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展望台の視線  作者: 星狼


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木漏れ日の坂道

 朝の駅はまだ湿った空気を含んでいた。改札を抜けると、すでに何人かが集まっていた。声があがる。鞄の音がする。彩花が人数を数えながら笑顔で手を振った。


 遥は少し離れたベンチに座って、みんなを眺めていた。十人ほどのサークルのメンバー。いつもの顔ぶれだ。絵奈も来ていた。白いスニーカーを履いて、スマホを片手に立っている。目が合うと、小さく会釈をした。


 新幹線に乗り、乗り換えを繰り返して在来線に入る頃には、窓の外の景色が徐々に緑を濃くしていった。線路沿いの家並みがまばらになり、田畑が広がり、やがて山の稜線が見え始めた。


 車内は賑やかだった。誰かが菓子を回し、誰かが昨日の講義の話をしている。彩花は通路側に座って、ときおり地図アプリを開きながら隣の誰かに話しかけていた。遥は窓際に座り、頰杖をついて外を眺めていた。ガラスに自分の顔が薄く映る。少し眠かった。


 絵奈は二つ後ろの席にいた。時々、笑い声が聞こえてくる方向に顔を向けるが、すぐにまた前を向く。イヤホンをしているようだった。


 バスに乗り換えた。道は徐々に細くなり、勾配がきつくなった。木々が迫り、陽が木漏れ日になって車内を横切る。誰かが「気持ちいいね」と呟いた。誰もが曖昧に頷いた。


 宿に着いたのは午後二時を過ぎた頃だった。古い木造の宿で、廊下が少し軋む。荷物を部屋に置くと、彩花が「みんなで展望台に行かない?」と提案した。この旅行のメインは、彩花が以前から「絶対に見てほしい」と言い続けていたその場所だった。


 十人全員が軽く準備をして宿を出た。午後の陽射しはまだ強く、道の端に影がくっきり落ちている。最初は皆で談笑しながら緩やかな登り坂を歩いていたが、道が木の階段になると、自然とペースがばらけ始めた。


 彩花が先頭に立ち、遥がその少し後ろを歩く。絵奈は二人のやや後方についていた。他のメンバーたちは、途中でカメラを構えたり、珍しい植物に目を留めたりして、徐々に間隔が開いていった。


 木々の隙間から空が広がり始めた頃には、三人がやや先行する形になっていた。風が涼しくなってきた。遥は額の汗を拭い、時折後ろを振り返った。絵奈は黙々と足を進めている。

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