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騎士団のイグザム 2

「……そういえば、この国の名前はなんて言うんだ?」



 ようやく捻り出せた疑問はそれだった。



「教えてなかった?教えてなかったのね。この国の名前はゼルトルン王国。初代ゼルトルン王が設立したのがこの国よ。今の王はアーベル=ゼルトルン三世」



「ゼルトルン三世……か。この国は王制なんだな」



「悠君の国は違うの?」



「俺の……世界じゃ」



 悠の世界を説明する際、国という言葉を使うと会話が不自然になってしまうため、声をひそめてリィンの耳元で囁いた。



「俺の世界じゃ、王制の国なんて滅多にない」



「そうなの?それじゃあどうして国を纏めてるの?」



「民主制だよ。投票で国民から選ばれた奴が国のトップになって方針を決めて、その方針に賛成か反対かも投票で決めるまどろっこしい政策だよ」



「投票で?まぁ、それでも上の独断専行がないならいいんじゃないかしら」



「そこが利点だな。その代わり、なにからなにまで行動が遅いのが難点だけど」



 と、そこまでペラペラ話したところで、話が逸れていることに気がつき、軌道修正を図る。



 元々、聞きたいことを聞くという趣旨である。



「えーっと、騎士団の名前は?そういう情報もまったく頭に入ってない」



「騎士団は騎士団よ。正式名称は王国附属騎士団。騎士のなり方は昨日言った通り。騎士団といっても、その在り方は軍隊に近いの。覚えておいてね」



「ああ、わかった」



「それと、騎士団は序列があるの。入団手続きが終わったら、その試験で戦闘になるから気をつけて。戦うための装備は全部持ってきた?」



「まぁ。つっても、これしかないけどな」



 悠は射出装置を手に取り、リィンに見せつけた。



 正直、あれだけの身体能力を持つ者達に混じって戦うというのに装備がこれだけでは心許なくて仕方ないが、ないよりはマシというかこれすらないと何もできない。



 木剣を手に取ったところでにわか仕込みの戦術では、曲がりなりにも兵として雇われている者達を下すことなど敵わないだろう。



「頑張ってね。悠君は一応私と契約関係にあるから、私の権限でいくらでも守ってあげられるけど、それじゃ実力に伴ってないって文句を言う人もいると思う。そうなると辛いのは悠君だから、出来る限り勝ってほしいの」



「……出来る限りやってみる」



「ちょっと不公平だけど、情報を教えるわ。序列があるって言ったけど、序列は階層形式になってるの。最低クラスが兵属ポーン、最高クラスが騎士。その中で更に数字が決まっていく感じね。まず初戦は絶対に勝って。もし負けたら、入団が認められない場合があるの。相手は序列も番号も一番下の人と戦ってもらう。それに勝ったら次、兵属の最高位の人と。それに勝ったら次、隊属メンバーの最高位と。負けたら隊属の中で順位が決まって、勝ったら更に次へ……という方法で進んでいくの」



「連戦か?」



「連戦よ。そもそも、通常は筆記試験と戦闘試験を受けて入隊するのを免除してるんだから、仕方ないの。……悠君、筆記試験は駄目でしょう?」



「……そうだな。この世界の常識が分からないからな」



 特別扱いされるのは嫌だったが、特別扱いされないと兵隊になることすら怪しい自分の無力さを嘆いた。



「ということで、連戦になるの。厳しいけど頑張って。序列と順位が上がれば、優待もあるから」



 優待されても、さっさと事を片付けたい悠はこの世界に長く留まる気はないのだが、と心の中でそう思ったが、口にはしない。



「まぁ頑張ってみるよ」



 自分だって、様々な死線をかいくぐってきた実績があるんだ、と悠は自分を鼓舞した。



「それじゃあ、入りましょ」



 丁度話も終わったところで、昨日いた訓練所へ到着し、重い扉を開いて二人はその中へ入っていく。



 昨日と同じく、屈強な男達が中で必死に鍛錬している。



 中には女子供も混じっており、こちらの世界のイメージとはかなり異なっていることが目に見えてわかる。



 恐らく魔法が使えるが故に、戦闘員として役に立てているのだろう。



 少年兵が避けられるこちらの世界とは大違いである。



 しかし彼女たち、あるいは彼らの表情はいきいきとしており、それが強制されているものではないのだろうということも同時に伝わってくる。



 昨日いた建物とは違う建物へ向けてリィンは歩を進め、その横を悠も続いて歩き、やがて案外広い訓練所を抜けて騎士団の本部らしき建物へと入っていく。



 無骨な印象が持たれる訓練所とは打って変わり、華やかな様相に様変わりした建物に目を剥いた。



「すごいところだな」



「でしょう。私も好きなの。騎士団の本部は訓練所より、こっちがメインね」



 絢爛豪華、とはいかないが、白を基調とした屋内のどこを見ても埃一つ見当たらず、そこにいるだけで身が引き締まる思いだった。



 かつかつ、とリィンはブーツの踵を鳴らして静かな本部を進んでいく。



 そしてなにやら受付らしいところにたどり着き、そこにいる嬢に話しかけた。

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