街へのファーストコンタクト 1
「まず君にはここでの生活に慣れてもらうかな。あの映像を見たところ、君達の世界の生活水準は相当高そうだから、少し劣るところがあるかもしれないけど」
リィンは自分たちの生活を謙虚に振る舞った。
しかし、悠からすれば、これほどまでに暖かな街を見たことがなかったため、それを否定する。
「いや、俺はこの街好きだよ。俺の世界より、人がみんな楽しそうだ」
「そう?私からすれば普通だけど……」
それが普通の世界で育ったのだからそう感じるのだ。
悠はその彼女の豊かな感性を羨ましく思った。
「住むところは用意するから。私の住んでるところに空き部屋があったから、そこに住んで」
「分かった」
リィンはそのまま自分が住む寝床へ案内し、管理人と話をつける。
管理人は人の良さそうな大男で、にこにことほがらかな笑顔を常に見せていた。
「管理人さん。こんにちは」
「おう、リィンちゃんか。ん?こっちの兄ちゃんは?」
「斎賀悠君です。住むところがないらしいので、住まわせてあげたいんですけど」
「へぇ、旅人かなにかかい?あんまり聞かない名前の響きだしな。よし、いいだろう。住め住め」
こんなに住処が決まると思っていなかった悠はあまりの簡単さに驚いた。
元の世界ならこうはいくまい。
「ただ、ちゃんと家賃は払ってもらうぜ?仕事がないならしばらくは待ってやるけどよ……」
「大丈夫です。彼は騎士団に入団するそうですから」
「おお、そうなのか!なら安心だな!騎士団に入るってことは、兄ちゃん強いのか?」
「いや……まぁぼちぼちってとこです」
自分が生身だと、そこまで強い方ではないということなど口が裂けても言えなかった。
「ははは!まぁとりあえず行ってこい!美味い飯用意しといてやるぜ!」
「ありがとうごさいます」
なんというか、何故戦士ではないのかというほどの豪快さの管理人だが、彼にもなにか理由はあるのだろう。
それを掘り返して尋ねることができる程深い仲ではない悠は、疑問に思うものの、思うだけにすることにした。
リィンは管理人に頭を下げ、その場を後にする。
悠も続けて退出、彼女の後を金魚の糞のようについて行った。
「で、これからどうするんだ?」
「現時点の君の戦闘能力を測る。いくら本領発揮出来ない状況だとしても、装備が見つかるまで君は生身で戦わなければいけないでしょ。装備が見つかったらまた測り直してあげるから、それまでの君に見合った力量の役職につけるの」
「それはどうやって測るんだ?」
「私と勝負してもらうの。全力でかかってきて。私が君の戦闘能力を計測して、しかるべき待遇を決める」
「それはリィンの一存で決めていいことなのか?」
「……あら、言ってなかった?私は騎士団の団長代理よ。特殊な人事に関しては私に一任されてるの」
「……え?団長……代理?」
悠はそのあまりに偉そうな肩書きに驚き、一歩後ずさった。
彼女は控えめにみても悠と同い年か年下にしか見えず、騎士だといっても騎士見習いくらいにしか思っていなかったのだ。
「……リィンは何歳なんだ?」
現在悠は十六歳、今年で十七である。
「十五。もしかして、団長代理だなんて立場に見えないと思った?」
「いや、そんなことは」
「いいよ、嘘つかなくて。自分でも見た目とのギャップがすごいと思ってるから。でも、実力は本物のはずよ」
それはいくつもの死線を越えてきた悠には分かった。
彼女の立ち振る舞い、身のこなし、強さを感じる視線は全て強者の放つそれで、ただの悠の一つ下の女の子ごときが醸し出せるものではなかった。
「強いだろうとは思ってたけど、まさかそんな大層な立場だとはな」
「あくまで便宜上よ。指揮能力は高くないし、私より強い人も沢山いる。けど団長直々の指名でね、断るわけにはいかなかったの。……まぁ、そのおかげで君を拾うことが出来たから、やり損ではないかなって感じね」
立場のお陰で自分と出会えたと暗に伝えてきたリィンを見ると、少しどきりとしてしまった。
本人にその気は無いだろうが。
控えめに言って美少女な彼女と出会えたことは、悠にとっても幸運なことだった。




