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人格喪失者、それは記憶喪失を望んだ者  作者: 明進
第三章 強欲、それは全てを奪う暴力の化身
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記憶四十二―覚悟、それは守る為に―

「おい、おい、おい。無駄な足掻きをするんじゃねぇよ。そんな風に動かれちまうと、心臓を突き刺せないじゃねぇか!」

「そんな、嘘でしょ、イラ……いやああああああああああっ!」


 視界の奥で悪意に塗れ異形の姿となっている男が手に持った大剣が、私の誰よりも大切な仲間を貫いている姿が瞳に映った。

 私はその光景が嘘だと思いたかった。これが悪夢であるなら、早く覚めて欲しいとさえ思った。けれど頬に靡く風が、喉から上がった悲痛な叫び声による熱が、これが現実なのだと嫌と言う程に思い知らせてくる。

 それと同時に冒険者としての、戦いなれた剣士としての冷静な私が、一刻も早くイラの下へと駆け寄って、魔法で回復をさせないと、と行動方針を指し示す。

 そうだ。今ならまだ治癒魔法が間に合うかも知れない。早くアワーに捕まっているイラを取り戻さないと。

 しかしどれだけ強くそう思っても、目の前には私を同じように捉えようとするヌルヌルとした赤い触手が四本も襲いかかって来る。

 避ける分には問題がないその触手は、しかし純白の剣(サンクチュアリ)で斬り落とそうとしてもヌルヌルとした表面によって刀身が滑ってしまう為に、上手く斬り落とす事が出来ないで中途半端な切り傷を付けるのが精一杯だった。

 けれど手遅れになってしまう前に、イラに治癒魔法をかけないと。焦りが募るばかりだけれど、早くしないとイラが死んでしまう。


「こんのぉ! 邪魔をしないで!」


 触手の猛攻を避けながら純白の剣(サンクチュアリ)を振り回しながら、私は悪態を付いた。恐らく時間さえあれば触手を全て斬り落とす事は出来るだろうけど、その頃にはイラの状態が手遅れになってしまうのは明白だった。

 だけどどれだけ感情的になれども、今すぐに触手を斬り落とす事も、触手から逃げ回りながらイラの下へと駆け寄る事も、私だけでは出来そうにはなかった。



「っ……はぁ、はぁ……俺は一体――」


 朦朧とする意識の中で痛みだけが鮮烈に走り、意識が徐々に覚醒していく事を認識出来た。次いで痛みを癒すかのように暖かい光を感じながら、ゆっくりと視界を開けると目の前にはフェアリの顔があった。


「ファクト! 良かった、意識が戻ったんだね!」

「フェアリ……? そうだ俺は……」


 瞳に涙を浮かべ、今にもそれが頬を伝って零れ落ちそうな程に不安気な表情を浮かべたフェアリの一言で俺の意識は完全に覚醒した。

 それと同時に俺が意識を手放す前に何があったのかを完全に思い出した。

 魔人(ヴァンディム)の仇である【強欲のアワー】との戦いで追い詰められ、俺はフェアリを庇って――だが、俺達が生きていると言う事はあの状況から脱する事が出来たのだろうか、それとも――

 そこまで意識を回した所で剣が何かに突き刺さったかの様な音と、それに続いて男の高笑いと少女の悲鳴声が聞こえた。

 その声がアワーとツァーイのものだと言う事に気付くまでに時間はかからなかった。


「ぐっ……一体何が……」

「あっちの方だよ。――っ! イラさん!」

「なっ……イラ!」


 一体何が起きているのかと、まだ完全に癒えていない身体の上半身を起こそうとして感じた痛みを無視しながら、フェアリに支えられて彼女が示した方角へと視線を向けた。

 そこにいたのは四本の赤い触手に捕らえられたイラがアワーに大剣で貫かれている姿。そこから少し離れた位置で、同じく四本の赤い触手に足止めをされているツァーイの姿だった。

 ツァーイが悲痛な表情を浮かべながらもイラの方へと近づこうとしているが、どうやら触手が邪魔でイラに近づく事が出来ないでいるようだ。

 そして合計八本の赤い触手の大元を辿ると、そこにいたのは俺達との戦闘で使っていたのとは異なる魔物化を使用しているアワーの姿だ。確認出来る範囲では、どうやら触手は八本で全てのようだが、それとは別に一本の短針を備えているようだ。


