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華の龍とモブの巫女。〜華国後宮小話〜  作者: 友坂 悠


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6/7

「明日はね、花蓉宮で陰干しがおこなわれるんですって」


「陰干し?」


「宝物庫の宝物が湿気でだめになっちゃうといけないから、時々湿気取りをするのよ」


「じゃぁ小燕も忙しい?」


「そうなのよー。朝から準備があるからって、女官長の梅香様がピリピリしてるから困っちゃう」



 雲ひとつない秋晴れの、心地よい風がふわりと舞う、そんな朝だった。

 この調子では明日も同じように晴れるだろうと、そう予測されている。


 上級妃にはそれぞれ独立した宮殿が与えられている。

 当然、さまざまな贈り物や宝飾類がしまってある宝物庫があり、そしてそれらの宝飾品や絹、香木、そして玉飾りなどは全て、湿気に弱い。

 季節の変わり目には湿気取りのための陰干しが必要だった。


(空調があれば、そんな心配も減るでしょうけど……)


 魔法の空調があれば話は別だったろうに、と、小凛は独りごちる。



 この世界に生まれ落ちる前、小凛は多分こことは違う世界にいた。

 全てを覚えているわけではなかったけれど、この世界よりは随分と便利な世界であったことだけは覚えている。


(まあでも、倉庫にしまったままだとカビや埃の心配もあるものね。せっかくの宝物だもの。定期的にチェックしてあげるのは理にかなってるわ)



「でも花蓉宮って、宝物もすごそう」


「すごいよぉ……。あたしなんか触るだけで緊張しちゃう……」


 肩を落とし、へんにゃりとする小燕。


「運んでる最中に落としでもたら、首になっちゃうよ……」


「それは……、怖いね……」


「怖いの!! もう怖くて怖くて考えると足とかガタガタ震えちゃうよ……」


 しょんぼりとした姿の小燕に、小凛は慰めるように。


「でも、花蓉様は優しいんだって、言ってたよね」


「うん! そうなの!! 前に失敗した子のことだって、庇ってくれたって聞いたもの!」


「なら、大丈夫じゃないかな」


「でも……。梅香様は、怖いのよ……。鬼のようなお顔で怒られたら、あたし胸の動悸も止まっちゃいそうになるよ……」


「まあ、気をつけるしか、ないよねぇ」


「それはそうなんだけど……」


 水場にふわっと爽やかな風が吹いた。

 小燕も、その風に少し気分が和らいだのか、先ほどまでのしょんぼりとした顔に気合いを入れようと、パンと両手の手のひらで頬を挟むように叩く。


「ありがとうショウリン、愚痴を聞いてくれて。まあ、頑張るしかないもんね。そそ、明日は朝はここに来てる暇はないかもだから」


「うん。頑張って、小燕」


 そういって、ふわっと微笑むと。


 その顔に釣られ笑顔を見せる小燕。


(小燕の色が、爽やかな青色に染まった。もう大丈夫)


 走り去る背中を眺めながら、少し安堵して。


(後宮はすぐに闇に染まるけど、小燕にはそんな闇とは無縁で過ごしてほしいな……)


 そう願って。

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