6
華の後宮は美しい。
この世界の贅を尽くした宮殿に、さまざまな花が豪華絢爛咲き誇る庭園。
世界中から集められた宝飾品の数々。
そこに住まうものも、誰も彼も美しいものばかり。
妃はもちろん、女官や下女に至るまで、見目の良いものしかいなかったと言っても過言ではなかった。
だからこそ。
人の欲や嫉妬の感情が渦巻く。
感情は、闇となり。
闇の澱が、端々に溜まる。
そしてその澱は、いつしか次元の隙間を呼び寄せる。
闇には闇が、人には魔が。
命の芽吹きを蝕もうとしていたのだった。
◇◇◇
その日は朝から慌ただしい空気に包まれていたけれど、表向きには静寂が支配していた。
花蓉宮の女たちは、みな静々と歩き、宝物庫から承香堂までの道をゆく。
梅香の指示のもと、みな無駄口も利かず、ただただ言われるまま宝物を運んでいた。
焚香を終えた承香堂にはすでにいくつもの衣桁が立てかけられ、敷物が敷かれ。
ぐるりと周囲の格子も扉も開け放ち、秋の爽やかな風を通している。
欄干伝いに、香木や反物、宝飾品、置物、書物、掛け軸などが次々に運びこまれていた。
衣桁に掛けられた天女が纏ったと噂される薄絹の羽衣。金糸の刺繍は華やかに揺れ、沈香と白檀の香りが漂っている。
そんな幻想的な静けさとは裏腹に、女官らの顔は緊張に固まっていた。
落としたら……。
傷つけたら……。
身の破滅だ――
まばゆい宝飾を運ぶものも、朱塗りの置物を運ぶものも、みな、自分が一体何を運んでいるのか、さえ、考えることもできなくなっていた。
「これを運んだのは誰ですか!!」
突然。
運ばれた宝物を確認していた梅香の、鋭い声が響き渡った。