「くそっ……俺のせいだ! 俺が復讐心に囚われたせいで、イラが……! イラを助けないと!」

「駄目だよ、ファクト!」


 その光景を視認すると同時に俺は立ち上がって二人の加勢に向かおうとしたが、身体の半分を支えてくれているフェアリに取り押さえられてしまう。


「まだ完全に回復も出来ていないんだから、今の状態だと魔物化をコントロールする所か剣を振るうのだって長くは――」

「そんな事は分かっている! だけどこのままだと、イラが死んじゃうだろ!」


 フェアリが俺を心配してくれているのは分かっている。実際の所、彼女の言う通りに自分の身体が限界ギリギリの所で動いているのも理解している。

 それでもそんなフェアリの拘束から少しだけ力任せに抜け出して、すぐ隣で倒れていた漆黒の大剣(ダークネス)を手に取って杖代わりのように地面へと突き刺しながら立ち上がって俺はフェアリに告げた。



「俺ならもう大丈夫だ。フェアリが回復してくれたからな。……だから、今はイラを助ける事を優先しないと。」

「ファクト……。はぁ……もう、分かったよ! でも満足に戦える状態じゃあないんだから、あくまでツァーイの援護に専念してよね! それと危なくなったら後ろで休んでいてよ!」

「ああ、分かっている。」


 そう言って普段とは異なって足取りもおぼつかない状態で二人の下へと向かって行くファクトの姿を見ながら私は内心で諦めたかのように溜息を吐いた後に小さな声で呟いた。


「絶対に分かってないよね……。」


 だけどこうなってしまった以上は仕方がない。事実として今のイラさんやツァーイを放置して逃げる事なんて出来ない。

 私達は雷毒の大蛇(カレントバジリスク)の一件で彼らに大きな恩がある。それに今回の戦闘でも二人が駆けつけてくれなかったら、今頃私達はアワーの手によって殺されていただろう。

 無論一番大切なのはファクトの存在だけど、だからと言って二人への恩を仇で返す事など決して出来る訳がない。

 ファクトへの心配を胸の奥にしまい込みながら、何とか思考を切り替えて白銀の弓(プラティヌアルク)と白銀(プラティヌ)の矢(フレッシュ)を手にとって私はファクトの後を追いながら、捕まったイラさんを助けようとするツァーイの下へと向かう事にした。



 四本の赤い触手を相手にするだけで精一杯で、イラを助けられないままに時間が一秒、また一秒と過ぎ去っていく。

 どれだけの時間が過ぎ去ったのかを考える暇もないけれど、過ぎ去って行く時の流れがまるで砂時計が零れ落ちるかのようにイラの命を奪おうとしている感覚に思え、胸の奥で「早くイラを助けないと!」と言う焦燥感へと集約されて行く。

 けれど剣では簡単に斬り落とせず、魔法も通用しない――仮に効いたとしても今の状況ではイラを巻き添えにしてしまうような範囲の広い魔法は使えない――相手に私は成す術もなかった。


「このままじゃイラが……」

「はあっ!」


 どうすれば状況を好転出来るのかを必死に考えながら、純白の剣(サンクチュアリ)で赤い触手の一本を退けていると、倒れていた筈のファクトが漆黒の大剣(ダークネス)を振るいながら飛び込んで来た。


「ファクト!? 動いて大丈夫なの!?」

「ああ。それよりもこの触手は俺とフェアリで何とかする! だからツァーイはイラを!」


 大きな負傷をして後方で回復に専念していた筈のファクトの乱入に驚きながらも、その豪快な一撃は私が迎撃したものとは別の触手を退ける事に成功していた。

 それに対してファクトは顔を四本の赤い触手の方へと向けたままに、叫ぶような大声でイラを助けるようにと告げた。


「……うん!」


 この短時間でファクトの傷が完治する事がないだろうと言う事は、光属性の魔法――治癒魔法――を扱える私には分かっていた。けれどイラが死んでしまうかも知れないと、その不安で頭が一杯になっている私は、ファクトの言葉に頷く事しか出来なかった。

 私はファクトの言葉に了解の意を示すと、先程までとは打って異なり、四本の赤い触手を無視してイラの下へと全速力で走り出した。


「あの半魔人(ハーフヴァンディム)の野郎、意識が戻ったのか。だが、邪魔はさせねぇよ!」


 瞬時にファクトの復帰に気が付いたアワーがこちらをチラリと一瞥してきた。

 すると全部で八本ある触手の内、イラを拘束していた四本の中から両足を縛っていた二本を攻撃に回し始め、六本の触手の内三本がファクトの下へ、残りの三本が私の下へと向かって来た。

 拘束が緩んだとは言え、二本の触手で両腕を拘束されて宙吊りにされているイラは、赤い血をドロリと流し続けながら痛みに苦しみ震えているようで、意識を保っているのかどうかも定かではなかった。


