのはあくまでデッドノートのガワだけだ。デッドノートの装着には第一段階と第二段階が存在する。一部にだけ装甲を纏うのと、全身を覆うやつだな。本領発揮が出来るのは第二段階だけど、第一段階でも十分戦うことは出来るし、いざとなればすぐに装甲を呼び出すことも出来る。……というかなにより、あれを今持って行っても意味がないんだよ」



「意味ないってどういうことさ」



「さっきの砲撃でエネルギーをほとんど使い切ったからな。今の主装甲はまともに機能してないんだよ。魔法で例えるなら、魔力がすっからかんなん状態なんだ」



「……それはかなりピンチなのでは?その装備を魔王軍に見せつけることによって簡単に攻めてこられないといっても、万が一本当に攻めてきた時に対応出来ない」



「だからこれを渡しておく。はい」



 悠はジキルにデッドノートの予備コントロールパネルを手渡した。



 この世界にあるはずもない、明らかなオーバーテクノロジーの産物を見てその場にいる誰もが目を白黒する。



「これは?」



「それを使えば俺が使ってたキャノンバレルを操作できる。もし本当に攻めてきたらそれを使って迎撃してくれ」



「こんなもので戦えるのか?ただの板切れにしか見えないのだが」



「戦えるんだよ。ここをこうしてこうすると……」



 悠はコントロールパネルをすいすいと操作すると、空中に投影型の操作パネルが現れた。



「うおっ、なんじゃこりゃ!」



「敵が来たらここを押してくれ。そうしたらキャノンバレルから砲撃出来る」



「ほ、本当かね。一度練習しておきたいのだが……」



「分かった。それじゃあ一旦外に出るか。使い方を覚えてくれ」



 悠は会議室の戸を開くと、手招きして全員を外に誘い出した。



 今起こっている奇天烈な状況に全員目を丸くしていたが、悠の姿が遠ざかっていくのを見て遅れてはいけない、と正気に戻って後を追いかけた。



 しばらく歩いて人気が少なく、拓けた場所に到着すると、悠はエアーディスプレイを操作してデッドノートの装甲を具現化させた。



「おお、これが」



「デッドノートは固定砲台として使う。多分、上手くコントロール出来ないと思う」



「……うむ。申し訳ないが、複雑な操作が出来そうにない」



「分かった。とりあえず、ここを押したらキャノンバレルで砲撃出来るから、敵が来たら頼みます」



「うむ。しかし、何故私なのだ?」



「この中ならジキルさんが一番冷静な判断ができそうだから。大砲とか使ったことあるでしょう?感覚がそれと似てるんですよ」



「……光栄だな。よし、任された。



「お願いします。こっちを触ると角度や方向が操作できますので、状況に応じて使ってください。それと、出来るだけ砲撃の数は控えてくれらばありがたいです」



「何故かね?」



「さっきも言いましたけど、今のデッドノートはエネルギーが枯渇した状態なんです。あの砲撃はシャープレイというエネルギーを消費して撃っているものなので、できるだけ節約して撃ってほしいんですよ。本当にピンチならそうも言ってられないけど」



「相分かった。なるべくその要求に応えよう」



 ジキルと話がつけると、悠は次に行動を移す。



「さて、次だ。デッドノートを置いていくなら俺が潜入する意味がないって話だったか」



「そうだ。それに対する解決策はどうする?」



「問題ないよ。デッドノートをフル装備よりは流石に格が落ちるけど……」



 悠はアルトの発言に対して、一切顔色を変えることなく彼の前を横切り、インパクションとグリムフィフトを接続。



 一部のみ装甲を身に纏い、未だエネルギー不足を示す赤色のシャープレイを走らせた装着待機状態へと移行すると、強化された筋力を用いてキャノンバレルのグリップを引き抜いた。



 グリップの先にはほんのりと淡く光る炉心棒。



「これは?」



「シャープレイでコーティングされた逆手持ちの剣だよ。トンファーとも言えるかもしれい。通称リザーブ・エッジ。もしもの時の緊急装備だ。キャノンバレルや他のバレルと比べると威力は格段に下がるとはいえ」



 悠はすぐ近くで生えている木に、シャープレイを纏い淡く光る刀身を軽くぶつけた。



 すると木は酷く灼け爛れ、一瞬にして幹を折られ倒木する。



 触れただけで二つにへし折られたように見えるほどの軽々しさから、とんでもない威力を秘めていることが見て取れた。



「……とはいえ、これくらいは出来る。これでいいか?」



「……なら、問題ない」



 アルトを納得させると悠は装甲を解除し、インパクションを操作して装備登録を行う。



 デッドノートの主装甲を解除し、リザーブ・エッジを新たに登録した。



「さて、これで準備は完了だ。まだ不安はある?」



「ないよー。ないけど、ここまでされるとちょっと自信なくしちゃうなぁ」



 ナギは少しふてくされたようにそう言う。



「俺の国では科学技術が進路してる代わりに魔法がなかったり身体能力が著しく劣るからイーブンだよ。俺たちは身体能力が低いから道具で補うしかないけど、ナギ達はそんなまどろっこしい真似をしなくてもいいってことなんだから」



「そうだぞナギ。適材適所ってやつだ」



 悠とガルダからそう言われ、まだ多少納得がいってなさそうにしながらもナギは小さく頷いた。



 特に疑問や不満点がなくなった面々は互いに顔を見合わさる。



「よし、それじゃあ今度こそ。魔王軍幹部、ヴァドの城への突入作戦を開始します!いくぞー!」



「えっ、ここでやるの?というか、もう行くのか?」



「当たり前だよ!こういうのは日和ったら負けだからね。よーしやるぞー!えいえいおー!」



「え、えいえいおー!」



「オー!」



 リィンの無茶振りめいたかけ声に、全員が遅れつつも鬨の声をあげた。

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