風の吹くデッキ
四十分ほどで展望台に着いた。三人が最初にデッキに立った。木製の手すりが突き出ていて、周囲の山並みが大きく開けている。遠くの峰に薄い雲がかかり、空は淡く高く広がっていた。風が静かに吹き抜ける。
後続のメンバーたちが、息を弾ませながら次々と到着し始めたが、まだ少し間があった。
三人は手すりの近くに並んで立っていた。陽射しが木の床に柔らかな縞模様を描き、風が頰を冷やしていく。眼下の谷は青みを帯びた緑で覆われ、遠くの稜線がぼんやりと霞んでいる。
彩花が小さく息を吐いた。
「凄いでしょ? 来てよかったでしょ?」
彩花はそう言いながら、遥と絵奈のほうに顔を向けた。光が彼女の横顔を優しく照らしている。
遥は彩花の目を見て、静かに微笑んだ。
「うん。彩花ちゃん、連れてきてくれてありがとうね。」
絵奈は、眼前の山並みに視線を固定したまま、穏やかだけれどはっきりした声で言った。
「こんな綺麗な風景、見たことないよ。彩花、ありがとう。」
三人の言葉の間を、風がゆっくりと通り過ぎていった。葉ずれの音が遠くから聞こえ、雲の影が山肌をゆっくりと移動する。空気の温度は柔らかく、どこか透明だった。
彩花は軽く頷き、再び視線を遠くの峰へ戻した。遥も彩花の横顔を一瞬だけ見てから、同じ方向へ目をやった。
やがて他のメンバーたちの声が近づいてきて、デッキが少しずつ賑やかになっていった。