「くっ……こっちは大丈夫だから、フェアリはツァーイの方を頼む!」

「っ……分かっているよ! ツァーイ、そのまま真っ直ぐ走って!」

「うん。二人共ありがとう!」


 後ろから聞こえて来るファクトとツァーイの声を背に私は真っ直ぐに走り続けた。

 やがて三本の赤い触手がぞれぞれ別の方角から私に狙いを定めて一斉に襲いかかって来た。

 しかし赤い触手が私に触れるよりも早く、背後からフェアリの手によって放たれた白銀(プラティヌ)の矢(フレッシュ)が触手を一本一本順番に射抜いた。

 表面がヌルヌルとして剣では思う様に斬れなかった触手だったが、白銀(プラティヌ)の矢(フレッシュ)は滑って弾かれる事もなく触手に突き刺さった。

 もしかしたら赤い触手は斬撃のような立体的な攻撃には耐性があるのかも知れないけど、弓矢のような平面的な攻撃には耐性がないのかも知れない。あくまでも推測でしかないけれど。


「さてと、今度こそ止めの一撃を……ぐっ!? この痛み触手を携えし蜂(ホクトビー)の触手に何が……」

「やああぁぁっ!」


 既に大きなダメージを負って瀕死寸前であろうイラに対して、左手の大剣で止めの一撃を刺そうとしていたアワーだったが、触手が射抜かれると同時にアワーが僅かにだが苦しんでその動きを鈍らせた。

 その隙が生じたのとほぼ同時のタイミングでアワーに接近をしていた私は、イラの両腕を拘束している二本の触手の根元に向かって純白の剣(サンクチュアリ)を大きく突き刺した。

 これが触手に有効打となるかは賭けだった。けれど他に有効打となる手段が思いつかない以上は、フェアリのお陰で気付けた平面的な攻撃への耐性がないかも知れないと言う可能性に縋るしかなかった。


「ぐあああああっ……テメェ!?」


 そしてその可能性を肯定するかのように先程まではどれだけ斬ろうとしても斬り落とせなかった触手が、呆気なく貫かれて大きな穴を開けて別たれた。イラを拘束していた二本の触手を中心点とした五本の触手が根元から分断されて地に落ち始める。

 けれどそれは触手によって宙づりをされていたイラも一緒に落とされると言う事だった。


「イラ……!」


 アワーの叫び声を無視して、純白の剣(サンクチュアリ)を突き刺した態勢のまま勢いを殺さずに、私は落下するイラの下へと駆け寄った。

 宙吊りにされていると言っても小箱二箱分程度の高さなので、落ち着いて考えればこの落下でイラがどうこうなる筈はない。けれど足元に結構な血だまりを作っている程にイラは血を流してしまっている。

 何もしなければ確実に死んでしまうであろう状態のイラに対して、これ以上のダメージや衝撃を与えてはいけないと、私は冷静になれないままに自分の身体を下から滑り込ませるようにして、間一髪の所でイラの全身を受け止める事に成功した。

 全力疾走からの急ブレーキと、人一人を受け止めたという二重の衝撃によって被っていたフードがパサリと頭の裏側へと捲れて行く感覚を感じたけれど、普段なら真っ先に気にする筈の出来事であるその事を気にもせずに私はイラに呼びかけた。

 イラが生きている事を確かめたくて。私の中の不安を黙らせたくて。イラを安心させたくて。けれどアワーの手から奪い返したイラは、見た事もない程に弱々しく光が消えそうな瞳でこちらを見つめ返していて、脇腹から漏れ出ている血液のせいで蒼色のズボンの表面上の五分の一程を赤く濡らしていた。

 そんなイラを受け止めて、抱きかかえている私が着込んでいる新緑色のローブにも当然イラの血がベッタリと付着し始めたが、そんな事を気にしている余裕はない。

 目の当たりにした事でより強く、今にもイラが死んでしまうのではないかと言う不安が胸の奥から湧き出てくる。それによって私の心が恐怖に染められてしまうような嫌な予感を感じながらも、私はイラを安心させる為に、そして自分自身を奮い立たせる為に強く告げた。


「イラ! 気をしっかり持って! すぐに助けて上げるから!」



 イラは拘束が解けて全身が自由にされる感覚を落下の中で感じていた。けれど脇腹を大剣によって貫かれると言う初めて負う痛すぎる程の痛みに苦しむ事が精一杯で、イラは自分の身体を動かす事が出来なかった。

 頭を岩や木にぶつけたりしなければ良いな、と痛みに埋め尽くされた思考の片隅で一瞬だけ考えたが、既に痛すぎる程に痛いのだから今更痛みが一つ増えた所で変わらないか。等と心の中で苦笑しながら短い浮遊感覚を味わっていた。

 

