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デッドノート リスタート 4

「ギアアアアアアアアアアアア!」



 司令ゴブリンは醜い断末魔の声をあげ、これまでの死体とは違い跡形すら残らずこの世から消滅した。



 その高火力は抉れた地面が証明している。



 がちゃり、と重々しい金属音を立てて体勢を直し、司令官を失ったゴブリン達をマスクの下から覗き込む。



 彼らにはもう戦意なく、狼狽え、恐怖し、そして逃走を図ろうとしていた。



 既に戦場から背を向けているものが数名、無駄な抵抗を画策しているものが数名、大半は現実が信じられずぽかんと間抜けに口を開けてただデッドノート各部から漏れるシャープレイの光を前にして立ち尽くしていた。



『お前らの失敗は三つだ。一つはこの城を陥とすのにもっと人員を裂くべきだった。二つ目は欲をかいてキャノンバレルを使おうなんて考えずにどこかへ隠すべきだった。最後は――俺の世界を狙ったのが間違いだったなぁ、ええ?』



 悠はキャノンの範囲と威力を最大まで上昇させ、もうエネルギー残量など一切確認せず持てるエネルギーを全てキャノンバレルへと集約させた。



 そして、スピーカーの音量をも極大にまで上げ、遠くにいるリィンにとある一つのことを確認した。



『リィン、一番近い敵の城はどこだ?』



「うー、音大きいよ!」



 いつの間にかリィン達は近くに寄ってきていたようで、そのあまりの音量に耳を塞いでいた。



『ご、ごめん。それで、どうなんだ』



「なんでそんなこと聞くの?」



『そりゃ、攻撃するからだよ』



「そ、そんなの出来るわけないよ!」



『出来る。今から俺は全力で攻撃するから、それを見てこれからの作戦に組み込んでくれ』



「め、めちゃくちゃだよぉ……。えーっと……どうせやるなら、もぬけの殻の魔王の城より、幹部の城を狙って欲しいかな、なんて。あっちの方向にあるの」



 リィンは疑ぐり半分ながらもおおよその位置を指差しで示した。



『わかった』



「ほ、本気?」



 正気を疑うかのような声色と、不安そうな目つきで自身を見るリィンに対して、悠は真剣そのものの表情でリィンと向き合った。



 顔は見せないものの、一度たりとも揺るぐことなくリィンを見つめ続け自分が本気だということを見せた。



 そんな悠にさすがにおののいたのか、リィンはよろよろと数歩下がってその場で硬直してしまった。



 リィンの了承も得られたところで、悠はメインカメラの望遠機能を駆使して、遠くの城を発見。



 気兼ねなく砲撃することが出来る、と心を躍らせ、地面にアンカーを突き刺し、足裏のスパイクを作動させて反動に備えた。



『祝砲とでも思ってくれよ。なぁ、魔王さんよ』



 悠は装甲と一体化しているインパクションに、通常のカートリッジとは別のカートリッジを装填した。



 これは通常時のデッドノートにかかっている制限を取り払うもので、エネルギー効率を無視した攻撃を行う際に使う『鍵』である。



 エネルギー残量を無視した攻撃を行うため、勿論発動後のエネルギータンクはほとんど空と言っていい状況になるが、今の昂った悠にはそんなことなど考える冷静な頭などなかった。



『セーフティ解除。ファイナルオペレーション実行。レイバーストキャノン』



 限界突破の解号という、普段あまり聞くことのないシステム音声に興奮を覚えながら、重心を低く落としてキャノンバレルを構えた。



 二丁の砲身の先にいくつもの光輪が重なり、砲撃まで秒読みとなる。



『みんな、気をつけろよ……』



 悠は警戒のしようのない警告をその場の全員に行い、散り散りになって逃げていく魔物達全員にロックを定めた。



 そしてようやく、その時は来る。



 キャノンバレルの引き金を引くと、細分化されたキャノンが光の速さで射出された。



 ――その刹那、辺りは轟音を伴い激しい青に飲み込まれた。



 その場でなにが起きているかわかっているのは悠のみ。



 ロックが多数あるため、細分化された光線は魔物達を一体一体消し炭に変えていく。



 そしてそれらを消失させたあと、キャノンは再び一つのエネルギーと化し、絶大な破壊力を伴って魔王幹部の城へ向けて飛んでいく。



 やがてレイバーストは城に着弾する寸前で、何かに阻まれ破竹の勢いを止めてしまった。



『これは……』



「ど、どうしたの?」



 キャノンによる砲撃が続く最中、大声を張り上げてリィンが様子のおかしい悠に話しかけた。



『城にはレイバーストが届いた。でも、城が破壊できない……!』



「多分魔力障壁だよ!私たちの国にあったやつと同じかそれ以上の!」



『ちっ、面倒な……っ!』



 言いつつ悠は砲撃を続け、更にキャノンバレルに内蔵されてある実弾をも射出し、全てのリソースを攻撃に集中させた。



 遠くに魔法陣が見える。



 魔力障壁が絶えずデッドノートの攻撃を耐え続け『壁』を出現させ続けている証拠だった。



 いくら魔法と言えども、この世に無限のものなどない。全てのものには限りがあるのだ。



 その理屈でいくと、あの魔力障壁にもいつか限界がくるのであろうが、その兆しは見られない。



『ぐううううう……っ!まだ、まだいけるだろ……っ!』



 キャノンバレルの砲撃は小規模砲撃でもビルを崩壊させるほどの威力がある。



 それを鎧一つで支える悠には、勿論多大なる重圧がかかることになる。



 悠は体がバラバラになりそうな痛みを耐え、無理な砲撃を続けた。



『シャープレイ……オーバーロード!』



 更に悠はシャープレイをオーバーロードさせ、砲撃の威力を高めた。



 もとより暴走気味だったシャープレイを更に暴走させることで破壊力を増す作戦だが、それは同時にエネルギー残量を急速に減らす諸刃の剣でもあった。



 これは悠にとっても賭けである。



 鮮やかな青色だった、全身を駆けるシャープレイはいつしかエネルギー不足を示す赤色へと変貌しており、まもなくデッドノートが稼動を停止することを示していた。



 その代わり、全てを犠牲にした分その威力は凄まじく。



 ――無敵かと思われた魔王軍幹部城の魔力障壁はガラスが割れるような甲高い破砕音を立て瓦解した。



 しかし同時にデッドノートのエネルギーも底を尽き、魔力障壁を破壊したのみで城を攻撃するには至らなかった。



 シャープレイの色は赤から戻ることはなく、寧ろ今にも消えかかるほど頼りなく点滅していた。



 更に装甲のあちらこちらがショートしており、今すぐにでも冷却が必要なほど酷使されていた。



 悠はすぐさまデッドノートの装着を解除し、デッドノートの装甲をインパクションの中にエネルギーとして収納した。



「ぐっ……はぁ」



 ようやくその圧力から解放された悠は、瓦礫の上で力なく膝をついた。

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