デッドノート リスタート 3
『⁉︎』
悠は引き返していた足を止め、体は考えるよりも早くゴーレムへと向かっていた。
幸いなことに、目視する限り持ち手とコネクタが露出しているお陰で装着に困ることがない。
これさえあれば。
勝利の二文字が頭に浮かんだ悠は、一度砦に向かう魔物達に背を向け、スラスターを全開で作動。
ゴーレムの攻撃を振り切り、その巨躯に張り付き、そのまま無理矢理キャノンバレルとの接続を開始した。
バレルとの接続は然程時間がかからない。
『全行程完了。キャノンバレル、アクティブ』
やがて接続完了を示すシステムボイスが作動し、巨大なキャノン砲をその両手に宿した。
マスクの下の表情が、ぐっと明るくなる。
『まずは――お前だ』
悠は稼動確認も兼ね、最初に発射口が癒着したままのゴーレムに向け、シャープレイを凝縮した高圧力砲撃を無理に敢行。
数秒のチャージ後、キャノンバレルから耳を劈く轟音と青い輝き。その刹那ゴーレムは内部から爆発し、蒼白い爆炎と共にこの世界から消失した。
これまでになかったその破滅的な攻撃力にを前にしてゴブリン達は進軍を一時中断し、再び殲滅対象へと移し替えた。
彼らの本能は告げていた。
目の前に存在するこの『化物』を倒さなければ、自分たちは、先ほど自分たちが嘲笑うように駆逐しようとしていた者たちの未来と同じ運命を辿ることになる、と。
豪炎、砂塵、紫煙ならぬ蒼煙を掻き分け、中から悪魔のような双眸を鋭く光らせ姿を現わす。
「ギ――こ、殺せ!全員だ。全員で奴を殺スんだ!」
『……あのさぁ』
悠は、真っ先に飛びかかってきた、恐らく戦闘能力に優れるのであろう指揮官らしきゴブリンの攻撃を躱すことも受け止めることもせず、装甲を殴らせ『効かない』ということをアピールした上で冷徹に言い放った。
『お前らの汚い声、ノイズが多くて聞き取りにくいんだよ』
外部スピーカーを通して外界へ伝えるその声は、生の声ではなくても分かるほどの殺意を内包していた。
それに怖気付き、肉弾戦が通用しないならば、とでも考えたのだろうか。
ゴブリンは全身の毛を逆立て一気に距離を取ると、遠距離からの攻撃、すなわち魔法を放とうとなにやらモゴモゴと唱え始めた。
しかしそれは先ほど見たものとは比べものにならないほど小さく、悠にとって脅威ですら、咄嗟に離れた距離も脅威ですらなかった。
悠は即座に跳躍、魔法を放とうとしているゴブリンの腕を鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつける。
「コ、コノ……化物がァ!」
『……そうか、俺はまだ化け物なのか』
マスクの下で憂いを帯びた悲しげな目をする。
だが、コンマ数秒後には先ほどまでの戦闘意欲に塗れたものに戻っていた。
悠は逃さないよう司令ゴブリンの肩を踏み、威力を最小限にまで絞る。
『じゃあな、化け物』
冷徹に別れの言葉を言い放つと、『それ』を無力なゴブリンへ向けて砲撃した。