「イラ……!」


 けれど大切な少女の声が聞こえて来たと思った次の瞬間には、落下した筈の自分の身体が彼女に受け止められていた。


「イラ! 気をしっかり持って! すぐに助けて上げるから!」


 必死な程に強く宣言したツァーイの表情は、言葉の強さとは真逆に不安に押し潰されそうな程に歪んでいて、今にも泣きだしてしまいそうだった。

 イラは自分の意識が朦朧とし始めたのを感じながらもツァーイに対して言葉をかけようとした。

 曖昧になっていく意識の中で発しようとした言葉がどんなものだったかさえ、自分でも分からなかった。『僕は大丈夫だよ。』と安心させる為のものなのか、それとも『ここから逃げて!』と言うような彼女の身を案じてのものなのか。或いは僕が死んでしまう前に伝えたかった想いなのか。

 だけどそれでも僕は口を開いて言葉を紡ごうとした。大切な少女を安心させて上げたくて。彼女が涙を流す姿を見たくなくて。それが自分のせいだと言うのであれば、尚更それが許せなくて。


「あ……ッ……ァ……ィ……うぁぁ……」


 けれどイラの決意を嘲笑するかのように、痛みは変わらず全身を蝕んでいる。やっとの思いで発する事が出来た言葉も掠れた声で、少し強い風でも吹いてしまえば消えてしまいそうな程に小さな声だった。

 どんな言葉を紡ごうとしたのか、どんな言葉を伝えたかったのか、ツァーイにどうして欲しいのか、何一つ伝えられないような無意味な声。


「イラ……! 絶対に助けるから、だから死なないで……! 癒しの力よ、痛みを治して! ヒール(癒し)!」


 言葉にならない言葉を発した僕を見下ろしているツァーイが涙目になりながら、より一層と不安そうな、それでいて縋るかのような声を上げながら光属性の魔法の一種である治癒魔法を行使した。

 魔法の発動によって暖かい力が光となって痛みの原因である大剣で貫かれた脇腹の傷跡に降り注がれた。まるで傷跡を塞いで無かった事にしようとするみたいに。

 実際に治癒魔法の発動から数秒程度で身体の痛みが少しは軽くなったかのような安堵感を感られた。しかしそれも一瞬だけの事だった。すぐに脇腹から強い痛みが全身を駆け巡り、結局は身体を動かす事も、言葉を発する事も、何一つ出来ない状態のままだ。


「そんな、ヒール(癒し)で治らないなんて……。ううん、私の魔力を全部使ってでも、絶対にイラを助けてみせるんだから。根源たる光よ――」

「ッァ……ィ……」


 治癒魔法の発動で塞がれなかった傷跡に苦悶の表情を浮かべながらも、ツァーイは再び治癒魔法を行使しようとした。

 新たに唱え始めた詠唱文の出だしは今までの旅の中で一度も聞いた事のないものだ。恐らくは普段は使う必要のない魔力の消費が激しい類のものだろう。

 それに対して『僕の為に無理をしないで』と心配をする事も、『ありがとう』と感謝をする事も、やはり言葉として発する事は出来ない。


「癒しの――っ!」


 その時だった、ふと目前から一本の紫色の短針と、三本の赤い触手が迫って来るのが見えた。それに気づいたツァーイは、口にしていた詠唱を突然キャンセルし、同時にイラを全身で庇うかのようにギュっと抱き寄せた。

 イラを受け止めてから治癒魔法を行使していたツァーイは、地に座る格好になっていたままだった。自分一人ならこの状態からでも攻撃の回避を行う事は出来たかも知れない。けれどイラを見捨てると言う選択肢はツァーイの中には存在せず、イラを抱えたままこの攻撃を回避する事が出来ないと言う判断の結果として、イラを庇う事を選んだ。

 その事を察したイラはツァーイを突き飛ばして逃がそうとしたが、やはり全身を蝕む痛みのせいで満足に身体を動かす事が出来ずに、結果として指の一本も動かす事が出来ずにツァーイのされるがままになるしかなかった。


「やらせないよ! 拡散射!」

「はああぁっ!」


 けれど二人に迫っていた三本の赤い触手はフェアリの放った三本の矢によって射抜かれ、動きを鈍らせた。続いて二人の前に躍り出たファクトが漆黒の大剣(ダークネス)を振るって紫色の短針を弾き返した。


