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異能パニッシュメント 2

 地を裂くような強烈な破砕音の後、心音を連想させるような一定のペースを保つ嫌な音が一定間隔で王国内を走る。



 平穏は終わりを告げたようだった。



 リィンは瞬時にプライベートなモードから警戒モードへ切り替え、目つきを鋭くして悠に言った。



「……悠君は騎士団本部へ向かって。私が様子を見てくる。それと、いつでも戦える準備をしておいて」



「だ、大丈夫か?」



「安心して、私はこれでも団長代理だから」



「気をつけろよ」



「もちろん。それじゃあ、また明日の朝ごはんを食べる為に」



 リィンはそれだけ言い残すと、すぐさま自分の部屋に戻り、一瞬で正装に着替えて窓から飛び出していった。



 その間わずか数十秒。訓練されていることは自明の理だった。



「なんだなんだ……。とりあえず俺も……」



 悠も動きやすい服に着替え、ナイフホルダーを腰にさげて騎士団本部へ向けて走り出した。



 その時目に飛び込んできたのは、城下町を囲む高い壁やモノリスの外からうっすらと、怪しく輝く謎の光。



 走りながら考える。



 悠はその光を前に見たことがあった。



 この世界の人間なら誰もがその身に秘めている、卓越した者が扱えばそれこそ悠など瞬時に細切れになるような、そんなもの。



 そう、それは魔法。



 外の輝きは魔法が放つ煌めきにそっくりだったのだ。



 その輝きはゆっくりとだが、次第に光度を増しているようだった。



「なんだよあれ……っ!」



 最早嫌な予感しかしなかった。



 何故なら、その光の中には一際強く輝くものが数カ所あったのだが、その一際強い光の一つは悠が気にしていた、大量の死体が遺棄されていた場所だったのだから。



 リィンは、自分の気がつかなかったことに視点がいった悠のことを貴重な人材だと称したが、それならば今回ばかりは悠の言うことを妄言、気のせいとせず信頼すべきだった。



 そして悠が騎士団本部に到着する頃には、その光はもう破裂寸前とでも言わんばかりの光度にまで進んでおり、いつ魔法が発動するのか、と気が気ではなかった。



 胸の不安を押し殺し本部の中へ入ると、既に兵は大勢集まっており、各々戦闘準備を行なっていた。



 そのうち、悠の存在に気がついたガルダが早足で歩み寄ってくる。



「悠!緊急事態だ!」



「ど、どうなってるんだこれは。外のあれは魔法か?」



「あぁ。……魔力を感知できないお前はわからないかもしれないが、ありゃあとんでもない魔力だ。恐らく、魔力に気圧されて立っていられなくなる奴が現れるほどのな」



「リィンが様子を見に行ったけど、大丈夫なのか?」



「安心しろ。団長代理はまさに一騎当千。そう簡単にくたばるような……」



 ガルダが悠を安心させるような言葉を吐こうとした瞬間、その言葉を遮って受付嬢の魔法による一斉伝達が耳に届く。



『団長代理がお戻りになられました!状況は……』



『私が話す。みんなよく聞いて。みんなも見たと思う光、あれは巨大な魔法陣。この国を取り囲むように展開されてるわ。魔法を使える者は魔法陣の消滅に尽力して。魔法陣に浮かぶ文言が見たことも聞いたこともないような代物よ。発動されたら厄介だわ。それと、南西方向から魔物の軍勢が進行中。ゴブリン、オーク、トロールなどの歩兵がメイン。とりあえず一番隊からローテを組んで……っ⁉︎』



 ――リィンの言葉を待つ前に、どうやら卵は孵化してしまったようだった。



 どくん、と地の底から呻くような心音の後、この国は外からの光にまばゆく包まれた。



「うおっ……!」



「な、なんだ!」



 兵達の狼狽える声しか聞こえず、目すら開けられない状況が数秒続いた後、発光が収まった頃に目を開くと、外の光はいつの間にか一切消え失せていた。



「終わった……のか?」



 悠は首をせわしなく四方八方に向け、周囲の状況を確認した。



「兵長、どうなってるんだ?」



「ゆ、悠……お前は無事なのか?」



「無事?いや、なんともないけど……」



「そ、そうか……。|無事なのは


 《・・・・・》お前だけか(・・・・・)



「……は?」



 悠は言っている意味がわからず、つい間抜けな声で聞き返した。



「……力が……入らねぇ……。なんだか、体のエネルギー源を全部持っていかれたような……そんな感覚だ」



「ど、どういうことなんだよ」



「わからねぇ……が、あの魔法のせいだってことは間違いねぇな」



 ガルダはそんな状態でも気丈に振る舞い、そして周囲に発破をかける。



「おい、お前ら。立て!立ち上がれ!なんか力が入らないのはわかる。俺もそうだ。まるで力の源を根こそぎ奪われたような、そんな感覚なんだろ。でも、俺たちには鍛えてきた筋肉、体力があるじゃねぇか!立ち上がれ!」



「おおおおおおおおお!」



 その力が入らない状態を体験していない悠にはそれがどれほど辛いことか測りかねるが、彼らの調子を見る限り少なくとも楽ではないことだけは確かだった。



 しかし、ガルダの発破で気合いが入った兵達を見て悠は一安心し、次の思考をする。



 そういえば、リィンは無事なのか。



 悠はハッとして、リィンの姿をその場で探し求めた。



 伝令が途中で切断されてしまったため、彼女の安否が判断できない。



 ――ここで悠は、一つのことにたどり着いた。



「なんで……魔法が切断されたんだ?」



 魔法の光で国が包まれた瞬間、通信魔法は途切れ、リィンの声は聞こえなくなった。



 魔法の切断。



 力の源を奪い取られたような感覚。



 この状況を見る限り、先の魔法は攻撃魔法ではない。



 となると、あの魔法はこの国の者にバッドステータスを与えるものとなるのだろう。



 あの魔法の効果。



 それはまさか――。

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