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華の龍とモブの巫女。〜華国後宮小話〜  作者: 友坂 悠


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7/7

 華の後宮は美しい。

 この世界の贅を尽くした宮殿に、さまざまな花が豪華絢爛咲き誇る庭園。

 世界中から集められた宝飾品の数々。


 そこに住まうものも、誰も彼も美しいものばかり。

 妃はもちろん、女官や下女に至るまで、見目の良いものしかいなかったと言っても過言ではなかった。


 だからこそ。


 人の欲や嫉妬の感情が渦巻く。


 感情は、闇となり。

 闇の澱が、端々に溜まる。


 そしてその澱は、いつしか次元の隙間を呼び寄せる。


 闇には闇が、人には魔が。


 命の芽吹きを蝕もうとしていたのだった。






 ◇◇◇


 その日は朝から慌ただしい空気に包まれていたけれど、表向きには静寂が支配していた。


 花蓉宮の女たちは、みな静々と歩き、宝物庫から承香堂までの道をゆく。

 梅香の指示のもと、みな無駄口も利かず、ただただ言われるまま宝物を運んでいた。


 焚香を終えた承香堂にはすでにいくつもの衣桁が立てかけられ、敷物が敷かれ。

 ぐるりと周囲の格子も扉も開け放ち、秋の爽やかな風を通している。


 欄干伝いに、香木や反物、宝飾品、置物、書物、掛け軸などが次々に運びこまれていた。


 衣桁に掛けられた天女が纏ったと噂される薄絹の羽衣。金糸の刺繍は華やかに揺れ、沈香と白檀の香りが漂っている。


 そんな幻想的な静けさとは裏腹に、女官らの顔は緊張に固まっていた。


 落としたら……。

 傷つけたら……。

 身の破滅だ――


 まばゆい宝飾を運ぶものも、朱塗りの置物を運ぶものも、みな、自分が一体何を運んでいるのか、さえ、考えることもできなくなっていた。




「これを運んだのは誰ですか!!」


 突然。


 運ばれた宝物を確認していた梅香の、鋭い声が響き渡った。

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