「フェアリ! ファクト!」

「ツァーイ、イラは無事か?」

「うん。二人のお陰だよ。でも凄く弱っていて、治癒魔法での回復が追い付かないの……。」

「それなら私に任せて! ピカピカっとリフレッシュ、ルミラトゥール(癒しの光)!」


 駆けつけてくれた二人に対して思わず不安気な言葉を零してしまった私に代わって、フェアリがイラに近寄って治癒魔法を発動させた。

 すると癒しの力を伴った暖かな光がイラを包み込んで、安静にしていればこれ以上の出血は起こらない程度には傷跡が塞がった。

 しかしその光が消えるのと同時にフェアリが身体をよろけさせ、ふらっと倒れてしまいそうな所をファクトが支えた。


「フェアリ!?」

「そんなっ……こんな時に魔力が枯渇しそうなんて。治癒魔法の効力が必要なら、私が頑張らなきゃいけないのに……。」

「三重魔法(トロワマジック)の発動で普段よりも魔力を消耗しているんだから、無理はするな。」


 そんな風に全員が普段とは比べ物にならない程の消耗をし続ける中で、忘れもしない仇敵の声がその場に響いた。


「おい、おい、やってくれるじゃねぇか、テメェら……!」


 その声音からは不愉快な程に見下し、ゲームと称して殺し合いを楽しんでいた男の余裕が僅かではあったが消えていた。

 代わりに感じられるのは先程までとは比べ物にならない程の圧倒的な殺意や悪意、害意と言った黒い感情をこちらへと向けて来ると言うものだ。

 そしてその姿は先程までの赤い触手と紫色の短針を備えた姿ではなく、全身が鈍い銀色を称えた姿――鋼鉄の象(メタリックタスカ)のものへと再度変化をしていた。


「にしても驚いたぜ、他の奴とはレベルが違うとは思っていたが……そこのフード野郎がまさか【蒼い疫病】だったなんてな!」


 アワーが一歩一歩と歩く度にズシリ、ズシリと重たい音が周囲に響く。まるでアワーの力を示すかのように。その中でアワーがフードが外れて姿を露わにしたツァーイに向かって品定めをするかのように大きな声で独り言のように言う。

 【蒼い疫病】。この世界(リーネド・ムンリ)で他に存在し得ない蒼色の髪を持つただ一人の少女の呼び名。故にその髪色を目にされてしまえば、誰であろうとその呼び名を告げる。

 それは九年前に故郷を失ったツァーイが旅立ってから世界(リーネド・ムンリ)中の人々から呼ばれている忌み名であり、ツァーイが故郷を失うに至った凶病の《サイス》に関して歪んだ噂の発信源となっている。

 自分に対する言葉の刃同然であるその忌み名を耳にしたツァーイは胸の奥に強い痛みを感じたて表情を歪めたが、すぐに自分の事よりもこの手の中にいるイラを優先するべきだと思い直す。

 理由もなく蔑み、忌避し、恐れ、【蒼い疫病】と呼ぶ人達とは違い、安心出来るような優しい声音で『ツァーイ』と自分の名を呼んでくれる少年の存在こそが今の自分にとっては何よりも大切なのだから。


「……だったら、どうだって言うの! 私の仲間達を傷つけた貴方だけは絶対に許さないんだから!」

「それと俺の故郷と魔人(ヴァンディム)の大多数を滅ぼした事もな。」

「うん。貴方がどれだけ強くても、皆一緒なら怖くなんてないよ。」


 ツァーイはイラを手放す事がないように強く、それでいて痛みを感じさせないように優しく抱き寄せながらアワーを睨み付けた。

 それに続いて二人を庇うかのようにファクトとツァーイがそれぞれの武器を手にしながら一歩前に出た。


「ふんっ、お前らがどれだけ意気込んだ所で俺に勝てるかよ! だが、そうだな……ここまで楽しませてくれた礼としてチャンスをやろう。」

「チャンスだと? 同族を絶滅寸前にまで追い込んだ奴の言葉を信じられる訳がないだろ!」

「まぁそう言うな。俺の要求を大人しく呑んでくれさえすれば、お前達を見逃してやるって言ってるんだよ。」


 歩みを止めながら発したアワーの言葉にファクトは憤りを隠しさえしなかったが、アワーはファクトの様子を無視して言葉を続ける。

 言葉だけを聞けば飄々とした印象を受けなくもないが、先程までの出来事と、今も変わりなく向けられている黒い感情を考えればアワーの言葉を信用出来る者はこの場にはいない筈だった。

 それでもツァーイはイラを救う為に必要な大型の治癒魔法を行使しようとして、体内の魔力を可能な限り掻き集めながら、その時間稼ぎの為にアワーに問いかける事にした。


「……一応話だけは聞くよ。」

「なぁに、簡単な事だ。【蒼い疫病】、お前が未来永劫に俺に隷属するって言うのなら残りの三人はこの場から見逃してやるって話だ。勿論大事に抱えているその小僧に治癒魔法を行使するだけの時間はくれてやる。」

「そんな事、出来る訳ないでしょ!」


 アワーの思いがけない要求に対して反応をしたのは、フェアリだった。普段からホンワリとしている彼女からは想像も出来ないような大声を張り上げて激昂した彼女は手に持っている弓矢をアワーへと向けた。

 そしてそのまま一本の白銀(プラティヌ)の矢(フレッシュ)を放ち、アワーはそれを避けようともせずに受け止めた。しかし鋼鉄の象(メタリックタスカ)の力を得ている銀色の肉体は、白銀(プラティヌ)の矢(フレッシュ)を何ともないように弾き返し、放たれた矢は無残にも見当外れの場所へと力なく落ちてしまう。


「無駄だ。お前らが何をしようと俺を殺す事は絶対に無理だ! 大人しく【蒼い疫病】を渡した方が身の為だぜ。……さもなければ、仲良くここで皆殺しにしてやるってだけだ!」

「だったら、殺ってみろ!」


 漆黒の大剣(ダークネス)を手に、一人アワーへと向かって走り出したファクト。やがてアワーとの距離を詰めて間合いに入れるや否や、漆黒の大剣(ダークネス)をアワーの脳天へと向かって振り下ろした。


「だから無駄だって、言ってるだろうがよぉ!」


 しかしその一撃はアワーの手に握られた左手の大剣によって受け止められ、同時に右手の大剣がファクトへと襲いかかった。

 魔物化をしていない状態のファクトの攻撃手段は愛用している漆黒の大剣(ダークネス)と魔法の二つのみ。そしてファクトの魔法は攻撃に特化したものが多く、イラやフェアリのように防御や回避に適した魔法は現状では存在しない。

 普段であればファクトの窮地にフェアリが防御魔法を発動するのだが、フェアリの魔力は既に尽きかけていて満足に魔法を発動できない状態になってしまっている。

 加えてファクト自身が治癒魔法での治療も完全な回復に達さない内に戦前に戻ってしまった為、今のファクトの身体能力は普段よりも劣ってしまっている。


「くっ……あぁ……」


 その結果としてファクトはアワーの反撃に対して打つ手がなく、普段の彼からは想像も出来ない程にあっさりと斬撃をその身に受け、その場に倒れ伏してしまった。

 イラのように貫かれた訳ではないので今すぐに死に至る程の損傷にはならないだろう。けれど既にダメージを蓄積していたファクトにとっては、戦いを続けるのが困難に思える程の痛みには変わりがない。


「ファクト!」

「おっと! 大人しくしてもらおうか!」

「ぐあっ……」


 倒れ伏したファクトにフェアリが駆け寄ろうとするが、それよりも早くアワーが自らの足元に倒れ伏したファクトの首根っこを乱暴に掴み取ってフェアリとツァーイに見せつけた。

 代わりにアワーが左手に持っていた大剣と、ファクトの漆黒の大剣(ダークネス)がその場にガタンと落ちる音が響いた。


「さっきも言ったが、お前らが大人しく【蒼い疫病】を渡さないって言うなら、ここで全員死んでもらう。それとこれ以上抵抗をするって言うのなら、まずはこの半魔人(ハーフヴァンディム)から殺してやるよ。」

「っ……!」


 突きつけられた言葉にフェアリは駆け寄ろうとしていた足を止め、アワーへと睨み返す事しか出来なかった。ツァーイもイラを抱き寄せたままどうする事も出来ず、代わりに問いかける事しか出来なかった。


「……どうして私を欲しがるの。」

「それを話すのはお前が取引に応じてくれた後だ。俺も気が長い方じゃあないし、そろそろ決めて貰おうか。」


 ツァーイの問いに答えずに、自分の主張を続けるアワー。


「仲間の命の為に大人しく俺に隷属するか、それとも仲間を全員見捨てて俺と殺り合うか。二つに一つだ! 最も、俺としては後者でも良いんだぜ。そうなりゃ少なくともこの半魔人(ハーフヴァンディム)と、お前が大切そうに抱えているその小僧は死んじまうだろうし、お前よりも先にそこの半妖精人(ハーフエルフ)を殺してやるつもりだけどなぁ!」


 これが取引ではなく脅迫だと言う事はツァーイには分かっていた。いや、フェアリにも、倒れ伏しているファクトにも、意識が朦朧としているイラにさえ分かり切っている事だった。

 勿論アワーの言葉に背いて戦闘を再開する事はツァーイなら可能だ。しかしその選択肢を選んでしまえば、アワーは宣言通りにまずファクトを殺すだろう。恐らくは鋼鉄の象(メタリックタスカ)の力による圧倒的な腕力で首を握り潰すか、右手で握っている大剣で首を斬り落とすか、心臓を貫くか、或いはもっと惨たらしい斬り方をするか。

 そして次にアワーはフェアリを殺すだろう。仮にそうなれば私はイラをフェアリに託して、二人を後方に下げてアワーに接近戦を挑む。けれどアワーの魔物化には圧倒的な素早さを誇る疾走する黄金の獣(オールゲパルド)が存在する。

 そしてその素早さに対抗出来るだけの自身がツァーイにはなかった。冒険者情報(ステータス)上の数値で自分よりもスピードの値が劣っている筈のイラがどういう訳か対抗してみせていたが、二人の攻防を見ていたツァーイは疾走する黄金の獣(オールゲパルド)の魔物化を使用しているアワーの動きを見切る事が出来なかったのだ。

 だから疾走する黄金の獣(オールゲパルド)の力を行使されれば、呆気なく私を出し抜かしてフェアリとイラに接近される可能性が高い。そうなれば接近戦を苦手とする上に魔力が枯渇寸前のフェアリと、瀕死状態のイラは数秒と持たずに殺されてしまう。


(どうすれば、この状況から皆を助けられる……? 何か、何か考えないと……。)


 チラリと周囲の仲間の様子を確認するが、イラは痛みに呻きながら何かを訴えかけるかの様に時折掠れた声を上げるばかりで戦闘に復帰するのは無理に思える。

 フェアリはダメージこそ少ないけど魔力を使い果たしていて、弓矢での援護もアワーの鋼鉄の象(メタリックタスカ)には通用しないだろう。そして捕まっているファクトもまた、治癒魔法で回復させなければすぐには戦闘に復帰出来ないだろう。時間さえあるのなら薬草の類を使った後に安静にさせると言う手もあるが、今はその時間もない。

 今この場で比較的普段通りに戦う事が出来るのは、最早ツァーイ一人だけだった。だけど戦えば間違いなく自分以外の三人が殺される状況下であり、魔物化によって多種多様な力を扱えるアワーからは、傷ついた仲間達を連れて逃げる事さえ困難に思えた。

 そうして考え続ける中でツァーイは選択肢が残されていない事を認めるしかなかった。

 昔の――イラと出会う前の、独りぼっちの自分だったら勝てない相手からは迷わずに逃げ出した事だろう。逆に倒せる相手だと考えたとしても、自分の生存を第一として周囲への被害を顧みずに戦う事を選択しただろう。

 例えそれで自分以外の誰かが傷ついたとしても。【蒼い疫病】等と言う訳の分からない呼び名で言葉と言う名の刃を理由もなしに振るいかざす人達の事など、命をかけてまで助ける必要がないからと自分に言い聞かせながら。その結果として自分の心がどれだけ傷ついて、悲鳴を上げたとしても、忘れようとさえした筈だ。

 けれどイラは違う。今まで誰一人として聞いてくれなかった私の話を聞いてくれて、信じてくれた。その上で一緒にいてくれると、守ってくれると、万が一にも――そんな事がある筈がないのだけれど――《サイス》を呼び込んだのが本当に私だったとしても気にしないと、病気で死なないと約束してくれた。

 イラと出会ってから、彼が私の存在を認めて、受け入れてくれた時から全てが変わったようにさえ思う。

 独りぼっちで戦って、毎日生きる事だけに必死になって、当てもなくこのフリーダ村を探していた頃とは考えられない程に。

 以前だったら何て事もないと思っていた筈の景色が輝いて見えて、食事も美味しく感じる事が増えて、ずっと諦めたり押し殺していた筈の感情さえも、会話をすれば簡単に揺さぶられ、表に顔を出す事が増えた。

 それにフェアリとファクトも今では大切な仲間だ。私は二人みたいに半端者(ハーフ)ではないけれど、イラと同じく私を【蒼い疫病】ではなく、一人の冒険者として見てくれる二人を失いたくもない。

 イラが、フェアリが、ファクトが、大切な仲間達を見捨てると言う選択肢は私の中には存在しなかった。寧ろ皆がこの世界(リーネド・ムンリ)の何処かで生きていてくれるのなら、この身がどうなろうと構わないとさえ感じる程に。

 だから――私は決断を下した。


「……私が大人しくすれば、本当に仲間達をこれ以上傷つけないんだよね?」

「ツァーイ! 駄目!」


 これ以上戦えば、私の存在を肯定してくれた大切な仲間達が死んでしまう。今の私にとって何よりも恐ろしい出来事が現実のものにならないように、私はアワーの要求を呑む――フリをする事にした。

 アワーは要求を呑むならイラに治癒魔法を行使する事も容認すると言った。だからその一度の治癒魔法でアワーを出し抜く。

 但しそれには皆が私の意図を察して、的確に動いてくれる必要がある。それでも上手く行けば形勢を逆転させる事も可能だろうし、アワーを倒すのが不可能であるのなら、四人でこの村から逃げ出せば良い。

 もしもこの治癒魔法でイラやファクトの回復をしきる事が出来なかったり、皆が私の意図を察する事が出来なかった場合は、その時は諦めて大人しくアワーに着いて行くしかなくなるけれど……それでもこのまま戦っても確実に皆は死んでしまう。それならば、皆を信じて一か八かに賭けてみるのも悪くはない。

 その決断を下してアワーに確認の意味を含んで問いかけると、アワーよりも先にフェアリが必死に私を止めようとした。普段は場を和ませる事が多く、集団(パーティ)の中でも一番マイペースなフェアリがそんな風に言ってくれるのが嬉しかったけれど、アワーに勘付かれないように私はフェアリの言葉を無視するしかなかった。


「ああ。約束しよう。お前が従順に隷属し続ける限りは、他の三人には手を出さないと約束しよう。」

「……それじゃあまずはイラに治癒魔法をかけさせて。」

「ああ。良いだろう。但し、治癒魔法をかけるだけだ。少しでも妙な真似をした瞬間に、この半魔人(ハーフヴァンディム)の命はないと思え。」


 その言葉に私はアワーを警戒しながらも治癒魔法を発動させる事にした。

 魔力を掻き集める為の時間稼ぎは、既に十分な程に達していたので、後は想像(イメージ)を描いて詠唱文を唱えて魔法を発動させるだけだった。


「生命の根源たる白き力よ、赤き痛みを消滅させて、聖なる癒しを我ら(・)に与え賜え! ホーリーヒール(清なる蒼白の癒し)!」


 私は普段から治癒魔法を唱える際の想像(イメージ)を暖かい光にしていた。光が触れた箇所から傷跡が癒えていき、その光に安心感を覚えられるように。

 けれど何度治癒魔法を使っても、想像(イメージ)出来た光はどこかボンヤリとしていて、色もあるのかないのかが分からない程に薄く不透明なものだった。

 だけど今回は違った。心の奥底から仲間を助けたいと思い願ったツァーイは、無意識の中で想像(イメージ)していた光は薄く不透明なものではなく、自分の髪色である青空のような水色を着色した光を描く事が出来ていた。

 加えて普段なら唱えないような長い詠唱文がスラスラと口から零れ落ちた。そうして発動した魔法は、想像(イメージ)通りの蒼い光となって周囲一帯を包み込んだ。

 途端にその場にいるツァーイ自身を含む仲間達の傷跡が、完全に全て塞がり、まるで時を巻き戻したかのように癒えていく。

 その反動と言わんばかりに、私の体内にある魔力の殆どが消耗され、力が抜けるような感覚に陥った。けれど最初からイラを抱え込みながら座っている態勢なので、幸いにも倒れるような事はなかったし、今日は魔法も殆ど使っていなかったので、魔力は総量の三割程度は残っているようだ。


「おい、おい、こりゃあマジかよ……。」


 遠くで怪訝そうな呟きを上げながら呆けているアワーを無視して、私はイラの容態を確かめるフリをして、彼の耳元に唇を近づけて囁くように呟こうとした。

 『イラ、意識があるなら返事をして。ファクトを奪い返したら、戦うか、逃げるか、どっちにしても時間がないの……。』と。

 私の使った治癒魔法――ホーリーヒール(清なる蒼白の癒し)はイラだけではなく、この場――正確に言えば魔法の発動範囲――にいる私の仲間全員を対象に発動した筈だ。

 先程まで聞き取れないような掠れた声を上げていたイラは、恐らく意識を失ってはいなかった筈。そしてファクトのダメージは、イラのそれよりもまだ程度は低いように見えた。

 だからイラの意識が完全に回復しているのなら、それはファクトも大丈夫だと言う事に繋がるだろう。


「イラ――」

「……。」


 けれどイラの安否を確認しながら囁こうとした私の目前で、急にイラの瞳がしっかりと見開き、こちらを見つめ返したイラの様子は、私の知るいつものイラではなかった。

 一つ目の違いは瞳の色。イラの瞳の色は私の蒼と似て異なる青い瞳。けれど今私を見つめている瞳の色は青ではなく、彼の髪色と同じ赤――ううん、それ以上に濁った、まるで血のような紅色に染まっていた。

 そして二つ目の違いはイラの表情。普段のイラは優しい表情を浮かべていたり、笑っていたり、とにかく一緒にいるだけで安心出来る存在だ。だから私はイラの顔を眺めているだけで、どんな時でも落ち着く事が出来ると思っていた。

 戦闘中やクエスト中にはキリっとしたような顔つきをする事もあるけれど、今のイラの表情は私の知るそれらとは、かけ離れていた。

 一瞬だけ呆けたような表情を浮かべていたが、すぐにイラの表情が見た事もない程に歪み始めた。それはまるで何かに怒っているようにも見えた。


「イラ、どうし――」

「ああぁぁあぁっ……!」

「きゃあ!」


 イラの変化に心配になった私は、直前まで行おうとしていた自分の行動も忘れて声をかけようとした。

 だけどイラは、その言葉を聞こうともしなかった。怒りの感情のままに私を突き飛ばしながら、飛び上がると、そのままアワーの下へと一直線に駆け寄って行った。

 突き飛ばされた私は、何が起きたのかも理解出来ずにイラの変化に対して先程までの彼を失ってしまうのでは、と言う不安とは別種の不安を胸に宿す事になった。

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